募集の年齢制限が認められる例外と求人票の書き方
人事ノート建設・不動産の採用では、「若手を育てたい」「技能を継承したい」といった事情から、募集の段階で年齢を絞りたくなる場面があります。しかし募集・採用における年齢制限は、労働施策総合推進法で原則として禁止されています。使えるのは、省令で定められた例外に当たる場合だけです。
この記事では、原則の範囲、例外事由の区分、求人票への書き方、社内での確認手順を、実務の順序に並べて説明します。個別の求人が例外に当たるかどうかの最終判断は、ハローワークや社会保険労務士など専門家に確認してください。
原則は「年齢にかかわりのない均等な機会」
労働施策総合推進法第9条は、事業主に対し、労働者の募集および採用について、年齢にかかわりなく均等な機会を与えることを義務づけています。例外が認められるのは、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要と認められる場合として厚生労働省令で定めるときに限られます。
つまり構造は「原則禁止・例外列挙」です。「うちの職場には若手が合う」という理由だけでは足りません。省令が定める区分のどれに当たるのかを、社内で説明できる状態にしておく必要があります。
どこまでが「募集・採用」に含まれるか
年齢制限の禁止は、求人票の年齢欄だけの話ではありません。実務では次の場面がすべて対象になると考えて設計してください。
- ハローワークへの求人申込み、求人媒体への掲載内容
- 自社の採用サイト、会社案内、募集チラシ、社員紹介制度の案内文
- 人材紹介会社・求人媒体の担当者へ渡す依頼票や、口頭・メールでの依頼内容
- 応募受付時のフォームの入力制限(一定の生年月日で先へ進めない設計など)
- 書類選考の基準表、面接評価シート、面接での発言
- 派遣・請負の受入れではなく、自社が労働者を募集・採用するすべての契約形態(正社員、契約社員、パート、アルバイト、期間の定めのある契約を含む)
年齢制限の禁止に罰則規定は置かれていませんが、ハローワークは年齢制限のある求人を原則として受け付けません。職業安定機関からの助言・指導などの対象にもなります。取扱いの詳細は公表資料で確認してください。
例外事由の全体像
省令が定める例外は、実務では「1号」「2号」「3号イ〜ニ」という呼び方で整理されることが多い区分です。全体像を表にまとめます。
| 区分 | 認められる場面 | 契約形態などの主な条件 | 建設・不動産での典型例 |
|---|---|---|---|
| 1号 | 定年年齢を上限として募集する場合 | 期間の定めのない労働契約。上限が定年年齢を下回らないこと | 定年65歳の会社が「64歳以下」で施工管理を募集 |
| 2号 | 法令で年齢制限が設けられている業務 | 根拠となる法令の適用範囲内であること | 年少者の就業が制限される業務を含む現場職の「18歳以上」 |
| 3号イ | 長期間の継続勤務による能力開発・向上を図る目的で、若年者等を募集する場合 | 期間の定めのない労働契約。職務経験を不問とすること。新卒者以外も新卒者と同等の処遇・選考とすること | 施工管理職の新卒・第二新卒採用 |
| 3号ロ | 技能・ノウハウの継承のため、労働者数が相当程度少ない年齢層に限定する場合 | 期間の定めのない労働契約。対象職種で当該年齢層が少ないことを説明できること | 特定の技能職で中間年齢層が薄い場合の年齢層限定募集 |
| 3号ハ | 芸術・芸能の分野で表現の真実性などが求められる場合 | 分野・職務の性質による | 建設・不動産の職種では通常使いません |
| 3号ニ | 高年齢者の雇用促進、または特定年齢層の雇用促進に係る国の施策の対象者に限定する場合 | 対象を下限年齢で区切る形が基本 | 「60歳以上」を対象とした施設管理・巡回業務の募集 |
各号の正確な文言、3号ロで求められる年齢幅や「相当程度少ない」の判断基準、3号ニで対象となる国の施策の範囲は、厚生労働省の公表資料で必ず確認してください。この記事では数値基準までは示しません。
区分ごとの実務ポイント
1号 定年を上限にする場合
もっとも使いやすい例外です。ただし条件は二つあります。第一に、期間の定めのない労働契約であること。第二に、上限年齢が自社の定年年齢を下回らないことです。
就業規則の定年年齢を確認せずに書くと、ここでつまずきます。定年を60歳と定めている会社が「64歳以下」と書くのは、1号としては整合しません。逆に定年を65歳に引き上げたのに求人票が「59歳以下」のまま残っている例も見かけます。定年年齢を変更したら、求人票の年齢上限も同時に洗い出してください。
有期契約の募集に1号は使えません。契約社員やパートを期間の定めのある契約で募集する場合は、別の区分に当たるかを検討し、当たらなければ年齢要件を外します。
2号 法令に年齢制限がある業務
労働基準法では、満18歳に満たない者を一定の危険有害業務に就かせることが禁じられています。クレーンの運転、高所での作業、足場の組立てなど、現場職で該当しうる業務があります。対象業務の具体的な範囲は年少者労働基準規則などの公表資料で確認してください。
この区分を使うときは、募集する職務が本当にその業務を含むかを確認します。事務職や営業職の募集に「18歳以上」と付ける根拠にはなりません。
3号イ 長期のキャリア形成を目的とする若年者の募集
新卒採用や第二新卒採用で使う区分です。条件が細かいため、社内で誤用が起きやすい箇所でもあります。押さえるべき点は次の三つです。
- 期間の定めのない労働契約であること。試用期間を設けることは別の話ですが、契約自体が有期であれば使えません。
- 職務経験を不問とすること。「施工管理経験3年以上」「宅地建物取引士としての実務経験者」といった経験要件と併用できません。
- 新卒者以外の応募者についても、新卒者と同じ選考方法・同等の処遇とすること。既卒者だけ別の試験や低い初任給を設定すると、条件を満たさなくなります。
建設業では「若手を採って育てたい。ただし施工管理の経験がある人がよい」という要望がよく出ます。この二つは3号イでは両立しません。経験者を採りたいのであれば年齢要件を外し、必要な資格・経験を職務要件として明確に書く方向へ切り替えます。
3号ロ 技能継承のための年齢層限定
特定の職種で、ある年齢層の従業員が上下の年齢層に比べて極端に少ない場合に、その年齢層に限って募集できる区分です。建設業では技能職の年齢構成が二極化している会社もあり、検討の余地があります。
ただし、感覚で使える区分ではありません。対象となる職種の範囲、年齢層の幅、どの程度少なければ認められるかについて基準が定められています。募集前に、職種ごとの年齢別従業員数を集計し、判断の根拠を書面で残してください。数値基準は公表資料で確認し、判断に迷う場合はハローワークに事前相談することをおすすめします。
3号ニ 高年齢者・特定年齢層の雇用促進
「60歳以上」といった形で高年齢者に対象を限定して募集する場合が典型です。国の施策の対象者に限定して募集する場合も、この区分で整理されます。対象となる施策の範囲は公表資料で確認してください。
この区分は下限を設ける発想です。「60歳以上70歳未満」のように上限も切りたい場合は、その上限に別の根拠が必要になります。定年後再雇用の枠組みと、外部からの募集を混同しないよう注意してください。
求人票の書き方 表現の可否と直し方
例外に当たる場合でも、書き方が不十分だと求職者に伝わりません。逆に、年齢欄を空欄にしても本文で年齢をにおわせていれば、実質的な年齢制限と受け取られます。
| 求人票の表現 | 判断 | 考え方・直し方 |
|---|---|---|
| 「64歳以下(定年年齢が65歳のため)」 | 使える可能性が高い | 就業規則の定年年齢と一致しているか確認する |
| 「18歳以上(クレーン運転等の業務に従事するため)」 | 使える可能性が高い | 募集職務にその業務が含まれることを確認する |
| 「35歳以下(長期勤続によるキャリア形成を図るため/職務経験不問)」 | 3号イの条件を満たせば使える | 経験要件・有期契約と併記していないか確認する |
| 「35歳以下(経験者優遇)」 | 使えない | 3号イは職務経験不問が条件。矛盾している |
| 「若手が中心の活気ある職場です」 | 避ける | 実質的な年齢制限と受け取られる。職場の平均年齢を書く必要はない |
| 「20代・30代が活躍中」 | 避ける | 年齢層を示して応募を誘導する表現になる |
| 「体力に自信のある方」 | 避ける | 年齢を暗示する。必要な作業内容を具体的に書く |
| 「卒業後3年以内の方」 | 慎重に判断 | 実質的に年齢で区切る運用になりやすい。3号イの条件と併せて確認する |
| 「施工管理経験5年以上」 | 年齢制限ではない | 経験年数の必要性を職務内容から説明できるようにする |
| 「60歳以上(高年齢者の雇用促進のため)」 | 3号ニに当たれば使える | 対象業務と就業条件を具体的に書く |
年齢要件を置くときは、「上限年齢」と「その理由」を必ず並べて書きます。理由のない年齢欄は、社内で根拠が確認されていない証拠になりやすいためです。
年齢制限の理由を示す義務
例外事由に該当して年齢制限を行う場合でも、求職者から求められたときには、その年齢制限を行う理由を示す必要があります。「社内方針のため」「当社の判断」といった説明では理由を示したことになりません。どの例外事由に当たるのか、なぜその年齢で区切るのかを、具体的に伝えられる形にしておいてください。示し方や様式の詳細は公表資料で確認してください。
実務上は、求人票の段階で理由を併記しておくのが最も手間がかかりません。問い合わせが来てから慌てて根拠を探す状態を避けられます。
社内で回すための手順
求人票を出す前に、次の順序で確認します。そのまま社内の手順書として使える形にしています。
- 年齢を絞りたい理由を言葉にする(担当:採用担当と配属先の責任者/時期:求人票の作成前)。「若手がほしい」で止めず、育成計画、技能継承、定年との関係など、背景を一文で書き出します。
- 例外事由と照合する(担当:人事/時期:同日)。上の表のどの区分に当たるかを一つ選びます。複数にまたがる説明になっているときは、根拠が固まっていません。
- 契約形態と職務要件を確認する(担当:人事)。期間の定めのない契約か、職務経験を不問にできるか、選考方法を統一できるかを、雇用条件と突き合わせます。
- 根拠資料を集める(担当:人事/時期:求人票確定前)。1号なら就業規則の定年条項、2号なら業務内容一覧、3号ロなら職種別・年齢別の従業員数の集計です。
- 求人票に年齢要件と理由を併記する(担当:採用担当)。上限年齢と理由をセットで書きます。
- すべての媒体の文面をそろえる(担当:採用担当/時期:掲載前)。ハローワーク、求人媒体、自社サイト、人材紹介会社への依頼票、社員紹介の案内文を突き合わせます。
- 選考の道具から年齢項目を外す(担当:人事/時期:選考開始前)。書類選考の基準表、面接評価シート、面接官への説明資料を点検します。
- 判断の記録を残す(担当:人事)。どの例外事由に当たると判断したか、根拠資料は何かを一枚にまとめ、募集ごとに保管します。
- 年1回見直す(担当:人事/時期:定年年齢や人事制度の改定時、または年度初め)。定年の引上げ、年齢構成の変化で、前提が変わることがあります。
よくあるつまずき
- 3号イと経験要件の併記。「未経験可」と書きつつ、応募要件に「施工管理経験のある方は優遇」と入れてしまうケースです。優遇の記載も職務経験を評価している以上、条件との整合を疑われます。
- 有期契約に1号や3号イを使う。契約社員やパートの募集に定年年齢を上限として書いても、期間の定めのない契約という条件を満たしません。
- 就業規則を確認しないまま上限年齢を決める。前回の求人票をコピーして年齢欄だけ残り、定年の引上げが反映されていない例が多くあります。
- 3号ロを検証なしで使う。「技能継承のため」と書けば通ると考え、年齢別の従業員数を集計していないケースです。判断根拠がないと、理由を示す求めに応じられません。
- 媒体ごとに文面が違う。求人票は整えたのに、自社の採用サイトだけ「20代・30代が活躍中」の表現が残っている、というずれが起きやすい箇所です。
- 依頼の口頭部分が残る。人材紹介会社への電話で「できれば30代までで」と伝えてしまう例です。依頼は必ず文書で行い、年齢に関する希望は書面に載せられる内容だけにします。
- 面接での質問。「その年齢で現場は体力的に大丈夫ですか」「同年代の部下が多くなりますが」といった発言は、年齢を選考要素にしている印象を与えます。確認したいのが体力なら、担当する作業内容を示して従事可能かを尋ねる形にします。
- 応募フォームの入力制限。生年月日で送信が止まる設計が残っていると、求人票の文面と矛盾します。掲載前に実際に入力して確かめてください。
まとめ
年齢制限は「例外に当たるか」を先に確認し、当たる場合は理由まで書く。当たらない場合は年齢欄を外し、必要な資格・経験・業務内容を具体的に書き直す。この二択で整理すると、社内の判断が早くなります。
応募が集まらない原因を年齢要件で調整しようとすると、法令上の整合が崩れやすくなります。年齢ではなく職務要件と処遇の書き方で調整するほうが、母集団の質も安定します。個別の判断に迷うときは、掲載前にハローワークや専門家へ相談してください。
出典
- 労働施策総合推進法
本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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