#採用2025.10.20 公開2026.09.08 更新読了 約8建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

未経験採用に踏み切る前に社内で決めておくこと

未経験者の採用は、募集を出す前に社内で決めることが決まっていないと失敗します。配属先と指導担当、到達目標、賃金の位置づけ、選考基準、見直しの時期という論点を整理し、決める人と期限まで落とし込む手順をまとめました。公正な採用選考の考え方にも触れます。

情報の基準日
2026.09.08
採用

未経験採用に踏み切る前に社内で決めておくこと

人事ノート

未経験者の採用は、募集を出してから考え始めると必ず現場で止まります。応募が来ない、来ても選べない、入っても続かない。この三つはいずれも、募集より前の社内合意が足りないことから起きます。

この記事は、未経験者の募集を決裁にかける前に、人事が社内で確定させておくべき論点を順番に並べたものです。そのまま社内資料に写して使える形にしています。

未経験採用でつまずく原因は、選考より前にある

未経験者の採用は、経験者の中途採用とは意思決定の順序が違います。経験者採用は「今の欠員をどう埋めるか」ですが、未経験者採用は「どれだけの時間と手間をかけて一人前にするか」を先に決める話です。ここが決まっていないと、次のようなことが起きます。

  • 配属先が決まらないまま内定を出し、入社直前に受け入れ先を探し始める
  • 指導担当が指名されておらず、現場の手が空いた人が場当たりで教える
  • 到達目標がないため、半年後に「まだ使えない」という評価だけが残る
  • 既存社員との賃金の整合を取っていないため、入社後に不満が出る
  • 選考基準が面接官ごとに違い、同じ応募者の評価が真逆になる

未経験者の採用は「人を採る」より「育てる仕組みを先に置く」作業です。仕組みが置けないなら、その時点では踏み切らない判断も正しい選択です。

踏み切る前に決める8つの論点

下の表は、募集開始までに確定させたい論点です。「決める人」の欄が空白のままになっている論点は、実質的に決まっていないと考えてください。期限は募集開始日を起点にした目安です。

論点決める内容決める人期限の目安
1 採用目的欠員補充か将来の育成か。両方なら比率経営層募集の8週間前
2 配属先受け入れる部署・営業所・現場を具体名で部門長6週間前
3 指導担当主担当と副担当、指導に充てる時間部門長・所長6週間前
4 到達目標3か月・6か月・1年でできること人事・部門長5週間前
5 賃金と等級初任給、既存社員との整合、昇給の起点経営層・人事5週間前
6 資格支援対象資格、費用負担、受験の勤務扱い人事4週間前
7 労働条件の実態直行直帰、宿泊、休日、残業の見込み部門長・人事4週間前
8 選考基準評価項目、面接官、合否の決め方人事3週間前

1 採用目的を言い換えずに分ける

「若手が足りない」は目的ではありません。今期の工事量に対して人手が足りないのか、5年後の技術者層を厚くしたいのか、で採用人数も選考基準も変わります。欠員補充が主目的なら、未経験者ではなく経験者採用や外部委託の検討が先に来る場合があります。目的を一行で書けないうちは、募集の決裁を進めないでください。

2 配属先は部署名ではなく現場名まで下ろす

「工事部」ではなく「どの営業所の、どの所長のもとで、最初の3か月をどの現場で過ごすか」まで決めます。未経験者は現場と人に紐づいて育ちます。所長が交代する予定や、現場が竣工間近であることは、入社前に把握しておくべき情報です。

3 指導担当は一人に集中させない

主担当を一人だけ決めると、その人の繁忙期に指導が止まります。主担当と副担当を置き、指導に充てる時間の目安を月単位で決めておきます。指導担当の負荷は本人の業務目標にも反映させます。指導は「善意でやること」にせず、業務として位置づけてください。

4 到達目標は工程と書類で書く

「一人前になる」では評価できません。未経験者の到達目標は、現場で実際に発生する作業名で書きます。書き方の例です。

  • 3か月:安全書類の作成補助、写真整理、朝礼の記録、作業員名簿の確認ができる
  • 6か月:日々の工程確認と記録、簡単な材料手配、施工図の読み合わせに参加できる
  • 1年:小規模な工区の日常管理を担当し、上位者の確認を受けて書類を仕上げられる

目標は部門長と人事で合意し、本人にも入社時に渡します。渡していない目標は評価に使えません。

5 賃金は既存社員との整合から逆算する

未経験者の初任給を市場相場だけで決めると、既存の若手社員との差が問題になります。決めるべきは次の三点です。

  1. 入社時の等級と賃金額
  2. 到達目標を満たしたときの見直し時期と幅
  3. 資格取得時の手当の有無

同時に、既存社員の賃金を見直す必要が出ることもあります。新規採用の話と既存社員の処遇は、同じ会議で扱ってください。

6 資格支援は範囲を文書にする

受験費用、講習費用、テキスト代、交通費、受験日の勤務扱い、不合格時の再受験の扱いを決めます。口頭の「会社が出すよ」は、担当者が変わると消えます。就業規則や社内規程に位置づけるか、少なくとも社内通知の文書にしてください。

7 労働条件の実態を先に言葉にする

直行直帰の有無、現場が遠方になる可能性、宿泊を伴う工事があるか、土曜の稼働はどうなっているか。これらは入社後に必ず本人が直面します。募集前に部門長と確認し、求人票と面接で同じ内容を伝えます。ここを曖昧にした採用は、入社直後の離職につながります。

8 見直しの時期を決めてから始める

未経験採用は一度で仕組みが完成しません。「採用から6か月後に、指導担当の負荷と到達状況を見て、次の募集を出すか決める」というように、見直しの時期と判断材料を先に決めます。撤退の条件を決めておくことは、採用をやめる理由ではなく、続けるための条件整備です。

選考基準は適性と能力だけで組む

選考基準を作るときの前提は、厚生労働省「公正な採用選考の基本」に示された考え方です。採用は企業の自由な判断に委ねられている部分がありますが、応募者の基本的人権を尊重し、応募者の適性と能力のみを基準として選考することが求められています。

未経験者採用では、経験や資格で判断できないため、面接官が本人の生活や家庭の事情に踏み込みやすくなります。これは避けなければなりません。同資料では、就職差別につながるおそれのある事項として、大きく次の二種類が整理されています。

  • 本人に責任のない事項(本籍・出生地、家族の職業や収入、住宅の状況、生活環境や家庭環境など)
  • 本来自由であるべき事項(宗教、支持政党、人生観や生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合や学生運動などの社会運動、購読新聞や愛読書など)

これらは、応募書類でも面接でも、把握しようとしないことが原則です。身元調査の実施や、必要性の説明がつかない健康診断についても慎重な扱いが求められます。個別の項目の詳細と最新の記載は、公表資料で確認してください。

面接官に配る一枚を先に作る

未経験者の面接は、面接官の裁量が大きくなりがちです。次の三点を一枚にまとめ、面接前に配ります。

  1. 評価する項目(後述)と、それぞれの質問例
  2. 尋ねない事項の一覧(上記の二種類を具体的に列挙)
  3. 合否の決め方(誰が、どの項目を、どう重みづけするか)

面接官が複数いる場合は、評価用紙も統一します。用紙が違うと比較ができません。

未経験者の適性を確かめる質問の作り方

未経験者に対しては、過去の職務経験ではなく、行動の再現性を確かめます。抽象的な意欲の確認では差がつきません。

確かめたいこと質問の方向見るところ
継続する力長く続けた活動と、続いた理由期間と、続けるための工夫
学び方新しく覚えたことを、どう覚えたか手順化しているか、人に聞けるか
報告の習慣前職で困ったときに誰にどう伝えたか早く伝える習慣があるか
数字と書類への耐性数字を扱った経験、書類を作った経験抵抗感の程度
安全への意識危ないと感じた場面と、その後の行動ルールを守る姿勢
労働条件の理解移動や休日の実態を伝えたうえでの受け止め具体的な確認をしてくるか

質問は事実を聞く形にします。「やる気はありますか」ではなく「前の仕事で、自分から手順を変えたことはありますか」と聞きます。

入社後180日の育成計画のひな形

受け入れ体制の設計は別の論点ですが、募集前に骨組みだけは決めておきます。決めておくべきは、期間ごとの担当者と確認の場です。

期間本人の到達点誰が見るか確認の場
入社〜30日安全ルール、社内の連絡手順、書類の名称を覚える指導担当(主)週1回15分の面談
31〜90日決まった書類と写真整理を独力で進める指導担当・所長隔週の面談、90日面談
91〜180日工程の確認と記録、簡単な手配を担当する所長・部門長月1回の面談、180日評価

面談は日程を先に押さえます。「余裕ができたら話す」は実施されません。人事は面談が行われたかどうかだけを追いかけ、内容には必要以上に立ち入らない運用が現実的です。

求人票への反映で決めること

社内で決めた内容は、そのまま求人票の文言になります。募集前に次を確認します。

  1. 未経験可の範囲(学歴、資格の要否、運転免許の要否)を書いているか
  2. 入社後の育成の流れを、期間と内容で書いているか
  3. 賃金は決めた等級に基づく額になっているか。手当の内訳が分かるか
  4. 就業場所、移動の実態、休日、時間外の見込みを、実態どおりに書いているか
  5. 資格取得支援の範囲を、対象資格と費用負担の形で書いているか

年齢に関する記載や、労働条件の明示に関するルールは別の整理が必要です。求人票の表現そのものについては、当社の別記事もあわせて確認してください。

よくあるつまずき

  • 配属先が決まる前に募集を出す。応募者から就業場所を聞かれて答えられず、選考が止まります。
  • 指導担当が兼務だらけで時間が取れない。指導時間を業務として計上していないと、繁忙期に真っ先に削られます。
  • 賃金だけ先に決めて到達目標が空欄。半年後の見直し材料がなく、昇給の判断が印象論になります。
  • 面接官によって質問が違う。特に未経験採用では、家庭の事情や生活環境を尋ねてしまう例が起きます。面接前の一枚配布で防げます。
  • 資格支援の範囲が口約束。受験費用の精算時に揉め、本人の不信につながります。
  • 一人だけ採用して比較対象がない。可能なら複数名を同時期に受け入れると、指導の型が残りやすくなります。
  • 見直し時期を決めていない。うまくいかなかった原因が個人の資質の話にされ、仕組みの改善につながりません。

社内合意までの進め方

  1. 経営層と採用目的を一行で確定させる。人数と時期もここで置く。
  2. 部門長と配属先、指導担当、指導時間を確認する。書面で残す。
  3. 到達目標を3か月・6か月・1年で作り、部門長の合意を取る。
  4. 賃金と等級を人事案として作り、既存社員との整合を確認する。
  5. 資格支援の範囲を文書化し、規程または社内通知に落とす。
  6. 労働条件の実態を部門長に確認し、求人票の原案に反映する。
  7. 選考基準と面接官向けの一枚を作り、面接官に事前説明する。
  8. 見直しの時期と判断材料を決めたうえで、募集を開始する。

この八つが埋まっていれば、未経験採用は「採ってから考える」状態を避けられます。逆に、二つ以上が埋まらないうちは、募集の時期を後ろにずらす判断を検討してください。時期をずらす判断も人事の仕事です。

選考時の取り扱いや、尋ねてはならない事項の詳細は、厚生労働省が公表する資料の記載を必ず確認してください。個別の事案の判断に迷う場合は、社内の法務担当や専門家に相談することをおすすめします。

出典

  • 厚生労働省「公正な採用選考の基本」

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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