#採用2026.10.09 公開読了 約11分建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

年少者の採用で必要な手続と現場の就業制限

高校新卒を採用すると、入社後しばらくは満18歳未満の社員を抱えることになります。労働基準法は年少者について、年齢証明書の備付け、時間外・休日労働と深夜業の禁止、危険有害業務と坑内労働の就業制限を定めています。採用から18歳到達までの実務手順を、建設業の現場運用に沿って整理しました。

情報の基準日
2026.10.08
採用

年少者の採用で必要な手続と現場の就業制限

人事ノート

高校新卒を採用する会社では、入社から数か月間、満18歳未満の社員を預かることになります。労働基準法は年少者について、一般の労働者とは別の規定を置いています。時間外労働ができない、深夜に働かせられない、現場の主要な作業に就かせられない、といった制限が重なるため、配属先の設計を採用段階から考えておかないと、入社後に現場が回らなくなります。

この記事では、労働基準法の年少者に関する規定を、採用の順序に並べ替えて整理します。条文の原文と、法に基づく省令の細かい数値は、最終的に公表資料で確認してください。

まず年齢の区分を確かめる

労働基準法では、年齢によって扱いが三つに分かれます。採用担当者が最初に押さえるのはこの区分です。

区分範囲建設業での位置づけ
児童満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者原則として使用できません(労働基準法第56条)。建設業は例外許可の対象になりません
年少者(児童を除く)上記の3月31日が終了した後、満18歳に達するまでの者高校新卒者の多くが入社時にここに該当します
満18歳以上―年少者の規定は適用されません

実務で間違えやすいのは、この二つ目の区分の終わり方です。児童かどうかは「3月31日」という年度の区切りで判定しますが、年少者かどうかは本人の満18歳の誕生日で切り替わります。年度末でまとめて解除されるわけではありません。社員ごとに誕生日を管理する必要があります。

なお、労働基準法第56条は、満13歳以上の児童について、非工業的な業種で軽易な労働に限り、行政官庁の許可を得て使用できる例外を置いています。建設業はこの例外の対象ではありません。満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの者を、建設会社が雇い入れることはできないと考えてください。

採用の前後で用意する書類

年少者を雇うときは、通常の入社手続に加えて書類が増えます。何を、いつまでに、誰が用意するかを整理します。

書類根拠期限の目安担当
年齢を証明する戸籍証明書労働基準法第57条就業開始までに事業場に備付け人事(本人から取得)
労働条件通知書労働条件明示の規定労働契約の締結時人事
就業制限業務の一覧(社内文書)労働基準法第62条・第63条配属前に現場へ送付人事・安全衛生

年齢証明書は「事業場に備え付ける」ことが求められます。本社でまとめて保管していても、就業している事業場で確認できなければ、備付けとしては不十分になりかねません。支店や営業所が事業場として独立している場合は、その事業場でも確認できる状態にしておいてください。実務上どこまでの書類で足りるかについては、行政の取扱いがあるため、公表資料で確認してください。

親権者との関係

労働基準法第58条は、親権者や後見人が未成年者に代わって労働契約を締結することを禁じています。契約の当事者は本人です。内定承諾書や労働契約書に親権者だけが署名している状態は、法の想定と合いません。本人の署名を基本とし、親権者には別の書面で説明と同意を求める形に分けてください。

同条は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合に、親権者や後見人、行政官庁が将来に向かって契約を解除できることも定めています。

また、労働基準法第59条により、未成年者は独立して賃金を請求できます。親権者や後見人が未成年者の賃金を代わって受け取ることはできません。給与の振込口座は本人名義にしてください。親の口座を指定された場合は、その場で理由を説明して変更してもらいます。

労働時間・休日・深夜業の制限

ここが建設業で最も影響の大きい部分です。満18歳未満の者には、労働基準法第60条により、変形労働時間制や36協定に関する規定が適用されません。

項目満18歳未満の者の取扱い
1日・1週の労働時間法定労働時間(1日8時間・1週40時間)の枠内に収めます
36協定による時間外労働させられません。協定の有無にかかわらず不可です
36協定による休日労働させられません
1か月単位・1年単位・1週間単位の変形労働時間制原則として適用できません
フレックスタイム制適用できません
深夜業(午後10時から午前5時)原則として禁止されています

変形労働時間制の限定的な例外

労働基準法第60条第3項は、満15歳以上で満18歳に満たない者について、限られた形の例外を認めています。一つは、1週間の労働時間が40時間を超えない範囲内で、1週のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合に、ほかの日の労働時間を10時間まで延長する方法です。もう一つは、1週48時間・1日8時間を超えない範囲内で、1か月単位または1年単位の変形労働時間制により労働させる方法です。

ただし、これは「所定労働時間の配分を変えられる」というだけで、総枠を増やす仕組みではありません。繁忙期に残業させるための根拠にはなりません。

深夜業の扱い

労働基準法第61条は、満18歳に満たない者を午後10時から午前5時までの間に使用することを禁じています。あわせて、次のような定めがあります。

  • 交替制によって使用する満16歳以上の男性には、この禁止は適用されません。
  • 交替制によって労働させる事業については、行政官庁の許可を受けて、午後10時30分まで、または午前5時30分からの労働が可能とされています。
  • 厚生労働大臣が必要と認める場合には、地域または期間を限って、時間帯を午後11時および午前6時とすることができます。
  • 災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合(労働基準法第33条第1項)などには、この規定は適用されません。

建設会社の一般的な現場では、交替制の要件を満たさないことが多いと考えられます。安易に例外に当てはめず、まずは「午後10時以降は働かせない」を原則として運用設計してください。

深夜業の判定は、作業の時間だけでなく、指揮命令下に置かれている時間全体で考えます。遠方の現場へ午前5時前に会社を出発する運用は、その移動が労働時間に当たるかどうかで判断が変わります。移動時間の性質は個別の事情によるため、判断に迷う場合は専門家に相談してください。

現場で就かせられない業務

労働基準法第62条は、満18歳に満たない者について、危険な業務と有害な業務への就業を制限しています。条文そのものに挙がっているのは、運転中の機械や動力伝導装置の危険な部分の掃除・注油・検査・修繕、運転中の機械へのベルトやロープの取付け・取外し、動力によるクレーンの運転などです。そのうえで、厚生労働省令で定める危険な業務と、省令で定める重量物を取り扱う業務が加わります。この省令が、労働基準法に基づく年少者労働基準規則です。

同条第2項は、毒劇物や爆発性・発火性・引火性の原料を扱う業務、著しく粉じんを飛散する場所、有害ガスや高温・高圧の場所など、安全・衛生・福祉に有害な場所における業務への就業も禁じています。

さらに、労働基準法第63条により、満18歳に満たない者を坑内で労働させることはできません。

建設業で特に関係が深いのは、次のような作業です。省令には細かい除外規定(地上または床上で行う補助作業を除く、といった定め)があるため、配属前に条文で範囲を確認してください。

作業の種類確認のポイント
クレーン、デリック、揚貨装置の運転動力によるクレーンの運転は条文に明記されています
玉掛けの業務補助作業の扱いに除外規定があります
足場の組立て、解体、変更補助作業の扱いに除外規定があります
高所で墜落のおそれのある場所での業務高さの基準が省令に定められています
動力による土木建築用機械の運転機械の種類ごとに範囲を確認します
土砂崩壊のおそれのある場所、深い作業箇所での業務場所の条件が省令に定められています
重量物を取り扱う業務年齢・性別・断続作業か継続作業かで上限が異なります

重量物については、満16歳未満か満16歳以上満18歳未満か、男性か女性か、断続作業か継続作業かの組合せで上限の重量が決まっています。具体的な数値は年少者労働基準規則に定めがあるため、公表資料で確認してください。社内の資料に数値を転記する場合は、条文から直接引き写してください。

なお、労働安全衛生法に基づく免許や技能講習にも年齢の要件が設けられているものがあります。年少者が受講できない資格があるため、入社年度の教育計画を立てるときは、年齢要件も含めて確認してください。

入社から満18歳到達までの手順

社内でそのまま使える形に、順序を並べます。

  1. 選考の段階で、入社予定日時点の年齢と、満18歳に達する年月日を確認します。担当は人事です。
  2. 内定の段階で、配属予定の現場に就業制限の一覧を送り、制限業務を外した作業の割当が可能か確認します。難しい場合は、配属先を変えるか、社内研修期間を長く取る判断をします。
  3. 内定承諾書・労働契約書は本人名義で取り交わします。親権者には別途、就業内容と勤務時間を書面で説明します。
  4. 労働条件通知書には、時間外労働と休日労働をさせない前提の所定労働時間を書きます。全社共通の様式に「時間外労働あり」と印字されている場合は、年少者用の記載に差し替えます。
  5. 入社日までに、年齢を証明する戸籍証明書を本人から受け取り、就業する事業場に備え付けます。
  6. 給与口座を本人名義で登録します。
  7. 入社時に、勤怠システムへ年少者の区分を登録します。残業申請ができない設定、午後10時以降の打刻で警告が出る設定にしておくと、運用の負担が減ります。
  8. 配属時に、現場代理人と職長へ就業制限を書面で伝えます。口頭だけだと交代のタイミングで引き継がれません。作業手順書と危険予知活動の資料にも反映します。
  9. 毎月の勤怠確認で、時間外労働と深夜勤務がゼロであることを人事が点検します。現場任せにしないでください。
  10. 満18歳に達したら、勤怠システムの区分を解除し、現場へ制限解除を通知します。あわせて、資格取得や特別教育の計画を動かします。

よくあるつまずき

  • 年度で切り替わると思い込む。 制限が外れるのは本人の満18歳の誕生日です。4月1日入社の高卒社員でも、誕生日が翌年2月なら、1年近く年少者のままです。
  • 36協定を結んでいるから残業できると考える。 年少者には36協定の規定が適用されません。協定の対象者から年少者を除く旨を社内で明確にしておいてください。
  • 全社で1年単位の変形労働時間制を導入し、年少者も自動的に組み込む。 年少者は原則として対象外です。限定的な例外の範囲内に収まっているか、個別に確認が必要です。
  • 応援作業でうっかり制限業務に就かせる。 人手が足りない場面で、玉掛けの手元や足場の作業に入ってしまう例があります。禁止の対象と、補助作業として認められる範囲の線引きを、現場の職長まで共有してください。
  • 早朝出発が深夜業に当たる可能性を見落とす。 遠方の現場への移動で午前5時前に動き出す運用は、労働時間の判断とあわせて確認が必要です。
  • 残業させてしまった場合に、割増賃金を払わずに済ませようとする。 違法に時間外労働をさせた場合でも、割増賃金の支払義務はなくなりません。まず賃金を支払い、そのうえで再発防止を行います。
  • 安全衛生教育の計画が年齢要件と合っていない。 入社直後に受講させる予定の講習が、満18歳以上を要件としている場合があります。年間計画を立てる段階で確認してください。

解雇するときの帰郷旅費

見落とされやすい規定が、労働基準法第64条です。満18歳に満たない者が解雇の日から14日以内に帰郷する場合、使用者は必要な旅費を負担しなければなりません。ただし、年少者がその責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について行政官庁の認定を受けたときは、この限りではないと定められています。

地方から人を集めて寮に入れる採用を行っている会社では、試用期間中の解雇などの場面で問題になります。解雇の手続を検討する段階で、この負担を前提に置いてください。認定の手続と必要書類は、所轄の労働基準監督署に確認してください。

採用計画への反映

ここまでの制限を踏まえると、年少者の受け入れは「現場に出してから考える」運用ができません。採用計画の段階で、次の三点を決めておくことをおすすめします。

  1. 入社後、満18歳に達するまでの期間に、どの現場で何を担当させるか。社内研修、書類作成の補助、資格のない範囲での補助作業など、制限に触れない業務を具体的に積み上げます。
  2. その期間の勤務時間をどう設定するか。時間外と休日労働ができないため、現場の始業終業時刻と合わない場合があります。送迎や宿舎の運用も含めて設計します。
  3. 満18歳到達後に、どの資格をどの順番で取らせるか。年齢要件で受講できなかった講習を、到達後すぐに組めるよう予約の手配を進めておきます。

制限は一時的なものです。期間が決まっているからこそ、その間に何を身につけさせるかを設計できれば、受け入れの負担は投資に変わります。

よくある質問

Q. 高校3年生に、卒業前の3月からアルバイトとして現場に入ってもらうことはできますか

満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了していれば、児童には当たらないため、年少者として雇用すること自体は可能です。ただし、時間外労働と深夜業の禁止、危険有害業務と坑内労働の就業制限は、アルバイトでも正社員でも同じように適用されます。学校の許可や在学中の就労に関する取扱いは学校ごとに異なるため、卒業予定校にも確認してください。

Q. 本人が「残業したい」と言っている場合でも、時間外労働はさせられないのですか

させられません。労働基準法第60条は、年少者について36協定に関する規定を適用しないと定めており、本人の同意があっても時間外労働の根拠にはなりません。災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合の取扱いは別に定めがありますが、通常の繁忙を理由に使える規定ではありません。該当するかどうか迷う場面では、所轄の労働基準監督署か専門家に相談してください。

Q. 年齢証明書は、住民票の写しや運転免許証の確認でも足りますか

労働基準法第57条は「年齢を証明する戸籍証明書」を事業場に備え付けることを求めています。実務上どの書類で足りるかについては行政の取扱いがあるため、所轄の労働基準監督署または公表資料で確認してください。社内の入社手続の様式を変える場合は、確認した内容を記録に残しておくことをおすすめします。

Q. 満18歳の誕生日を迎えた日から、すぐに制限は外れますか

年少者に関する規定は満18歳に達するまでの者を対象としているため、満18歳に達した後は適用されません。ただし、社内の運用では、勤怠システムの区分変更、現場への通知、資格の受講手配がそろって初めて実態が変わります。誕生日の1か月前を目安に、現場と人事の双方で準備を始めてください。

Q. 派遣や応援で他社の年少者を自社の現場に受け入れる場合、責任はどちらにありますか

労働時間や就業制限の責任の所在は、契約の形態と実際の指揮命令の実態によって変わります。建設業務への労働者派遣には別の制限もあるため、まず契約形態そのものが適法かを確認してください。そのうえで、現場での作業割当は受け入れ側が実質的に決めることが多いため、就業制限の内容を事前に共有し、書面で確認しておくことが実務上の安全策になります。個別の事案は専門家に相談してください。

出典

  • 労働基準法

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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