#採用2026.10.04 公開読了 約7分建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

採用単価とは 自社の数字の出し方と使い方

採用単価は「採用にかかった費用÷採用人数」で表す指標です。ただし分子に何を入れるか、分母をどの時点で数えるかを決めないと、社内でも年度間でも数字が比べられません。費用区分の表、計算手順、職種別・経路別の分け方、よくあるつまずきまでを実務の順にまとめます。

情報の基準日
2026.10.03
採用

採用単価とは 自社の数字の出し方と使い方

人事ノート

採用単価とは何か

採用単価は、1人を採用するためにかかった費用を表す指標です。基本の形は次のとおりです。

  • 採用単価 = 一定期間の採用関連費用 ÷ 同じ期間の採用人数

法令で定義された用語ではありません。会計基準で計算方法が決まっているわけでもありません。つまり、分子と分母の決め方は各社が自分で決めるものです。ここを決めずに数字だけ出すと、昨年との比較も、職種間の比較もできなくなります。

採用単価を見る目的は、主に次の3つです。

  1. 来期の採用予算を積み上げで作る
  2. 採用経路(人材紹介、求人媒体、リファラル、ハローワーク、自社サイトなど)の配分を決める
  3. 採用した人が定着しているかどうかと合わせて、投資の回収を考える

建設・不動産業界では、施工管理や設計のように有資格者・経験者の採用が中心になる職種と、事務や営業のように母集団が作りやすい職種が社内に混在します。全社平均の採用単価だけを見ても判断材料になりにくいのは、このためです。

分子に入れる費用を決める

まず、どの費用を採用単価に含めるかを決めます。社外に払った費用(外部費用)だけで計算する方法と、社内の人件費(内部費用)まで含める方法があります。どちらが正しいということはありませんが、年度をまたいで同じ基準で続けることが条件です。

区分具体例扱いの目安
外部費用(必ず含める)人材紹介の成功報酬、求人媒体の掲載料、スカウト送信の利用料、合同説明会の出展料全額を含める。該当する採用の分として明確に特定できる
外部費用(按分して含める)採用サイトの制作費、パンフレット・動画の制作費、年間契約の媒体利用料使用期間や掲載職種で按分する。按分ルールを文書に残す
外部費用(判断が分かれる)入社時の支度金、赴任旅費、紹介者への報奨金賃金・福利厚生に入れるか採用費に入れるかを決めて固定する
内部費用(人件費)人事担当者の工数、現場社員が面接・現場見学に使った時間時間単価×時間で算入するかを決める。算入しないなら「外部費用のみ」と明記
内部費用(その他)応募者の交通費精算、面接会場の費用、採用管理の仕組みの利用料定額のものは期間按分、実費のものは実額

内部費用まで入れると実態には近づきますが、工数の記録が続かないと翌年の数字が出せません。工数記録の仕組みがない段階では、外部費用のみで始めて、記録が定着してから内部費用を足す進め方が現実的です。

分母の「採用人数」をいつの時点で数えるか

分母は単純に見えて、もっとも食い違いが起きるところです。どの時点の人数を使うかで、同じ費用でも採用単価は大きく変わります。

数え方定義向いている使い方注意点
内定承諾ベース承諾書を受け取った人数採用活動そのものの効率を見る内定辞退や入社前辞退が反映されない
入社ベース実際に入社日を迎えた人数予算管理、経営への報告入社が翌年度にずれると年度がそろわない
試用期間満了ベース試用期間を終えて在籍している人数早期離職を含めた実態を見る結果が出るまで数か月待つ必要がある
入社1年在籍ベース入社から1年後に在籍している人数定着まで含めた投資判断1年遅れの数字になる。速報には使えない

実務では、予算管理には入社ベース、振り返りには入社1年在籍ベースと、用途ごとに2本持つやり方が扱いやすいです。1本に絞るなら入社ベースを基本にして、別途、早期離職の人数を併記します。

計算の手順

社内でそのまま使える手順にすると、次のようになります。

  1. 集計期間を決めます。会計年度に合わせると予算と突き合わせやすくなります。
  2. 費用の区分表を作り、含める費目と按分ルールを先に文書化します。
  3. 経理の補助科目や支払データから、期間内に発生した採用関連費用を抜き出します。
  4. 費用の1件ごとに、どの職種・どの採用経路の分かを割り当てます。割り当てられないものは「共通費」として別に置きます。
  5. 分母の数え方を決め、職種別・経路別の採用人数を数えます。
  6. 職種別・経路別に、費用÷人数を計算します。共通費は最後に全体へ配賦するか、配賦せずに別表示にします。
  7. 全社の採用単価を出します。内訳を必ず添えます。
  8. 前年同期と並べ、差が出た理由を1行で書き添えます。

担当と期限の目安は次のとおりです。費目の設計は人事と経理が期初に決めます。費用の割り当ては人事が月次で行います。四半期ごとに人事が集計し、年度末に経営へ報告します。月次で割り当てを進めておかないと、年度末にまとめてやることになり、どの支払がどの採用に対応するかが分からなくなります。

職種別・経路別に分けて見る

全社平均の採用単価は、職種構成が変わるだけで上下します。施工管理の経験者を人材紹介で採用した年と、未経験者を媒体で採用した年では、構成が違うので平均を比べても意味がありません。

分け方の基本は次の2軸です。

  • 職種軸:施工管理、設計、積算、営業、事務など、求人票を分けている単位
  • 経路軸:人材紹介、求人媒体、ハローワーク、自社サイト、リファラル、学校経由など

この2軸で表にすると、どこに費用が偏っているかが一目で分かります。あわせて、経路ごとの応募数・面接数・内定数も並べると、単価が高い原因が「単価の高い経路を使ったから」なのか「選考の通過率が低くて何人も募集したから」なのかを切り分けられます。

経路の全体傾向を外部の数字で確かめたいときは、厚生労働省「雇用動向調査」が使えます。この調査では、入職者がどのような経路で入職したかの集計が公表されています。産業別の入職・離職の状況とあわせて、自社の経路構成が業界の傾向と比べて偏っていないかを見る材料になります。具体的な数値は改定・更新があるため、使うときは公表資料で最新の数値を確認してください。

定着まで含めて見る

採用単価は、採用した時点の費用しか表しません。入社後すぐに離職すれば、同じ費用でもう一度採用することになります。そこで、次の2つを併記します。

  • 入社1年在籍ベースの採用単価(分母を1年後の在籍者数にする)
  • 入社後6か月・12か月の在籍率

単価が低い経路でも在籍率が低ければ、実質的な費用は高くなります。逆に、単価が高くても定着しているなら、その経路は有効だったと判断できます。業界全体の入職・離職の水準を確かめる際も、雇用動向調査の産業別の集計が参考になります。

よくあるつまずき

  • 人材紹介の返戻金を処理していない:早期離職で手数料の一部が返金された場合、費用から差し引かないと単価が実態より高く出ます。返金は、元の採用に紐づけて減額します。
  • 年間契約の媒体費を初月に全額計上している:按分しないと、契約した月の採用単価だけが跳ね上がります。期間で按分するルールを決めます。
  • 内定辞退者にかかった費用を除いている:辞退者の選考にも費用はかかっています。費用は全額を分子に残し、分母だけを入社者にするのが一般的な整理です。
  • 年度をまたぐ採用の扱いが決まっていない:3月に費用が発生し、4月に入社した人をどちらの年度に入れるかを決めていないと、前年比が崩れます。分母の年度に費用を寄せるか、発生年度で切るかを先に決めます。
  • 採用担当者の人件費を入れたり入れなかったりする:年ごとに基準が変わると比較ができません。基準を変えた年は、変更前の方法でも計算して並記します。
  • 全社平均だけを経営に報告している:職種構成の変化で数字が動いているのに、採用活動の良し悪しとして受け取られます。必ず内訳を添えます。
  • 現場社員の面接時間を見えないままにしている:人件費を算入しない方針でも、面接にかかった延べ時間は記録しておくと、選考フローを短くする判断に使えます。

社内で先に合意しておくこと

採用単価は、数字そのものより「同じ基準で続けられるか」が価値を決めます。次の項目を1枚の文書にまとめ、人事・経理・経営で合意してください。

決める項目決め方の例
集計期間会計年度に合わせる
分子の範囲外部費用のみ/内部費用を含む
按分ルール年間契約は月割り、採用サイト制作費は3年で均等按分
分母の時点入社ベースを基本、年度末に1年在籍ベースも算出
分解の軸職種別×経路別
報告の頻度四半期ごとに人事から経営へ
基準変更時の扱い変更した年は旧基準でも併記する

よくある質問

Q. 採用単価はいくらが適正ですか

適正な水準を一律に示す公的な基準はありません。職種、地域、募集する経験年数、採用する人数によって大きく変わるためです。他社の数字を目標に置くよりも、自社の前年同期と比べ、採用した人の定着状況とあわせて判断することをおすすめします。

Q. 採用した人が入社前に辞退した場合、かかった費用はどう扱いますか

費用は分子に残し、分母の採用人数には入れないのが一般的な整理です。辞退者にも選考の費用は現実にかかっているためです。ただし、人材紹介の手数料のように入社しなければ発生しない費用は、そもそも請求が生じないので計上しません。返金が発生したときは、元の採用に紐づけて費用から差し引きます。

Q. リファラル採用の報奨金は採用費ですか、賃金ですか

社内の処理としては、採用費に入れる会社と、賃金・賞与として扱う会社の両方があります。税務上・社会保険上の取り扱いは支給の形によって変わるため、自社の規程を作る前に、税理士や社会保険労務士、所轄の機関へ確認してください。採用単価の計算上は、どちらに入れるかを決めて毎年同じにすることが重要です。

Q. 採用経路ごとの傾向を外部の統計で確かめられますか

厚生労働省「雇用動向調査」では、入職者の入職経路に関する集計が公表されています。産業別の入職・離職の状況とあわせて見ると、自社の経路構成が偏っていないかを確かめる材料になります。公表される区分や数値は調査年によって異なるため、使う前に公表資料で最新の内容を確認してください。

Q. 内部費用(人件費)を算入すべきですか

実態に近づける意味では算入する価値がありますが、工数の記録が続かないと翌年以降の数字が出せません。記録の仕組みがない段階では外部費用のみで始め、面接時間や説明会の対応時間の記録が定着してから算入する進め方が現実的です。途中で基準を変える年は、旧基準の数字も併記して比較できるようにしてください。

出典

  • 厚生労働省「雇用動向調査」

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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