#採用2026.04.08 公開2026.09.08 更新読了 約7建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

転勤の範囲を求人票にどう書けば食い違いが減るか

2024年4月から、求人と労働契約の締結時に「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要になりました。建設業は現場異動・応援・出張が日常にあり、書き方を決めておかないと入社後の食い違いが起きます。区分の決め方、記載例、社内手順をまとめます。

情報の基準日
2026.09.08
採用

転勤の範囲を求人票にどう書けば食い違いが減るか

人事ノート

「転勤なし」と書いたのに、入社後に片道90分の現場へ配属して揉めた。「全国転勤あり」と書いたために、実際はエリア内異動しかないのに応募が集まらない。どちらも建設業の採用でよく起きます。

2024年4月の労働条件明示のルール変更で、就業場所と業務について「変更の範囲」を示すことが求められるようになりました。これは法令対応の話にとどまらず、入社後の食い違いを減らす道具として使えます。この記事では、区分の決め方、求人票への書き方、社内の手順を整理します。

まず押さえる:どの場面で何を明示するか

明示のルールは、募集の段階(職業安定法)と、労働契約を結ぶ段階(労働基準法)の二段構えです。2024年4月から、どちらにも「変更の範囲」が加わりました。

場面主な根拠就業場所・業務についての明示
求人の申込み、募集広告、自社サイトでの募集職業安定法の労働条件等の明示就業場所と業務内容に加えて、それぞれの「変更の範囲」
労働契約の締結時(内定時・入社時)労働基準法の労働条件明示雇入れ直後の就業場所・業務と、「変更の範囲」
有期契約の更新時同上更新のたびに同じ内容を明示
募集内容を途中で変更したとき職業安定法の変更明示変更した内容を、応募者に速やかに明示

ポイントは三つです。第一に、「変更の範囲」は将来の配置転換の可能性を示すものであり、雇入れ直後の勤務地だけを書けば足りるわけではありません。第二に、募集段階と契約段階で内容がずれると、そのずれ自体が説明を求められます。第三に、人材紹介会社へ出す求人票も募集の一部です。自社の求人ページだけ直して、紹介会社に渡した書式が古いままだと食い違いが生まれます。

なお、一時的な出張や研修は「就業場所の変更の範囲」には含まれないという考え方が示されています。反対に、テレワークが通常想定される場合は就業場所として扱う整理があります。個別の当てはめに迷うときは、厚生労働省の公表資料とQ&Aで必ず確認してください。

建設業で判断が割れる四つの形態

建設業は、勤務地の動き方が他業種より複雑です。まず社内で言葉の意味をそろえます。

形態具体例考え方求人票での扱い
現場異動竣工に伴い、次の施工現場へ配属替え通常想定される就業場所の移動。範囲として書く必要が高い「当社が施工する現場」を範囲に含め、地理的な広がりを示す
転勤(拠点異動)本社から支店へ、所属を移す就業場所の変更そのもの支店の所在地または対象エリアを書く
応援・派遣的な支援繁忙期に他支店の現場を数週間手伝う期間と指揮命令の実態で判断が分かれる恒常的にあるなら範囲に含め、面接でも説明する
出張打合せ、検査立会いで数日間他県へ一時的なものは変更の範囲には含まれない整理範囲としてではなく、頻度を業務内容の説明で伝える

出向やJV(共同企業体)への派遣がある会社は、この四つに加えて扱いを決めておきます。出向は労働契約の相手方が変わる話が絡むため、求人票の一行で済ませず、就業規則や出向規程との整合を確認してください。

変更の範囲は四つの型に整理する

職種ごとに、次のどれに当たるかを決めます。全職種を一つの文言で済ませようとすると、実態と合わなくなります。

どんな会社・職種に合うか記載例
拠点限定型事務、経理、内勤の技術管理。転勤も現場常駐もない変更の範囲:本社(東京都◯◯区)内の各部署
エリア限定型地域密着の施工管理。通勤圏内の現場のみ変更の範囲:当社◯◯支店および同支店が施工する現場(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)
全国型大型土木、プラント、全国に支店を持つ会社変更の範囲:当社の国内全ての事業所および当社が施工する全ての現場
原則限定・例外あり型原則はエリア内だが、大型案件で例外が出る変更の範囲:原則として◯◯支店管内。ただし本人の同意を得た場合は、当社の国内全ての事業所および現場

「原則限定・例外あり型」は実務で使いやすい一方、例外の発動条件を社内で決めておかないと運用が崩れます。「本人の同意を得た場合」と書いたなら、同意を書面で取る手順まで決めてください。口頭の内示だけで遠隔地へ動かすと、書いた内容と運用が食い違います。

「会社の定める場所」だけで終わらせない

変更の範囲を「会社の定める場所」の一文で済ませる例を見かけます。形式上は範囲を示していますが、応募者には何も伝わりません。結果として、面接で毎回同じ質問が出て、入社後に「聞いていない」が起きます。少なくとも、都道府県名、支店名、「当社が施工する現場」という三つの要素のどれかで、地理的な広がりが読み取れる形にしてください。

現場常駐を隠さない

施工管理の求人で「勤務地:本社」とだけ書き、実態は現場常駐というケースは、入社後3か月以内の離職につながりやすい書き方です。雇入れ直後の就業場所と、変更の範囲を分けて書けば整理できます。たとえば「雇入れ直後:◯◯現場(千葉県◯◯市)/変更の範囲:当社が施工する現場および◯◯支店(関東1都3県)」のように、配属先が現場であることを最初に示します。

明日から動く手順

  1. 過去3年の異動実績を棚卸しする(人事、2週間)。誰が、どこからどこへ、何回動いたかを一覧にします。実績のない範囲を広く書くと応募が減り、実績のある範囲を書き漏らすと食い違いが起きます。判断の材料は実績です。
  2. 就業規則の配転条項を確認する(人事、1週間)。求人票の「変更の範囲」が就業規則より広いと、根拠のない範囲を示すことになります。狭すぎる場合も、実際の異動運用と合いません。
  3. 職種ごとに型を割り当てる(人事と各部門長、1週間)。前章の四つの型のどれかを、職種と等級の単位で決めます。決めた内容は一覧表にして残します。
  4. 文言集を作る(人事)。型ごとに、そのまま貼り付けられる文章を用意します。担当者が毎回書き起こすと表現がぶれます。
  5. すべての募集経路に反映する(人事、1週間)。自社の採用ページ、求人媒体、人材紹介会社へ渡す求人票、ハローワークの求人。反映漏れが起きやすいのは紹介会社向けの書式です。更新日を記録しておきます。
  6. 面接での説明手順を決める(人事と面接官)。一次面接で範囲を口頭でも伝え、確認した事実を記録に残します。誰が説明したかまで残すと、後の確認が早くなります。
  7. 労働条件通知書の文言を求人票とそろえる(人事)。範囲を狭める方向の変更であっても、募集時と内容が違えば変更明示の対象になります。
  8. 入社後の内示手順を決める(人事と部門長)。何か月前に、誰が、どの様式で伝えるか。ここが決まっていないと、書いた範囲が正しくても運用でつまずきます。

よくあるつまずき

求人票は直したが、紹介会社の求人票が古い。 経路ごとに更新責任者と更新日を管理してください。応募者は複数の経路を見比べています。

「転勤なし」と書き、現場異動の説明を落とす。 拠点は変わらなくても、現場は変わります。「転勤なし(ただし当社施工現場への配属替えあり/通勤時間の目安:片道◯分以内)」のように、二段で書くと誤解が減ります。

全国型と書いたまま、実態は地域内。 応募が集まらない原因として見落とされがちです。実績を棚卸しすると、「全国転勤あり」が過去の名残であるケースは珍しくありません。

限定して書いた後で、範囲を広げられない。 明示した範囲を超える異動をさせるには、就業規則の根拠と本人の合意の整理が必要です。狭く書くこと自体は問題ありませんが、将来の運用を見越して型を選んでください。判断が難しい事案は、社会保険労務士や弁護士に相談することをおすすめします。

単身赴任や住宅の扱いを書いていない。 全国型やエリアの広い会社では、赴任旅費、社宅、単身赴任手当の有無が応募判断に直結します。これらは明示義務の項目とは別ですが、書かないと面接で必ず聞かれます。

家族の事情を面接で深掘りしすぎる。 転勤の可否を確認したいあまり、家族構成や配偶者の就業状況を細かく聞くと、業務との関連性を欠く質問になりかねません。確認するのは「示した範囲での勤務が可能かどうか」に絞ります。

有期契約の更新時に明示し直していない。 更新のたびに明示が必要です。契約更新の事務手順に、就業場所・業務の変更の範囲の欄を入れておきます。

社内チェックリスト

募集を出す前に、次を確認してください。

  • 雇入れ直後の就業場所と、変更の範囲を分けて書いているか
  • 変更の範囲から、地理的な広がりが読み取れるか
  • 現場常駐がある職種で、そのことが求人票から分かるか
  • 業務内容についても「変更の範囲」を書いているか
  • 就業規則の配転条項と矛盾していないか
  • 過去3年の異動実績と、書いた範囲が大きくずれていないか
  • すべての募集経路で同じ文言になっているか
  • 労働条件通知書の様式に、変更の範囲の欄があるか
  • 有期契約の更新事務に、明示の手順が組み込まれているか
  • 例外を設けた場合、その発動条件と同意の取り方を決めているか

求人票を直すと、面接の質が上がる

転勤の範囲を書き直す作業は、法令対応であると同時に、自社の異動運用を言語化する作業です。実績を棚卸しすると、「なんとなく全国転勤ありにしていた」「支店ごとに運用が違っていた」といったことが見えてきます。

範囲を先に示しておけば、面接では勤務地の確認に時間を使わず、経験や志向の確認に集中できます。入社後の内示も、あらかじめ示した範囲の中での話になり、説明が通りやすくなります。

明示すべき項目の詳細や、出張・テレワークの扱いについては、厚生労働省の公表資料で最新の内容を確認してください。自社の配転条項の見直しを伴う場合は、就業規則の変更手順とあわせて検討することをおすすめします。

出典

  • 厚生労働省「労働条件明示のルール変更」

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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