若手の応募が無い求人票を書き直す手順
人事ノート「若手が来ない」という相談は、求人票の文章だけの問題であることは多くありません。募集している仕事の中身、配属先、労働条件、選考の速さのどれかが、若い応募者の判断基準と噛み合っていないことが大半です。求人票の書き直しは、その噛み合わなさを社内で確認し、確かめられる言葉に置き換える作業です。
この記事では、書き直しに入る前の事実確認から、項目ごとの観点、社内で先に決める事項、公開後の検証までを、担当者と期限を添えて整理します。年齢制限の記載可否そのものは別の論点なので、ここでは深入りしません。
まず「若手が来ない」を3つの事実に分解する
書き直しの前に、どの段階で止まっているのかを特定します。段階が違えば、直す場所も変わります。
| 症状 | 疑うところ | 最初に見る数字 |
|---|---|---|
| 求人は表示されているが応募がほぼ無い | 冒頭で伝わる条件(勤務地・休日・給与の下限) | 表示回数に対する応募数 |
| 応募はあるが年齢層が上に偏る | 仕事内容の書き方が経験者前提になっている | 応募者の年齢分布 |
| 応募後に連絡が取れず面接に至らない | 連絡の速さと選考日程の柔軟性 | 応募から一次連絡までの時間、面接設定率 |
| 面接には来るが辞退される | 面接前に伝えている情報の量と正確さ | 一次面接後の辞退率 |
数字は、直近3か月分と、その前の3か月分を並べます。季節要因や現場の繁忙で応募が動くため、1か月だけを見て判断しないでください。担当は人事、着手から3営業日以内にそろえるのが目安です。
雇用動向調査で、若手の動きの傾向をつかむ
自社のデータだけでは、若手の動き方が業界全体と比べて特殊なのか判断できません。厚生労働省の雇用動向調査は、入職率と離職率を産業別・年齢階級別・性別に集計しているほか、転職入職者について前職を辞めた理由や入職経路も集計しています。書き直しの材料として、次の順で見ます。
- 建設業の年齢階級別の入職率と離職率を見て、若い層の動きが業界全体でどうなっているかを確認します。
- 転職入職者が前職を辞めた理由の集計を見て、個人的理由の内訳に何が並ぶかを確認します。ここで上位に来る項目は、求人票で先回りして説明すべき論点になります。
- 入職経路の集計を見て、自社が使っている募集手段が、その層に届く経路と合っているかを確認します。
具体的な数値は年によって動きます。この記事では数値を挙げません。最新の公表資料で、対象年、産業分類の区切り、集計対象の事業所規模を必ず確認してください。また、統計は業界全体の傾向であって、自社の応募状況をそのまま説明するものではありません。あくまで「自社の数字がどちらに振れているか」を見る物差しとして使います。
項目ごとに、何を書き直すかを決める
求人票を頭から書き直そうとすると手が止まります。項目に分け、それぞれ「若手が確かめたいこと」を先に書き出してから埋めていきます。
| 項目 | 若手が確かめたいこと | 書き直しの方向 | 社内で確認する相手 |
|---|---|---|---|
| 仕事内容 | 入社直後に何を任されるか | 1年目、2年目、3年目で担当が変わる流れを段階で書く | 配属先の責任者 |
| 現場の種類と規模 | 自分の経験で通用するか | 直近に施工した案件の用途と規模帯を書く | 営業部門または工事部 |
| 勤務地 | 通えるか、いつ変わるか | 配属候補の現場所在地と、変更が生じる条件を書く | 工事部、人事 |
| 勤務時間 | 朝礼前の出勤や直行直帰の扱い | 始業終業時刻、休憩、直行直帰の可否を書く | 人事、労務 |
| 休日 | 現場が土曜に動くかどうか | 年間休日数と、4週8休か隔週土曜かを書き分ける | 工事部 |
| 時間外労働 | 実際にどれくらいか | 直近1年の月平均時間外時間を部署単位で書く | 労務 |
| 給与 | 自分がいくらから始まるか | 経験年数ごとの初年度想定額の幅を書く | 人事、経営 |
| 手当 | 何が固定で何が変動か | 固定残業代の有無、時間数、超過分の扱いを明記する | 労務 |
| 教育 | 放り込まれないか | 入社後3か月の教育内容と、指導担当の有無を書く | 配属先の責任者 |
| 資格 | 費用と時間が出るか | 受験費用の負担範囲、勉強時間の扱いを書く | 人事 |
| 評価と昇給 | 何をすれば上がるか | 評価の時期と、昇給の実績幅を書く | 人事、経営 |
| 選考 | どれくらいで決まるか | 選考回数、面接の所要時間、結果連絡までの日数を書く | 人事 |
表を埋める過程で、社内で答えが出ない欄が必ず出ます。そこが求人票の弱点であり、同時に、若手が入社後に不信感を持つ箇所でもあります。
曖昧な表現を、確かめられる表現に置き換える
若手からの応募が薄い求人票には、共通して抽象語が多く並びます。抽象語は、読み手が自分に当てはめて考えられないため、読み飛ばされます。
| よくある表現 | 何が伝わらないか | 書き直しの方向 |
|---|---|---|
| アットホームな職場です | 一緒に働く人の顔ぶれ | 配属部署の人数、平均年齢、直近3年の20代入社人数 |
| 残業は少なめです | 実際の時間 | 直近1年の月平均時間外時間、繁忙期と閑散期の差 |
| 頑張り次第で高収入 | 到達までの道筋 | 経験年数別の支給実績の幅、昇給の判断時期 |
| 未経験歓迎 | 入社直後の扱い | 3か月間の教育内容、独り立ちまでの目安期間 |
| 完全週休2日制 | 現場カレンダーとの関係 | 年間休日数、土曜出勤が発生する条件と振替の運用 |
| 各種資格取得支援あり | 何がどこまで出るか | 対象資格、費用負担の範囲、受験時の勤務の扱い |
| やりがいのある仕事です | 業務の中身 | 担当する工程、関わる協力会社の数、裁量の範囲 |
置き換えるときの原則は2つです。第一に、社内の記録で裏が取れる事実だけを書きます。第二に、良く見せるために丸めないことです。求人票の記載は、後の労働条件明示や入社後の説明と食い違うと、早期離職の直接の原因になります。
書き直しの手順
- **現状の数字をそろえる。**担当は人事。着手から3営業日以内。応募数、年齢分布、面接設定率、辞退理由を出します。
- **直近1年以内に入社した若手に聞き取る。**担当は人事と配属先の責任者。1週間以内。応募を決めた理由と、入社前に分からなくて不安だったことを、それぞれ3つずつ聞きます。
- **募集する配属先を1つに絞る。**担当は工事部門の責任者。10日以内。複数現場をまとめた求人票は、誰の求人か分からなくなります。
- **労働条件を確定し、裏を取る。**担当は労務。10日以内。就業規則、賃金規程、36協定の内容と突き合わせます。
- **原稿を書く。**担当は人事。2週間以内。前章の表を上から埋め、抽象語を機械的に置き換えます。
- **現場責任者に読ませ、事実と違う箇所を潰す。**担当は人事。原稿完成から3営業日以内。現場から見て「そうは言えない」記述は必ず出ます。
- **募集内容の記載として問題がないかを確認する。**担当は人事。公開前。虚偽や誤解を生む表示になっていないか、明示すべき事項が抜けていないかを点検します。判断に迷う表現があれば、公開前に社内の管理部門や専門家に相談してください。
- **公開し、4週間後に検証する。**担当は人事。公開日を記録し、比較できるようにします。
人事だけでは書けない項目を、先に社内で決める
書き直しが途中で止まる原因の多くは、文章力ではなく、社内で決まっていない事項です。
| 決めること | 決める人 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 未経験をどこまで受け入れるか | 経営、工事部門 | 書き直し着手前 |
| 初年度の給与の下限 | 経営、人事 | 着手から1週間 |
| 入社後3か月の教育担当を誰にするか | 配属先の責任者 | 着手から1週間 |
| 配属変更が生じる条件 | 工事部門、人事 | 着手から10日 |
| 選考の回数と結果連絡までの日数 | 人事 | 着手から10日 |
| 面接に出る現場責任者の人選 | 工事部門 | 公開前 |
特に3つ目と6つ目は後回しにされがちです。教育担当が決まっていないまま「未経験歓迎」と書くと、入社後に受け入れが崩れます。面接に現場の人間が出るかどうかも、若手の志望度に直結します。
よくあるつまずき
- **年齢層を求人票に書いてしまう。**募集にあたって年齢を条件にすることは原則としてできません。若手に届く求人票にすることと、年齢で絞ることは別の話です。例外の扱いは別の論点なので、公表されている指針で確認してください。
- **複数の職種と複数の現場を1枚に詰め込む。**読み手は自分の話として読めません。求人票は配属先ごとに分けます。
- **教育制度の名称だけを並べる。**制度名は情報量がゼロに近いです。誰が、いつ、何時間、何を教えるかまで書きます。
- **給与の上限だけを大きく出す。**上限は自分に関係ないと判断され、かえって信頼を落とします。下限と、そこからの上がり方を書きます。
- **書き直した後、社内に共有しない。**面接で現場責任者が求人票と違う説明をすると、その場で志望度が落ちます。公開前に配属先へ現物を回します。
- **一度直して放置する。**現場の状況も労働条件も変わります。少なくとも半年に一度は記載内容の棚卸しを行い、実態とずれた箇所を直します。
- **写真や動画だけを差し替えて満足する。**見た目を変えても、条件の中身が同じなら応募数は動きません。
公開後4週間で見る指標
| 指標 | 見方 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 表示回数に対する応募数 | 書き直し前と比べる | 変わらなければ、冒頭に置いた条件を見直す |
| 応募者の年齢分布 | 20代と30代前半の比率 | 上がらなければ、仕事内容の書き出しが経験者前提になっていないか確認 |
| 応募から一次連絡までの時間 | 平均と最長 | 24時間を超える案件があれば、連絡担当と手順を決め直す |
| 面接設定率 | 応募のうち面接に至った割合 | 低ければ、応募後に送っている案内文の情報量を増やす |
| 面接後の辞退率と理由 | 個別に記録する | 条件面が理由なら、求人票の記載ではなく条件そのものの検討へ |
4週間で応募が動かない場合、原因は求人票の外にある可能性があります。募集手段そのものが対象層に届いていないのか、条件が市場と離れているのかを、次の段階として切り分けます。
公開前チェックリスト
- 配属先が1つに特定されている
- 入社1年目に担当する業務が具体的に書かれている
- 現場の用途と規模帯が書かれている
- 始業終業時刻と休憩時間が書かれている
- 年間休日数と、土曜の扱いが書かれている
- 直近の時間外労働の実績が書かれている
- 給与の下限が書かれ、固定残業代の有無と時間数が明記されている
- 入社後3か月の教育内容と指導担当の有無が書かれている
- 資格取得支援の対象と負担範囲が書かれている
- 評価の時期と昇給の判断基準が書かれている
- 選考回数と結果連絡までの日数が書かれている
- 抽象語が事実に置き換わっている
- 就業規則、賃金規程、36協定と記載が矛盾していない
- 面接に出る全員が記載内容を読んでいる
- 公開日と、検証を行う日が社内カレンダーに入っている
労働条件の記載や募集時の表示については、法令上の要請と個社の事情が絡みます。判断に迷う事案は、公表資料を確認したうえで、社会保険労務士などの専門家に相談してください。
出典
- 厚生労働省「雇用動向調査」
出典
- 厚生労働省「雇用動向調査」
本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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