在職中の候補者と面接日程を合わせる段取り
人事ノート建設・不動産の中途採用では、候補者のほとんどが在職中です。日中は現場や客先にいて電話に出られず、面接のために半日空けることも簡単ではありません。選考の質を上げる前に、まず「日程が合わないまま消えていく候補者」を減らすほうが効果が出ます。
この記事は、面接日程の調整を人事の仕事として設計し直すための手順書です。面接枠の作り方、連絡の型、リードタイムの目標、そして日程調整の連絡で踏み込んではいけない話題まで扱います。
日程調整で離脱が起きる仕組みを先に押さえる
在職中の候補者が選考から抜ける典型は、次の流れです。
- 応募してから返信が来るまでに数日かかる
- 提示された候補日が平日の日中だけで、勤務先を抜けられない
- こちらから代替日を出すのに、また数日かかる
- その間に、日程がすぐ決まった他の会社の選考が先に進む
つまり原因は面接の内容ではなく、返信の速さと枠の幅です。ここは仕組みで直せます。逆に、面接官である現場の管理職の予定を毎回聞きに回っている限り、返信は速くなりません。
建設業に特有の事情も重なります。候補者側は朝礼から夕方の片付けまで現場に拘束されやすく、年度末や竣工前は動けません。採用する側も、面接官が現場常駐で急な立ち会いが入ります。両方が動きにくい前提で組み立てます。
手順1 面接枠を先に確保する
日程調整の起点は、候補者ではなく自社です。候補者に「ご都合はいかがですか」と聞くところから始めると、往復が増えて時間を失います。
先に決めるのは次の4点です。
- 一次・二次それぞれの所要時間
- 面接官(主担当と副担当)
- 対面かオンラインか
- 曜日と時間帯の枠
枠は月初に押さえます。面接官の予定表に「採用面接(仮)」として先に入れておき、応募が無ければ前日に解放する運用にします。仮押さえが無い会社では、候補者に日程を提示するまでに社内調整が入り、そこで一日から三日が失われます。
枠の設計例
| 枠 | 時間帯 | 想定する候補者 | 形式 | 面接官 |
|---|---|---|---|---|
| 早朝枠 | 平日 7時30分〜8時15分 | 現場直行前に自宅から参加 | オンライン | 人事+部門長 |
| 昼枠 | 平日 12時15分〜12時50分 | 昼休みに車内から参加 | オンライン(短縮版) | 人事のみ |
| 夕方枠 | 平日 18時30分〜19時30分 | 現場を上がった後 | 対面またはオンライン | 部門長+人事 |
| 土曜枠 | 土曜 9時〜11時 | 週休二日で土曜が休みの候補者 | 対面 | 役員+部門長 |
| 日中枠 | 平日 14時〜15時30分 | 有給を取得できる候補者 | 対面+現場見学 | 部門長+現場責任者 |
枠は「一次はオンラインで短く、二次は対面で長く」と役割を分けると、候補者の負担が減ります。一次から対面90分を求めると、在職中の候補者は有給を使わざるを得ず、そこで辞退が出ます。
昼枠は音声環境が悪くなりがちです。短時間の確認に用途を限り、評価の重い質問は入れない前提で使います。
手順2 最初の返信で日程を決めきる
返信の目的は、やり取りを一往復で終わらせることです。次の要素を最初の連絡に全部入れます。
- 応募への礼と、選考の全体像(回数・所要時間・形式)
- 候補日を3つ以上。曜日と時間帯を分散させる
- 「いずれも難しい場合は、ご都合のよい曜日と時間帯の傾向をお知らせください」の一文
- 面接の形式(オンラインの場合は接続方法、対面の場合は場所と所要時間)
- 当日の連絡先(人事の携帯番号)と、変更・遅刻時の連絡方法
- 返信の期限(例:3営業日以内)
候補日を1つだけ出すのは避けます。断られた時点で往復が発生します。逆に10個並べるのも選びにくく、返信が遅れます。3つから5つが扱いやすい範囲です。
連絡は候補者が指定した手段に合わせます。在職中の候補者にとって、勤務時間中に電話に出ること自体が負担であり、周囲に転職活動を知られる原因にもなります。
| 連絡手段 | 使いどころ | 注意点 |
|---|---|---|
| 電子メール(本人の私用アドレス) | 日程提示、確定連絡、案内の送付 | 会社のアドレスへは送らない。迷惑メール振り分けを想定し件名を明確にする |
| 携帯電話への通話 | 日程が固まらないとき、当日の緊急連絡 | 事前に「何時ごろなら通話可能か」を確認しておく |
| 短文メッセージ | 前日リマインド、当日の遅刻連絡 | 記録が残る形で要点はメールにも残す |
候補者の勤務先に電話をかける、勤務先経由で連絡を取るといった行為は絶対に行いません。本人の同意なく現在の勤務先へ在籍や評価を照会することも避けます。厚生労働省「公正な採用選考の基本」では、身元調査の実施が就職差別につながるおそれのある取扱いとして挙げられています。
手順3 前日と当日の運用を決めておく
日程が決まっても、当日の欠席で流れます。次の運用を標準にします。
- 確定連絡は当日中に送る(日時、形式、所要時間、接続方法または集合場所、持ち物、担当者名)
- 前日の夕方に短いリマインドを送る
- 面接官には副担当を必ず立て、現場の急用で主担当が抜けても実施できるようにする
- 開始5分前には人事が接続または受付に待機する
- 開始10分を過ぎて連絡が無い場合の対応(電話1回、その後メールで再調整)を決めておく
- 面接終了時に、次の選考の日程をその場で仮決めする
6番目が効きます。面接後に持ち帰って社内で合否を出し、それから次の日程を調整すると、また往復が発生します。「合格の場合は次はこの枠でお願いしたい」と面接の場で伝え、仮日程を押さえておけば、リードタイムが数日縮みます。
面接官の直前キャンセルは、候補者の信頼を最も損ねます。現場都合はやむを得ませんが、その場合は人事が代替日を即日提示し、面接の形式を短縮する、面接官を交代するなどの選択肢を用意しておきます。
手順4 リードタイムに目標値を置く
感覚で運用すると改善しません。自社の実績を測り、目標を置きます。以下は設計の起点として使える考え方で、実際の数値は自社の応募数と面接官の体制に合わせて決めてください。
| 工程 | 目標 | 測り方 |
|---|---|---|
| 応募受付から一次返信 | 1営業日以内 | 応募日時と送信日時の差 |
| 一次返信から一次面接の実施 | 1週間以内 | 送信日と実施日の差 |
| 一次面接から結果連絡 | 3営業日以内 | 実施日と連絡日の差 |
| 一次面接から二次面接 | 10日以内 | 実施日の差 |
| 最終面接から内定通知 | 3営業日以内 | 実施日と通知日の差 |
| 応募から内定通知まで | 3週間以内 | 応募日と通知日の差 |
測る担当と、確認する会議を決めます。人事担当者が毎週金曜に一覧を更新し、月1回の採用会議で滞留している候補者を確認する、という程度で足ります。滞留の原因が「面接官の枠が無い」であれば、枠の追加か面接官の増員という判断につながります。
手順5 現場見学を組み込むときの段取り
施工管理や設備の職種では、現場や作業所を見せることが動機づけになります。ただし在職中の候補者を現場に入れるには準備が必要です。
- 入場できる現場かを先に確認します。他社が元請の現場は、入場に元請の許可と手続きが必要です。自社施工の現場、自社が管理する物件、完成済みの物件、事務所や資材ヤードなど、手続きが軽い場所を候補にします。
- 保護具を用意します。ヘルメット、安全靴、ベストの貸出を誰が準備するかを決めます。靴のサイズは事前に聞きます。
- 安全面の責任範囲を社内で確認します。見学者の立入り可能な範囲と、同行者を決めます。危険な作業が行われている区画には近づけません。
- 服装と集合場所を具体的に伝えます。「動きやすい服装」だけでは伝わりません。
- 所要時間に移動を含めて伝えます。現地集合か、事務所集合かも明記します。
見学は土曜や、候補者が有給を取れる日に寄せると成立しやすくなります。反対に、繁忙期や大きな工程の直前に無理に入れると、現場の負担になり、見学の質も落ちます。
公正な採用選考の観点で気をつける点
日程調整は事務連絡ですが、会話の中で踏み込みすぎる事故が起きやすい場面です。厚生労働省「公正な採用選考の基本」では、応募者本人に責任のない事項や、本来自由であるべき事項を採用選考の過程で把握することが、就職差別につながるおそれがあるとされています。おおまかな区分は次のとおりです。詳細な項目は公表資料で確認してください。
| 区分 | 例として挙げられている事項 |
|---|---|
| 本人に責任のない事項 | 本籍・出生地、家族に関する事項(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入など)、住宅の状況、生活環境・家庭環境 |
| 本来自由であるべき事項 | 宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合など社会運動に関する事項、購読する新聞・雑誌・愛読書 |
| その他 | 身元調査の実施、合理的・客観的な必要性のない健康診断の実施 |
日程調整の場面では、次のような聞き方に注意します。
- 「土曜は家族の予定がありますか」「奥様は働いていますか」…家族に関する事項に踏み込みます。都合を聞くなら「土曜午前の枠はご都合いかがですか」で足ります。
- 「お住まいはどのあたりですか。持ち家ですか」…住宅の状況に当たります。通勤の可否を確認したいのであれば、勤務地を示して通勤が可能かを本人に確認します。
- 「今の会社の上司に確認してもよいですか」…本人の同意が無い照会は身元調査に当たるおそれがあります。
候補者の都合を尊重することと、私生活に立ち入ることは別です。聞くべきは「いつなら参加できるか」であり、「なぜ参加できないか」ではありません。この線引きを面接官にも共有しておきます。
よくあるつまずき
- 面接官の予定を毎回聞きに回っている:仮押さえの枠が無いため、返信が三日遅れます。月初に枠を確保する運用に変えます。
- 候補日が平日日中しかない:在職中の候補者は有給を使わなければ参加できません。早朝、夕方、土曜のいずれかを必ず含めます。
- 一次から対面90分を求める:移動と合わせて半日が消えます。一次は短いオンラインに切り替えます。
- 会社のメールアドレスや代表電話に連絡してしまう:勤務先に転職活動が知られる原因になります。連絡先は応募時に本人の希望を確認します。
- 面接後に日程を持ち帰る:次の面接までに2週間空きます。面接の場で仮日程を押さえます。
- 面接官の直前キャンセルを人事が説明しないまま放置する:候補者は「入社後も同じ扱いをされる」と受け取ります。当日中に代替日を提示します。
- オンライン面接の接続確認をしていない:開始10分が接続作業で消えます。接続方法を案内に明記し、前日にリマインドします。
- 内定後の入社日を早く決めすぎる:在職中の候補者は引継ぎと退職手続きが必要です。就業規則で申出期限を定めている勤務先が多く、実際の退職日は候補者の勤務先の規定と引継ぎの状況で決まります。法律上の取扱いは公表資料で確認し、入社日は本人と相談のうえ幅を持たせて決めます。
明日からのチェックリスト
- 一次・二次の所要時間と形式を文書で決めた
- 今月と来月の面接枠を面接官の予定表に仮押さえした
- 枠に早朝、夕方、土曜のいずれかを含めた
- 一次返信の文面を作り、候補日3つ以上を入れる型にした
- 面接官に副担当を割り当てた
- 前日リマインドの担当と時刻を決めた
- 面接の場で次工程の仮日程を押さえる運用を面接官に伝えた
- 応募から内定通知までのリードタイムを測る一覧を用意した
- 現場見学の候補地と保護具の準備担当を決めた
- 日程調整の連絡で触れない事項を人事と面接官で共有した
日程調整は雑務に見えますが、在職中の候補者にとっては最初に見る自社の仕事ぶりです。枠を先に押さえ、一往復で決め、約束を守る。この三つを守るだけで、同じ求人でも面接の実施数は変わります。個別の事案で判断に迷う場合は、社内の法務担当や専門家に相談してください。
出典
- 厚生労働省「公正な採用選考の基本」
本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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