#制度・助成金2026.10.02 公開読了 約8分建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

経営事項審査で人事が関わる評価項目の実務

経営事項審査には、技術職員の数、社会保険や退職金制度、若年者の育成、資格取得の支援など、人事部門が動かなければ点が付かない項目が並びます。審査基準日から逆算した社内の段取りと、確認資料、よくあるつまずきを整理しました。

情報の基準日
2026.10.01
制度・助成金

経営事項審査で人事が関わる評価項目の実務

人事ノート

経営事項審査(経審)は、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が受けなければならない審査です。根拠は建設業法にあります。経理や総務の仕事と思われがちですが、評価項目の多くは人に関わるもので、人事部門が審査基準日までに手を打たなければ点が付きません。この記事では、人事が関わる項目を抜き出し、いつ・誰が・何をするかの順に並べ替えて整理します。

点数の配分や要件は改正されることがあります。申請の直前には、許可行政庁(都道府県または国土交通省の地方整備局)が公表する最新の手引で必ず確認してください。

経営事項審査のどこに人事が関わるか

経審の総合評定値(P点)は、複数の評価項目を重み付けして算出します。人事が関わるのは、主に技術職員数を評価する部分と、社会性等を評価する部分です。

記号評価の対象人事部門の関与
X1完成工事高小さい
X2自己資本額、平均利益額小さい
Y経営状況(登録経営状況分析機関が分析)小さい
Z技術職員数、元請完成工事高大きい
Wその他の審査項目(社会性等)大きい

ZとWは、総合評定値の中で小さくない比重を占めます。重み付けの係数と算式は国土交通大臣が定める基準によりますので、数値は公表資料で確認してください。人事としては「技術職員の数と区分」「社会保険と退職金」「若年者の育成」「資格と教育」の4つが自部門の守備範囲だと考えると整理しやすくなります。

審査基準日から逆算して段取りを組む

経審は、申請の直前の事業年度終了の日を審査基準日として評価します。審査基準日より後に採用しても、制度を作っても、その回の点数には反映されません。人事の施策は決算日までに完了させる必要があります。結果通知には有効期間があり、公共工事の入札参加資格との関係で空白期間を作らない管理が求められます。有効期間の長さは通知書と公表資料で確認してください。

実務の順序は次のとおりです。

  1. 決算日の8か月前:技術職員名簿の見込みを作る。資格者の在籍状況、定年到達者、退職予定者を洗い出します。担当は人事。
  2. 決算日の6か月前:この時点までに入社していない人は、雇用期間の要件を満たせない可能性があります。採用の決裁を前倒しできないか検討します。担当は人事と各部門長。
  3. 決算日の3か月前:資格者証の有効期限、講習の受講期限、社会保険の加入漏れ、退職金制度の規程、法定外の労働災害補償の契約期間を棚卸しします。担当は人事と総務。
  4. 決算日(審査基準日):在籍者と制度の状況が確定します。
  5. 決算後:事業年度終了の届出を提出し、経営状況分析の結果を受けてから経審を申請します。担当は経理と総務、人事は名簿と証明書類を提供します。

技術職員数の評価で人事が確認すること

技術職員として数えるには、審査基準日において在籍し、審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係があることが求められます。常勤であることも前提です。1人の技術職員が申請できる業種の数には上限があり、同じ人を無制限に複数業種へ割り当てることはできません。上限の取扱いは公表資料で確認してください。

技術職員は保有する資格などに応じて区分され、区分ごとに点数が決まっています。おおよその考え方は次のとおりです。

区分の例評価の高さ
1級の国家資格者で監理技術者講習を受講している者最も高い
1級の国家資格者高い
監理技術者補佐となり得る者中位
2級の国家資格者、登録基幹技能者低い
実務経験で主任技術者になり得るその他の技術者最も低い

区分の名称と具体的な点数は改正の対象になりますので、申請時点の基準を公表資料で確認してください。人事としては、次の4点を年間の管理項目にしておくと取りこぼしが減ります。

  • 資格者台帳を作り、氏名、資格の種類、取得年月、合格証や資格者証の番号、有効期限を一元管理する。
  • 監理技術者資格者証と監理技術者講習の期限を管理し、失効前に受講の案内を出す。
  • 業種の割り当てを事前に試算し、同じ業種に資格者が偏っていないかを確認する。
  • 1級取得の候補者を把握し、受験の時期と決算日の関係を踏まえて支援する。

社会保険と退職金の整備は人事の仕事

社会性等の評価のうち、労働福祉の状況は人事と総務が直接動かせる部分です。加入していないと減点になるもの、整備すると加点になるものが混在しています。

項目評価の向き主な確認資料
雇用保険への加入未加入は減点労働保険の申告書と領収済の通知
健康保険および厚生年金保険への加入未加入は減点保険料の納入告知額・領収済額通知書
建設業退職金共済制度への加入加点共済契約者であることの証明書
退職一時金制度または企業年金制度の導入加点退職金規程、中小企業退職金共済の契約書など
法定外の労働災害補償制度への加入加点保険証券、加入証明書
賃上げの実施加点の仕組みあり要件と対象期間は公表資料で確認

法令上の適用除外に当たる事業所の扱いや、賃上げの加点を受けるための計算方法は、年度によって細かい取扱いが変わります。自己判断せず、許可行政庁に確認してください。

若年者の育成と確保は人数の割合で見られる

社会性等には、若年の技術者と技能労働者の育成および確保の状況という項目があります。評価の軸は2つです。

  • 継続的な育成と確保:審査基準日時点で35歳未満の技術職員が、技術職員全体に占める割合が一定以上であること。
  • 新規の育成と確保:審査基準日以前1年間に新たに技術職員となった35歳未満の者が、技術職員全体に占める割合が一定以上であること。

割合の基準値は公表資料で確認してください。注意したいのは、ここで数えるのは「技術職員」であり、雇用期間の要件を満たさない人は分子にも分母にも入らない点です。新卒入社者を若年の技術職員として数えたい場合、入社日と決算日の間隔が6か月を超えているかどうかで結果が変わります。4月入社で9月末決算の会社は、その年には数えられない可能性が高くなります。

教育、資格、認定の取組も評価される

近年の改正で、人に投資した結果を評価する項目が増えています。いずれも、人事が制度として回していないと証拠が残りません。

  • 知識および技術または技能の向上に関する取組:技術者の継続教育(CPD)の単位取得の状況や、技能者の能力評価の区分が上がった状況が評価されます。受講記録と、CCUSの能力評価の判定結果を保管してください。
  • 建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するための措置:元請として請け負った工事で、CCUSの就業履歴を蓄積できる環境を整えたかどうかが評価されます。対象となる工事の範囲と割合の要件は公表資料で確認してください。
  • ワーク・ライフ・バランスに関する取組:女性活躍推進法、次世代育成支援対策推進法、若者雇用促進法に基づく各認定の取得が評価されます。認定の種類によって評価が異なります。
  • 建設業の経理の状況:公認会計士や税理士、登録経理試験の合格者の人数が評価の対象になります。経理担当者の資格取得も、人事の支援制度の対象に含めておくと点数につながります。

また、建設業法に基づく指示処分や営業停止処分を受けた場合は、法令遵守の状況として減点の対象になります。労務管理の不備が建設業法上の処分に至る場合もありますので、処分歴の管理は人事と法務で共有してください。

よくあるつまずき

  • 決算日の2か月前に1級資格者を採用し、今回の点数に乗ると考えてしまう。雇用期間の要件を満たさず、次回まで反映されません。
  • 監理技術者講習の期限切れに気づかず、高い区分で申請できない。期限は資格者ごとに異なるため、一覧での管理が必要です。
  • 退職者が審査基準日の直前に出て、若年者の割合が基準を下回る。割合は少人数の会社ほど1人の増減で変動します。
  • 建設業退職金共済の証明書を取り寄せる時期を逃し、申請に間に合わない。証明書の発行には日数がかかります。
  • 法定外の労働災害補償の契約が審査基準日より前に満了していた。契約期間と決算日の関係を毎年確認してください。
  • CCUSの能力評価の申請が審査基準日までに完了せず、レベルの上昇を証明できない。判定には期間がかかります。
  • 技術職員名簿の業種割り当てを前年の写しのまま提出し、資格者の増減が反映されていない。
  • 虚偽の内容で申請すると処分の対象になります。実態と異なる常勤扱いや、勤務実態のない名簿への記載は行わないでください。

社内の役割分担の例

時期やること主担当
決算日の8か月前技術職員の在籍見込みと資格の棚卸し人事
決算日の6か月前採用の前倒し判断、資格取得支援の案内人事と部門長
決算日の3か月前社会保険、退職金、法定外補償の確認人事と総務
決算日の1か月前CCUSの能力評価、各種認定の進捗確認人事
決算後事業年度終了の届出、経審の申請経理と総務

よくある質問

Q. 期の途中で入社した1級資格者は、今回の経営事項審査で技術職員として数えられますか。

審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係があることが前提になりますので、決算日の直前に入社した人は原則として数えられません。入社日と決算日の間隔を確認し、満たさない場合は翌期の反映として計画を立ててください。個別の判断に迷う場合は、申請先の許可行政庁に事前に確認することをおすすめします。

Q. 出向で受け入れている技術者や、グループ会社の社員は技術職員に含められますか。

恒常的な雇用関係と常勤性が確認できるかどうかが判断の分かれ目になります。在籍出向や兼務の形態では、賃金の負担関係や勤務の実態をもとに判断されるため、書類だけで決められません。なお、建設業務への労働者派遣は禁止されていますので、派遣労働者を技術職員として申請することはできません。具体的な取扱いは公表資料で確認し、許可行政庁に相談してください。

Q. 建設業退職金共済に加入していれば、退職一時金制度の項目でも加点されますか。

建設業退職金共済への加入と、退職一時金制度または企業年金制度の導入は、別の評価項目として設けられています。ただし、対象となる従業員の範囲や規程の内容によって、認められるかどうかが変わります。退職金規程の適用範囲を確認したうえで、許可行政庁の手引で要件を確認してください。

Q. 労働基準監督署から是正勧告を受けた場合、点数に影響しますか。

法令遵守の状況として直接の減点対象になるのは、建設業法に基づく指示処分や営業停止処分です。是正勧告そのものが直ちに減点につながるとは限りませんが、重大な違反は建設業法上の処分に発展する場合があります。処分歴の有無は申請書に記載する事項ですので、社内で記録を一元管理し、取扱いが不明な場合は許可行政庁に確認してください。

出典

  • 建設業法

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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