#データ・市況2026.09.23 公開読了 約8建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

有期と短時間の割合を労働力調査で読む手順

総務省「労働力調査」で、非正規・パート・短時間で働く人の割合をどう取り出し、自社の数字とどう比べるかを整理しました。調査上の区分と法令上の区分のずれ、建設業で見るときの制約、社内集計の作り方までを実務の順序でまとめています。

情報の基準日
2026.09.22
データ・市況

有期と短時間の割合を労働力調査で読む手順

人事ノート

人事の場で「うちは有期や短時間の比率が高いのか、低いのか」という問いが出ます。判断のよりどころとして、総務省「労働力調査」の雇用形態別の数字がよく使われます。ただし、この調査の区分は法令上の区分とそのまま一致しません。ここを踏まえずに自社の比率と並べると、比べているものが違う、という状態になります。

この記事では、数字の取り出し方と、自社データと突き合わせる手順を、実務の順序で整理します。具体的な数値は時点によって変わるため、本文では数値を挙げません。必ず総務省「労働力調査」の公表資料で、該当する時点の表を確認してください。

何のためにこの数字を見るのか

人事が有期・短時間の割合を確認する場面は、おおむね次の3つに整理できます。目的がぶれると、見るべき表も変わります。

目的知りたいこと外部統計の役割
雇用管理の点検有期・短時間の人にどんな待遇を適用しているか自社の構成が同業や全国と比べて偏っていないかの目安
無期転換の見通し労働契約法の無期転換ルールの対象がいつ何人出るか目安にはならない。自社の契約台帳が唯一の根拠
募集・要員設計有期や短時間の求人が市場でどの程度一般的か働き方の広がりを把握する参考

外部統計は「自社の位置を知る」ためのものです。個々の人の契約区分や、無期転換の対象判定には使えません。ここを最初に社内で共有しておくと、後の議論が早くなります。

労働力調査の構造を先に押さえる

労働力調査は、標本として選ばれた世帯に対する調査です。事業所への調査ではないため、「勤め先でどう呼ばれているか」を本人が答える形で区分されます。この点が、後述する定義のずれの原因になります。

押さえるべき構造は次の3つです。

  1. 基本集計と詳細集計がある。公表される項目の細かさが違います。雇用形態別の内訳や、その形態で働いている理由など、より細かい事項は詳細集計で扱われます。どの事項がどちらに載るかは、公表資料の表題と表番号で確認してください。
  2. 月次・四半期平均・年平均がある。細かい区分ほど、集計の周期が長い側でしか公表されません。
  3. 標本調査である。公表値には標本誤差があります。小さな差を動きとして読むべきではありません。

公表の時期や標本の規模、表の構成は改定されることがあります。集計を始める前に、その年の公表予定と表一覧を確認してください。

調査の区分と法令上の区分は一致しない

ここがこの記事でいちばん重要な部分です。労働力調査の区分は勤め先での呼称に基づくもので、契約期間の定めの有無や所定労働時間で機械的に切ったものではありません。

労働力調査で使われる区分何をもとに決まるか実務で起きるずれ
正規の職員・従業員勤め先での呼び名呼称が正社員でも、契約上は有期という人が含まれ得る
パート・アルバイト勤め先での呼び名法令上の短時間労働者は、通常の労働者との所定労働時間の比較で決まる。呼称とは別
契約社員・嘱託勤め先での呼び名有期かどうかは個別の契約内容で決まる
派遣社員派遣元に雇用されている人派遣先の企業にとっては自社の雇用者数に入らない
週間就業時間の階級調査週に実際に働いた時間所定労働時間ではない。休暇や残業で上下する

法令上の「短時間労働者」は、同じ事業主に雇われる通常の労働者と比べて1週間の所定労働時間が短い労働者を指します。呼称ではありません。同様に「有期雇用労働者」は、期間の定めのある労働契約を結んでいる人です。労働力調査の呼称区分をそのまま「有期の人数」と読み替えることはできません。

雇用契約期間に関する事項が集計されているかどうか、その区分の刻み方は年によって扱いが異なります。必要な場合は公表資料の表一覧で確認してください。

数字を取り出す手順

社内でそのまま使える形にしたものが次の手順です。担当は人事の集計担当者、所要はおおむね半日を見込みます。

  1. 目的と分母を先に決める。「役員を除く雇用者に占める割合」なのか、「就業者全体に占める割合」なのかで結果が変わります。雇用形態の比率は、通常は役員を除く雇用者を分母にします。
  2. 時点を決める。年平均か、四半期平均か、特定月か。前年と比べるなら、同じ種類どうしで比べます。
  3. 基本集計か詳細集計かを選ぶ。全体の正規・非正規の別だけなら基本集計、内訳や理由まで見るなら詳細集計を確認します。
  4. 産業で絞るかを決める。建設業だけを見る場合、区分が粗くなるか、公表されている表が限られることがあります。表が無ければ全産業の数字で代用し、その旨を資料に明記します。
  5. 割合は自分で計算する。公表されている実数から、分母と分子をそろえて計算します。公表されている比率をそのまま引く場合は、その比率の分母の定義を注記で確認します。
  6. 同じ手順で前年同期を取り、並べる。差が小さいときは「ほぼ横ばい」と書きます。
  7. 出典名、表の名称、集計の種類、取得日を記録する。半年後に同じ表を再現できる形で残します。

建設業で見るときの制約

建設業に絞って読むときは、次の点に注意してください。数字が出ないことを先に知っておくと、無駄な作業を避けられます。

  • 産業別と雇用形態別を掛け合わせた表は限られます。標本調査のため、細かく分けるほど精度が落ちます。公表されていない組み合わせは、無理に推計しないでください。
  • 自営業主や家族従業者の扱いで割合が変わります。建設業は他産業に比べてこの層の存在が議論になります。分母を就業者にするか、役員を除く雇用者にするかで数字が変わるので、必ず明記します。
  • 職業の違いが混ざります。施工管理などの技術者、技能者、事務が同じ「建設業」に入ります。職種別の傾向を知りたい場合、この統計だけでは分かりません。
  • 季節性があります。年度末に向けた繁忙など、月次の数字は季節の影響を受けます。年平均で見るのが無難です。
  • 過去の数値が改定されることがあります。推計の基礎となる人口の切替などにより、遡って改定される場合があります。資料の注記を確認してください。

自社の数字を比べられる形にする

外部の割合と並べるには、自社側の定義をそろえる必要があります。次の表を埋めるところから始めます。基準日は月末など固定の日にし、毎回同じ日で取ります。

区分社内での定義人数役員を除く雇用者に占める割合
期間の定めのない契約契約書上、期間の定めがない者
期間の定めのある契約契約書上、期間の定めがある者。更新回数を問わない
うち所定労働時間が短い者通常の労働者より1週間の所定労働時間が短い者
受入れ派遣社員派遣元に雇用されている者。自社の分母には入れない
役員分母から除く

作業の担当と期限は次のように決めておくと止まりません。

いつ誰が何を
基準日の翌週まで人事の労務担当契約書と雇用契約台帳から上表を作成
同月内人事の集計担当労働力調査から同じ分母の全国値を取得し併記
四半期ごと人事責任者差の要因を整理し、経営会議へ報告

注意したいのは、自社の集計は契約書が根拠だという点です。呼称ベースの労働力調査と完全には一致しません。並べるときは「定義が異なる」と注記を入れてください。

よくあるつまずき

  • 非正規イコール有期と読んでしまう。呼称が正社員でも有期の人はいます。逆に、パートと呼ばれていても無期の人はいます。無期転換の対象を数えるときに、この誤りは致命的になります。
  • 分母に役員や自営業主を入れる。全国値は役員を除く雇用者を分母にしていることが多く、分母がずれると自社の割合が実態より低く出ます。
  • 月次と年平均を混ぜて比較する。前年は年平均、今年は直近月、という比較をすると、季節の影響を傾向と誤読します。
  • 受入れ派遣社員を自社の雇用者に数える。派遣社員は派遣元の雇用者です。自社の雇用形態別構成に入れると二重に数えることになります。
  • 小さな差を変化として報告する。標本誤差があるため、わずかな差は「横ばい」と書くのが正確です。
  • 表番号を記録せずに資料を作る。翌年に同じ資料を更新するとき、どの表から取ったか分からなくなります。

数字をどう使うか

割合そのものは、良い悪いを決めるものではありません。有期や短時間の比率が高いこと自体が問題なのではなく、次の点が押さえられているかが実務の論点です。

  1. 有期契約の更新の判断基準と、更新上限の有無を書面で示しているか。
  2. 通常の労働者との間に待遇差がある場合、その理由を説明できる状態にあるか。
  3. 短時間で働く人の社会保険の適用について、最新の要件を確認しているか。要件は改正が続いているため、公表資料で確認してください。
  4. 無期転換の申込みが見込まれる人を、契約台帳から時系列で把握できているか。

個別の契約が有期か無期か、待遇差が不合理かどうかの判断は、事実関係によって結論が変わります。判断に迷う事案は、社会保険労務士や弁護士など専門家に相談してください。

よくある質問

Q. 労働力調査を見れば、自社の無期転換の対象人数の目安になりますか。

なりません。無期転換は、個々の労働者の通算契約期間で判定するものです。外部統計から自社の対象者を推計することはできません。雇用契約台帳を基に、契約開始日と更新履歴から一人ずつ積み上げてください。統計は、社内で説明するときの背景情報として使う位置づけです。

Q. 建設業だけの有期雇用の割合は公表されていますか。

産業別と雇用形態別を掛け合わせた表は、公表されている範囲が限られます。さらに「有期かどうか」は呼称区分とは別の事項です。必要な区分が公表されているかどうかは、総務省「労働力調査」の表一覧で該当年の公表資料を確認してください。見当たらない場合は、全産業の数字を使い、その旨を資料に明記するのが安全です。

Q. 自社のパート比率が全国の水準より低ければ、問題はないと考えてよいですか。

比率の高低だけで良し悪しは決まりません。低くても、有期契約の更新基準が示されていない、待遇差の理由を説明できない、といった状態であれば是正が必要です。逆に比率が高くても、契約と待遇の整理ができていれば問題にはなりにくいと考えられます。比率は入口の指標として使ってください。

Q. 前年より割合が0.1ポイント動いていました。傾向として報告すべきですか。

標本調査である以上、公表値には誤差が含まれます。わずかな差を傾向として報告すると、翌年に逆方向へ動いたときに説明がつかなくなります。数年分を並べて向きがそろっているかを確認し、そうでなければ「横ばい」と書いてください。誤差の考え方は公表資料の解説部分で確認してください。

Q. 月次と年平均のどちらを社内資料に使うべきですか。

年単位の方針を議論する資料であれば、年平均を使うのが扱いやすいです。季節の影響を受けにくく、前年との比較もそろえやすいためです。直近の動きを見たい場合に月次を併記するのは構いませんが、年平均と月次を同じ折れ線で混ぜないでください。

出典

  • 総務省「労働力調査」

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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