#データ・市況2026.11.02 公開読了 約8分建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

年次有給休暇の取得状況を統計で点検する手順

年次有給休暇の付与日数・取得日数・取得率を、就労条件総合調査の区分に合わせて自社で集計する手順をまとめました。年5日の時季指定義務の管理簿づくり、比較するときのつまずき、現場部門への説明の仕方まで、人事がそのまま使える形で整理します。

情報の基準日
2026.11.01
データ・市況

年次有給休暇の取得状況を統計で点検する手順

人事ノート

年次有給休暇の取得は、採用の場面でも定着の場面でも必ず話題になります。求人票に「年間休日」を書くだけでは、実際にどれだけ休めるのかは伝わりません。自社の取得率を数字で言えるようにしておくと、社内の説明も社外への説明も通りやすくなります。

この記事では、厚生労働省「就労条件総合調査」の区分に合わせて自社の数字を出し、比べ、課題を見つけるまでの手順を示します。統計の個別の数値は年によって変わりますので、本文では具体的な数値を挙げず、確認の手順だけを書きます。最新の数値は公表資料でご確認ください。

まず押さえる3つの数字

年次有給休暇の話は、言葉の定義を揃えないと噛み合いません。社内で集計を始める前に、次の3つを区別してください。

数字意味集計で起きやすい誤り
付与日数その年に新たに与えた日数前年からの繰越分を足してしまう
取得日数その年に実際に取得した日数繰越分からの消化を除いてしまう
取得率取得日数 ÷ 付与日数 × 100分母に繰越分を入れて率が低く出る

就労条件総合調査で用いられている取得率は、繰越分を除いた付与日数を分母にする考え方です。自社でも同じ考え方で計算しないと、比べたときに意味のない差が出ます。集計表の列名に「繰越を含まない」と明記しておくと、担当者が替わっても誤りが減ります。

あわせて、次の点も社内で共通認識にしておきます。

  • 分母に入れるのは、その年に付与された日数です。入社初年度で付与がまだ無い社員は、分母にも分子にも入れません。
  • 時間単位で取得した分をどう数えるかを決めます。日に換算するのか、別枠で集計するのかを先に決めておきます。
  • 退職者を含めるかどうかを決めます。含めると取得率は動きます。年度ごとに扱いを変えないことが大切です。

手順1 自社の数字を出す

年に1回、決まった時期に集計します。付与基準日が社員ごとに違う会社では、集計の切り口を先に決めてください。

  1. 集計の対象期間を決めます。暦年か年度か、どちらかに固定します。
  2. 対象者の範囲を決めます。正社員、有期契約、短時間労働者を分けて出せる形にします。
  3. 勤怠システムから、対象期間の付与日数と取得日数を社員ごとに書き出します。
  4. 繰越分を分母から外します。システムの出力に繰越が混ざっていないか、数名分を手計算で検算します。
  5. 全社の取得率を出します。続いて、部門別、職種別、年齢層別、雇用区分別に出します。
  6. 年5日の時季指定義務の対象者で、取得が5日に満たない人を抽出します。
  7. 前年、前々年の数字を並べます。単年の数字だけでは判断できません。

建設会社では、本社の事務部門と現場に配置される技術者で取得率が大きく違うことがあります。全社平均だけを見ていると、この差が見えません。少なくとも「本社」「現場」「営業」程度には分けて出してください。

手順2 就労条件総合調査の区分に合わせる

自社の数字が出たら、就労条件総合調査の公表値と並べます。並べるときは、調査の区分に自社を寄せる作業が要ります。

合わせるべき区分

区分自社側でやること
産業建設業の数値を見ます。全産業計とは分けて見ます
企業規模調査の規模区分のどこに自社が入るかを確認します
集計の対象調査の対象となる労働者の範囲を公表資料で確認し、自社の集計範囲を寄せます
年調査年と自社の集計期間がずれていないか確認します

就労条件総合調査は年によって調査事項や公表の区分が変わることがあります。比較に使う前に、その年の公表資料で区分の定義を確認してください。規模区分の境目は資料に明記されていますので、記憶で判断せず毎回確認する運用にします。

比べて意味があること、ないこと

  • 意味があること…建設業・同規模帯の取得率と自社の取得率を並べ、差の大きさと向きを見ること。
  • 意味があること…自社の部門間の差を見て、どこが全社平均を押し下げているかを特定すること。
  • 意味が薄いこと…全産業計の数値と自社を比べて一喜一憂すること。産業による働き方の差が大きく、改善の手がかりになりません。
  • 意味が薄いこと…単年の0.数ポイントの差を問題にすること。母集団が違いますので、小さな差は読みません。

手順3 年5日の時季指定義務を点検する

統計との比較とは別に、法令上の義務の履行状況を必ず点検します。年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者には、使用者が時季を指定するなどして年5日を取得させる必要があります。ここは統計の話ではなく、違反が問われる領域です。

点検の手順は次のとおりです。

  1. 対象者を洗い出します。付与日数が10日以上の人が対象です。短時間労働者でも、勤続年数に応じて10日以上付与される人は対象になります。
  2. 各人の付与基準日から1年の期間を確認します。基準日が人によって違う会社では、一覧表に基準日の列を作ります。
  3. 期間の残り6か月を切った時点で、取得日数が5日に満たない人を抽出します。
  4. 抽出された人の上長に、取得予定を出すよう依頼します。期日を決めて回収します。
  5. 予定が出ない人には、使用者から時季を指定します。本人の意見を聴いたうえで決めます。
  6. 年次有給休暇管理簿に、時季・日数・基準日を記録します。管理簿は一定期間の保存が求められます。保存期間は公表資料で確認してください。

現場配置の社員でつまずく点

建設業では、工期と要員配置の都合で取得が後ろ倒しになりがちです。次のような状態になっていないか確認します。

  • 期末の2か月に取得が集中している。形式上は5日を満たしていても、現場は混乱します。
  • 代わりの人がいないため、所長級だけ取得が極端に少ない。管理職も対象者です。
  • 出向や応援で他社の現場に出ている社員の取得状況を、人事が把握できていない。
  • 工事完了後の端境期に休ませる運用になっており、工事が連続した年は取得できない。

対策は、四半期ごとの中間点検です。年1回の点検では間に合いません。四半期ごとに「取得0日の人」「1日以下の人」を抽出し、所属長へ名簿で返す運用にします。

手順4 課題の在りかを言葉にする

数字を出しただけでは動きません。次の形で整理すると、経営会議に出せます。

見えた事実考えられる原因次に確かめること
全社の取得率が建設業の水準より低い現場部門の取得率が低い部門別に分解して、どの部門かを特定する
現場の取得率が低い代替要員がいない現場ごとの配置人数と工期の重なりを確認する
特定の年齢層だけ低い役職者に偏っている役職別に再集計する
取得が期末に集中している計画的な声かけが無い四半期ごとの取得状況の通知があるか確認する
雇用区分で差が大きい有期契約者への案内が不足入社時の説明資料に記載があるか確認する

原因の候補は複数立てて、データで絞り込みます。最初から「現場だから仕方がない」と結論を置かないことが大切です。

手順5 打ち手を決めて、翌年に検証する

打ち手は多く並べず、2つか3つに絞ります。建設会社で実行しやすいのは次のような内容です。

  • 計画的付与の仕組みを労使協定で導入する。夏季・年末年始に合わせて数日を計画的に割り当てます。導入には労使協定が必要です。要件は公表資料で確認してください。
  • 現場着工時に、工程表へ要員の休暇予定を書き込む運用にする。工程を立てる段階で休みを織り込みます。
  • 四半期ごとに取得状況を所属長へ返す。名簿形式で、取得0日の人を明示します。
  • 時間単位の年次有給休暇を導入する。導入には労使協定が必要です。通院や学校行事での利用が見込めます。

打ち手を決めたら、翌年の同じ時期に同じ方法で集計します。集計方法を変えると効果が測れません。集計の定義書を1枚作り、担当者が替わっても同じ手順で出せるようにしておきます。

採用の場面での使い方

取得率は、求人票や会社説明で使えます。ただし、使い方を誤ると後で食い違いが起きます。

  • 全社平均だけを出さず、募集する職種の数字を出します。現場技術者の募集で本社事務の数字を見せると、入社後に不信を招きます。
  • 「取得率◯◯パーセント」とだけ書かず、どの範囲・どの期間の数字かを添えます。
  • 数字が低い場合に、無理に良く見せないでください。低い理由と、いま進めている取り組みを添えて説明するほうが、定着には有利に働きます。
  • 比較の文脈で統計を引くときは、調査名と調査年を明示します。年を書かずに「平均より高い」と書くのは避けます。

よくあるつまずき

  1. 繰越分を分母に入れて集計し、実態より低い取得率を公表会議に出してしまう。
  2. 退職者を年によって含めたり含めなかったりして、前年比が動いた理由が分からなくなる。
  3. 時間単位の取得を集計から落とし、実際より取得が少なく見える。
  4. 全産業計と比べて「平均並み」と判断し、建設業の中では低いことに気づかない。
  5. 年5日の点検を年度末にだけ行い、取得させる時間が残っていない。
  6. 管理職を対象者から外して考えてしまう。付与日数が10日以上であれば対象です。
  7. 出向者・応援者の取得状況を、受入先任せにして把握していない。

年間の作業カレンダー

時期作業担当
期首集計の定義書を確認し、対象期間と対象者を確定する人事
四半期ごと取得0日・1日以下の人を抽出し、所属長へ通知する人事
期中(残り6か月時点)年5日に満たない人へ取得予定の提出を依頼する人事・所属長
期中(残り3か月時点)予定が出ない人に時季指定を行う使用者
期末付与日数・取得日数・取得率を集計する人事
公表資料の公表後就労条件総合調査と並べ、差を整理する人事
翌期首打ち手を2〜3件決め、経営会議に諮る人事・経営

この表をそのまま社内の年間計画に貼り付けて使えます。担当者名まで入れておくと、引き継ぎで抜けません。

よくある質問

Q. 自社の取得率が建設業の平均を下回っていたら、すぐ問題になりますか。

統計の平均を下回ったこと自体が法令違反になるわけではありません。確認すべきは、年10日以上付与されている人が年5日を取得できているかどうかです。平均との差は、採用や定着の観点から改善を検討する材料として扱ってください。

Q. 年5日の対象者に、管理監督者や短時間労働者は含まれますか。

付与される年次有給休暇が年10日以上であれば対象です。管理監督者も除かれません。短時間労働者も、比例付与の結果として10日以上になる人は対象になります。自社の付与日数表で10日以上になる区分を洗い出し、具体的な取り扱いに迷う場合は公表資料で確認するか、社会保険労務士などの専門家に相談してください。

Q. 就労条件総合調査の数値は、毎年同じ条件で比べられますか。

調査年によって調査事項や公表の区分が変わることがあります。複数年を並べる前に、各年の公表資料で集計対象と区分の定義を確認してください。定義が変わっている年をまたいで折れ線にすると、実態と違う変化に見えることがあります。

Q. 繰越分から消化した日数は、取得日数に入れてよいのですか。

取得率を出すときは、分母から繰越分を除き、分子である取得日数には実際に取得した日数を入れる考え方が一般的です。この扱いにすると取得率が100を超える人が出ることがありますが、集計上はそのまま扱い、全社の合計で計算します。社内で混乱しやすい点ですので、定義書に明記しておくことをおすすめします。

Q. 工期が重なって現場から休ませられないと言われます。どう進めればよいですか。

着工時の工程を立てる段階で休暇を織り込む運用に変えるのが現実的です。工事が始まってから調整しようとすると、ほぼ動きません。あわせて、四半期ごとに取得0日の人を所属長へ名簿で返し、残り期間で取得できる日数を具体的に示してください。

出典

  • 厚生労働省「就労条件総合調査」

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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