#採用2026.09.19 公開読了 約7建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

若者雇用促進法で求められる職場情報の提供

新卒者等を対象に募集を行う会社は、応募者などから求めがあったとき、募集・採用の状況、職業能力の開発、職場への定着に関する情報を提供する必要があります。建設業の実務に合わせて、集計の作り方、求めへの回答手順、年間スケジュールを整理しました。

施行日
2016.03.01
情報の基準日
2026.09.18
採用

若者雇用促進法で求められる職場情報の提供

人事ノート

建設業では、施工管理や設計の新卒採用で「離職率はどれくらいですか」「残業は月何時間ですか」と正面から聞かれる場面が増えています。こうした問い合わせは、青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)にもとづく情報提供の求めに当たることがあります。求めがあれば、会社は定められた区分に沿って情報を提供する必要があります。

この記事は、法律と指針に書かれている範囲を、採用実務の順序に並べ替えたものです。条文の番号や細かい定義は、法令本文と厚生労働省の公表資料で必ず確認してください。

法律が求人の場面で求めていること

若者雇用促進法は、新卒者等を対象に求人の申込みや募集を行う事業主に対し、青少年雇用情報の提供を求めています。実務では、次の二段構えで理解すると整理しやすくなります。

  1. 幅広い情報提供(努力義務):求人票、自社サイト、会社説明会の資料などで、後述する3類型の情報をできる限り広く示します。
  2. 求めがあった場合の提供(義務):応募しようとする者や応募者、学校、職業紹介機関などから求めがあったときは、3類型のそれぞれについて1つ以上の情報を提供します。

つまり、全項目を常に開示する義務ではありません。ただし「求められたら、3つの区分すべてに答える」ことが必要です。1区分だけ答えて終わりにすると、義務を満たさないおそれがあります。

あわせて、募集条件の的確な表示も求められています。いわゆる固定残業代を採用している場合に、基本給と手当の内訳、固定残業代に含まれる時間数を示すことなどは、指針で示されている内容です。建設業では手当の種類が多く、ここで食い違いが起きやすい点に注意してください。

提供する情報の3類型と社内の集計元

提供すべき情報は、次の3つの類型に整理されています。各類型に含まれる具体的な項目と、建設会社で数値を作るときの集計元を並べます。

類型主な項目社内の集計元集計の担当
募集・採用に関する状況過去3年間の新卒者等の採用者数と離職者数、その男女別人数、平均継続勤務年数(参考として平均年齢)人事台帳、入退社の記録、社会保険の資格取得・喪失日人事
職業能力の開発・向上に関する状況研修の有無と内容、自己啓発支援の有無と内容、メンター制度の有無、キャリアコンサルティング制度の有無と内容、社内検定等の制度の有無と内容教育訓練の年間計画、資格取得支援規程、新入社員の指導担当の割当表教育担当・人事
職場への定着の促進に関する状況前年度の月平均所定外労働時間、前年度の有給休暇の平均取得日数、前年度の育児休業取得者数(男女別)、役員に占める女性の割合と管理的地位にある者に占める女性の割合勤怠システム、有給管理簿、休業の申出書、役員名簿・等級表労務・総務

項目名の正式な表記や、どの範囲を「新卒者等」に含めるかは、法令と公表資料で確認してください。特に卒業後一定期間内の既卒者を含めるかどうかは、自社の求人設計と関係します。

求めがあったときの対応手順

求めは、応募者本人からだけでなく、学校や職業紹介機関を通じて届くこともあります。窓口を決めずにいると、現場見学の担当者や支店で口頭のまま処理され、記録が残りません。次の手順を社内で決めておきます。

  1. 窓口を一本化する:採用担当の代表メールアドレスを窓口にし、支店や現場に問い合わせが来た場合の転送先を周知します。
  2. 求めの内容を記録する:求めた人、求めた日、求めの方法、求められた項目を記録します。
  3. 回答内容を作る:あらかじめ用意した情報一覧から、3類型それぞれの項目を選んで回答します。求められた項目が特定されている場合は、その項目に沿って答えます。
  4. 書面または電子メールで送る:口頭だけで済ませず、送った内容が後から確認できる形にします。
  5. 選考日程に間に合うよう速やかに返す:回答までの日数は法律で具体的に定められていません。選考が進む前に届かなければ意味がないため、社内の目安日数を決めておきます。
  6. 記録を保管する:求めと回答の記録を採用年度ごとにまとめ、次年度の求人票作成に使います。

求めを行ったことを理由に、応募者を不利に扱ってはならない点も押さえてください。「残業時間を聞いてきた学生」という情報を選考の評価に持ち込まない運用が必要です。評価シートに問い合わせ内容を書かない、という程度の具体性まで決めておくと安全です。

建設業で数値を作るときの注意点

数値は、作り方を決めないと年度ごとにぶれます。ぶれた数値を出すと、翌年の採用で説明がつかなくなります。

  • 月平均所定外労働時間:前年度の実績を対象とします。現場勤務者の自己申告と勤怠システムの記録が一致していない会社は、まずそこを合わせる必要があります。労働時間の把握は別の法令上の義務でもあり、情報提供のためだけの集計にしないでください。
  • 有給休暇の平均取得日数:年5日の取得義務への対応で使っている有給管理簿がそのまま使えます。時間単位で取得できる制度がある場合は、日数への換算方法を決めておきます。
  • 新卒者等の離職者数:退職届を受け取った日ではなく、退職日がどの事業年度に属するかで数えます。現場異動と重なる3月末退職の扱いを毎年同じにしてください。
  • 平均継続勤務年数:算定の基準日を毎年同じ日に固定します。出向者や転籍者の扱いも決めておきます。
  • 育児休業取得者数:男女別に数えます。取得者が少ない年は数が目立ちますが、制度の説明とあわせて示すと趣旨が伝わります。

年間スケジュールと役割分担

求めが来てから集計を始めると間に合いません。年度の初めに数値を固める運用にします。

時期やること担当
4月〜5月前年度の所定外労働時間、有給取得日数、育児休業取得者数を確定労務
5月〜6月直近3事業年度の新卒者等の採用者数・離職者数、平均継続勤務年数を更新人事
6月研修・資格取得支援・指導担当制度の内容を最新の規程に合わせて書き直す教育担当
求人公開前求人票、自社サイト、会社説明会資料に反映。固定残業代の内訳表示を点検採用担当
選考期間中求めへの回答と記録。回答文の定型を更新採用担当
役員・組織の変更時役員および管理的地位にある者の女性割合を更新総務

よくあるつまずき

  • 求人票と説明会資料で数値が違う:更新の担当が分かれていると起きます。数値の一覧を1つのファイルにまとめ、そこから転記する形にします。
  • 3類型のうち1つしか答えていない:残業時間だけ聞かれた場合でも、求めに応じる際は3類型それぞれについて示す必要があります。定型の回答文を作っておくと漏れません。
  • 支店や現場で口頭回答している:現場見学の場で質問が出たとき、担当者が記憶で答えてしまう例があります。「数値は採用担当から書面で回答する」と決めておきます。
  • 応募前の学生からの求めを断ってしまう:応募しようとする段階の求めも対象になり得ます。応募していないことを理由に一律で断る運用は見直してください。
  • 固定残業代の内訳が示されていない:建設業では現場手当や役職手当が多く、どこまでが割増賃金の対価かが曖昧になりがちです。賃金規程の整理とあわせて点検します。

関連する仕組み

若者雇用促進法には、若者の採用・育成に積極的で雇用管理の状況が優良な中小企業を国が認定する仕組み(ユースエール認定)も置かれています。認定の要件には離職率や所定外労働時間などの基準がありますが、具体的な数値基準は改正されることがあるため、申請を検討する場合は最新の公表資料で確認してください。認定を受けると認定マークを求人や自社の資料に使えるため、知名度で不利になりやすい地場の建設会社にとっては検討の価値があります。

また、一定の労働関係法令違反があった事業主の求人を、公共職業安定所などが受け付けない仕組みも設けられています。対象となる違反の範囲は法令で定められているため、詳細は公表資料で確認してください。労働時間や割増賃金に関する是正勧告を受けた会社は、採用への影響という観点からも改善を急ぐ必要があります。

個別の事案で義務の対象になるかどうか迷う場合は、都道府県労働局や社会保険労務士などの専門家に相談してください。

よくある質問

Q. 中途採用だけを行う会社でも職場情報の提供は必要ですか

情報提供の求めに応じる義務は、新卒者等を対象とする求人の申込みや募集を行う場合を前提とした仕組みです。中途採用のみであれば直接の対象にならない場合がありますが、卒業後一定期間内の既卒者を対象に含める求人では扱いが変わり得ます。自社の求人がどちらに当たるかは、法令本文と公表資料で確認してください。

Q. 求めがあった項目をまだ集計していない場合はどう答えればよいですか

求めに応じる際は、3類型のそれぞれについて1つ以上の情報を示す必要があります。特定の項目が集計できていないときは、同じ類型の別の項目で答えることが現実的です。ただし集計していない状態を毎年繰り返すのは望ましくないため、年度初めに数値を確定させる運用に切り替えてください。

Q. 回答は何日以内に返す必要がありますか

回答までの具体的な日数は法律で定められていません。ただし選考が進んでから届いても求めた側の判断材料になりません。社内では、求めを受けた日から数営業日以内という目安を決め、窓口と回答文の定型をあらかじめ用意しておくことをおすすめします。

Q. 数値の見栄えが悪い場合、提供を断ることはできますか

求めがあった場合の提供は義務であり、数値が悪いことを理由に断る前提の運用はできません。数値だけを単独で出すのではなく、勤怠の把握方法、週休の設計、教育や資格取得支援の内容を合わせて説明するほうが伝わります。改善の計画とあわせて示す形を、採用担当と労務担当で先に決めておいてください。

Q. 現場常駐の社員の所定外労働時間は、常駐先の基準で数えるのですか

提供するのは自社の雇用管理の状況であり、自社の労働時間管理にもとづく実績を用います。常駐先の就業時間に合わせて働いている場合も、自社の勤怠記録で把握した時間を集計してください。把握の方法そのものに不安がある場合は、労働時間の適正な把握に関する公表資料を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。

出典

  • 青少年の雇用の促進等に関する法律

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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