労働力調査で建設業の年齢構成を読む手順
人事ノートこの記事で扱うこと
採用計画の資料に「建設業は高齢化している」と一行だけ書いてあることがあります。経営会議で根拠を問われると、答えに詰まる担当者は少なくありません。
国が公表している統計のうち、産業ごとの働く人の年齢構成をつかむ入口になるのが総務省の労働力調査です。この記事では、労働力調査で建設業の年齢構成を確認し、自社の要員計画に落とし込むまでの手順を、人事が動く順番に並べます。
本文には具体的な数値を載せていません。数値は改定や遡及があるため、必ず最新の公表資料でご自身が確認した値を使ってください。ここで示すのは、どの表のどの区分を見て、何に注意すればよいかという読み方の手順です。
労働力調査は何を測っている調査か
労働力調査は、総務省が全国から抽出した世帯を対象に毎月実施している標本調査です。事業所に対して行う調査ではなく、世帯の側に「調査の対象となる期間にどのような就業状態だったか」を尋ねる形をとっています。ここを取り違えると、後の解釈がすべてずれます。
人事が押さえておきたい用語は次のとおりです。
| 用語 | 意味 | 建設業を見るときの注意 |
|---|---|---|
| 15歳以上人口 | 調査の母集団となる人口 | 学生や退職者も含む |
| 労働力人口 | 就業者と完全失業者の合計 | 求職していない人は含まれない |
| 就業者 | 収入を伴う仕事をした人 | 自営業主や家族従業者を含む |
| 雇用者 | 就業者のうち雇われている人 | 会社の従業員数と比べるならこちら |
| 自営業主・家族従業者 | 自ら事業を営む人とその家族従業者 | いわゆる一人親方が含まれ得る |
| 完全失業者 | 仕事がなく、探していて、すぐ就ける人 | 求職していない層は入らない |
建設業は他の産業と比べて自営業主の存在感がある分野です。就業者ベースで年齢構成を見るのと、雇用者ベースで見るのとでは、絵が変わることがあります。自社の従業員構成と比較するなら雇用者ベース、業界全体の担い手を語るなら就業者ベース、という使い分けが基本になります。
産業別で見るか、職業別で見るか
労働力調査には、産業で分けた集計と、職業で分けた集計があります。この二つは似て非なるものです。
| 区分 | 含まれる人 | 含まれない人 |
|---|---|---|
| 産業「建設業」 | 建設会社に勤める現場技術者、技能者、事務、営業、経理など勤め先が建設業の人すべて | 他産業の企業に所属して建設の仕事をしている人 |
| 職業「建設や採掘に従事する人」 | 産業を問わず、建設や採掘の作業に従事している人 | 建設会社の事務や営業などの職種 |
「現場の担い手が高齢化しているか」を語りたいのに産業別だけを見ていると、間接部門を含んだ平均で議論することになります。逆に、自社の総人員計画を考えるなら産業別のほうが対応がよいこともあります。何を主張したい資料なのかを先に決めてから、どちらの区分を使うかを選んでください。
数値を取り出す手順
- 目的を一行で書く。「技能者の採用枠を来期何名にするかの根拠にする」など、使い道を先に決めます。
- 産業別か職業別かを選ぶ。前章の表で判断します。
- 就業者ベースか雇用者ベースかを選ぶ。自社比較なら雇用者ベースが揃えやすい方法です。
- 月次ではなく年平均の結果を使う。月次は標本誤差と季節的な動きの影響を受けます。年間の構成比を語るなら年平均が無難です。
- 年齢階級のとり方を確認する。表によって5歳刻みのものと、より粗い刻みのものがあります。上限の階級を「65歳以上」で切っているのか、さらに細かく分けているのかで、高齢層の見え方が変わります。
- 実数と構成比の両方を控える。構成比だけだと、母数そのものが減っていることを見落とします。
- 出典として、調査名、集計の種類、対象年、表の名称または番号を資料の脚注に書く。後から誰でも同じ数字にたどり着けるようにします。
産業別と年齢階級を掛け合わせた表がどの集計に載るかは、集計の種類によって異なります。目当てのクロス集計が見つからないときは、公表資料の表一覧で確認してください。
自社の年齢構成と突き合わせる
業界の数字だけを眺めても、打ち手は出てきません。自社の構成と並べたときに初めて、どこが薄いかが見えます。
手順は次のとおりです。
- 人事データから、在籍者を5歳刻みで人数集計する。基準日を決め、以後は毎年同じ基準日で作ります。
- 職種の区分を決める。施工管理、技能、設計、営業、管理部門など、自社の実態に合う区分にします。
- 雇用形態を分けて数える。正社員、有期契約、嘱託再雇用を混ぜたままにしないでください。
- 各階級の構成比を出し、労働力調査の同じ階級の構成比と並べる。
- 差が大きい階級について、原因の仮説を書く。採用が止まっていた時期、離職が集中した層、事業の拡大時期などです。
- 5年後と10年後の姿を機械的に置く。全員がそのまま年を重ねると、どの階級が空くのかを見ます。
比較シートの型は次のようにしておくと、毎年同じ形で更新できます。
| 年齢階級 | 自社人数 | 自社構成比 | 業界構成比 | 差 | 5年後に残る想定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 15〜24歳 | |||||
| 25〜34歳 | |||||
| 35〜44歳 | |||||
| 45〜54歳 | |||||
| 55〜64歳 | |||||
| 65歳以上 |
業界の構成比より自社の高齢層が厚いなら、技能や資格の引き継ぎに使える期間が短いということです。若年層が薄いなら、採用単価を上げるか、未経験の受け入れ体制を先に作るかの判断が要ります。数字は、判断の材料であって結論ではありません。
読み違えやすいところ
| つまずき | 何が起きるか | 対処 |
|---|---|---|
| 月次の細かい区分で増減を語る | 標本誤差の範囲の動きを傾向として報告してしまう | 年平均を使い、公表資料の誤差に関する注意書きを読む |
| 構成比だけを見る | 母数が減っているのに「若手比率が改善」と読んでしまう | 実数を必ず併記する |
| 産業分類の改定をまたいで比較する | 時系列が不連続になる | 遡及して組み替えられているかを公表資料で確認する |
| 就業者と雇用者を混ぜる | 自社の従業員構成と比較できない | どちらのベースかを表の見出しに明記する |
| 地域別に細かく分けて語る | 推計方法や精度の制約を超えた読み方になる | 地域別の結果に付された注意書きを確認し、無い場合は全国値にとどめる |
| 出向者や派遣で働く人の扱いを確かめない | 分類の前提が資料ごとにずれる | 産業の分類方法を公表資料で確認する |
もう一つ、社内でよく起きるのが「業界平均に合わせること」を目的にしてしまう誤りです。業界平均は、施工する工種も規模も違う会社をならした値です。自社が目指すべき構成は、受注する工事の種類と、技術者の配置要件から逆算して決めるものです。統計は現在地を確かめる道具として使ってください。
年間の使い方を決めておく
一度作って終わりにすると、翌年には誰も同じ数字を再現できなくなります。次のように担当と時期を決めてしまうのが確実です。
| 時期 | やること | 担当 |
|---|---|---|
| 年平均の結果が公表された後 | 業界の年齢構成の最新値を取り直し、比較シートを更新する | 人事の企画担当 |
| 更新の翌月 | 5年後、10年後の自社人員の推移を再計算する | 人事と各事業部 |
| 採用計画の策定時 | 薄い年齢階級を採用ターゲットに反映し、採用手法と予算を割り当てる | 採用担当 |
| 期末 | 実績と計画の差を確認し、翌期の前提を修正する | 人事責任者 |
年平均の結果は年が明けてから公表されるのが通例ですが、正確な公表予定日は公表スケジュールで確認してください。公表日を待たずに資料を作る必要があるときは、前年の年平均を使い、「いつ時点の値か」を明記します。
社内資料に書くときの注意書き
経営会議や取締役会に出す資料では、次の四点を数字のそばに置いてください。後から質問が出たときに、担当者が守られます。
- 調査名と、対象年、集計の種類
- 就業者ベースか雇用者ベースか
- 産業で分けた値か、職業で分けた値か
- 標本調査であり、細かい区分では誤差が大きくなること
建設業は、他産業と比べて高齢層の割合が高いと指摘されることが多い分野です。ただし、その水準がどの程度なのか、直近で改善しているのかは、年ごとに確認しないと分かりません。印象で書かず、確認した値と、確認した日付を残す習慣をつけてください。
まとめ
労働力調査は、建設業で働く人の年齢構成を全国規模でつかむための入口です。使いこなす鍵は、難しい分析ではなく、区分の選び方と注意書きの読み方にあります。
- 世帯を対象とした標本調査であることを前提に読む
- 産業別と職業別、就業者と雇用者を混ぜない
- 年平均を使い、実数と構成比を併記する
- 自社の5歳刻みの構成と並べ、5年後と10年後を置いてみる
- 出典と基準日を資料に残し、毎年同じ手順で更新する
個別の要員計画や、定年後の再雇用を含む人員設計については、労務の専門家に相談しながら進めてください。統計はあくまで現在地の確認に使う道具です。
出典
- 総務省「労働力調査」
本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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