#制度・助成金2026.08.12 公開2026.09.08 更新読了 約8建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

両立支援等助成金 建設業での使いどころと手順

両立支援等助成金は、育児や介護と仕事の両立ができる体制を整えた中小企業に支給される助成金です。コースの全体像、受給の前提になる社内整備、申請までの順序、建設業でつまずきやすい点を、人事の実務の流れに並べて整理します。金額や要件は年度で変わるため、確認の手順もあわせて示します。

情報の基準日
2026.09.08
制度・助成金

両立支援等助成金 建設業での使いどころと手順

人事ノート

両立支援等助成金は何のための制度か

両立支援等助成金は、育児や介護と仕事の両立ができる職場環境を整えた事業主に対して支給される助成金です。厚生労働省が所管し、窓口は都道府県労働局(雇用環境・均等部または均等室)になります。多くのコースが中小企業事業主を対象としています。

建設業では、育児休業や介護休業が「取りにくい」と言われがちです。理由は制度の有無だけではありません。現場に人が張り付く仕事のため、一人が抜けると工程と配置に直接影響が出ます。両立支援等助成金は、まさにこの「抜けた穴を埋める体制づくり」や「休業前後の段取り」に費用と手間がかかる点に着目した助成金です。したがって、人事としては「休ませる制度をつくる話」ではなく「休業中の業務をどう回すかを決める話」として社内に説明したほうが通ります。

なお、コースの構成、支給額、支給人数の上限、加算の有無は年度ごとに見直されます。この記事ではコースの考え方と実務の順序を整理します。金額と細かな要件は、必ず当年度の支給要領とパンフレットで確認してください。

コースの全体像をつかむ

両立支援等助成金は複数のコースに分かれています。名称や区分は年度によって変わりますが、「何に着目して支給されるか」という軸で理解しておくと、自社に合うコースを探しやすくなります。

コース(近年設けられている区分)着目している取組建設業での使いどころ
出生時両立支援コース男性労働者の育児休業取得施工管理・設計・技術職の男性が短期でも育休を取得した実績を作る
育児休業等支援コース育休の円滑な取得と職場復帰の支援(面談・計画作成など)休業前の引継ぎと復帰後の配置を、計画として文書に残す
育休中等業務代替支援コース休業者・短時間勤務者の業務を代替する体制(手当支給、新規雇用など)現場の応援人員や代替要員の確保、周囲への手当支給を制度化する
介護離職防止支援コース介護休業・介護両立支援制度の利用と、両立支援制度の周知40代・50代の技術者の介護離職を防ぐ
柔軟な働き方選択制度等支援コース始業時刻の変更、短時間勤務、テレワーク、保育に関する費用補助などの制度導入と利用内勤・設計・積算部門から着手し、現場部門へ広げる
不妊治療や女性の健康課題に対応するコース治療や健康課題と仕事の両立のための休暇・制度の導入と利用通院に使える休暇制度を就業規則に位置づける

コースは新設・廃止・統合があります。上の表は「どういう切り口があるか」の見取り図として使い、実際に申請するコース名と要件は当年度の公表資料で確認してください。

受給の前提になる社内整備

どのコースを選ぶ場合でも、共通して問われる土台があります。ここが崩れていると、対象者が出ても申請できません。先に整えておく項目です。

整備項目内容用意する書類の例
雇用保険の適用雇用保険適用事業所であること。対象者が被保険者であること適用事業所の確認資料、被保険者に関する資料
労働保険料未納がないこと納付を確認できる資料
就業規則・労使協定育児休業、介護休業、短時間勤務などの規定が法令に沿って整備され、届出済みであること就業規則本体と届出の控え、労使協定
一般事業主行動計画次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の策定・届出・公表・従業員への周知(多くのコースで要件)行動計画、届出の控え、公表と周知の記録
労務管理書類対象者の勤務実態と賃金を確認できる書類労働者名簿、賃金台帳、出勤簿・タイムカード
不支給要件労働関係法令の重大な違反、過去の不正受給などに当たらないこと

中小企業事業主の範囲は、資本金の額等と常時雇用する労働者数で判断します。建設業は製造業などと同じ区分に置かれることが一般的ですが、助成金ごとに定義が定められているため、当年度の資料で自社が該当するかを確認してください。

就業規則の点検が実質的な第一関門

建設業では、就業規則が数年前のまま更新されていない会社が少なくありません。育児・介護休業に関する規定は法改正が続いており、旧い規定のままだと「法定の内容を満たしていない」と判断される可能性があります。助成金の申請前に、育児・介護休業等に関する規定を単独の規程として整備し、届出まで済ませておくことをおすすめします。

申請までの手順

コースによって細部は違いますが、実務の順序はおおむね共通です。「取組を始める前に整えておくべきもの」があるため、順序を守ることが受給の分かれ目になります。

  1. 当年度の支給要領とパンフレットで、コースの種類と要件を確認します(人事担当、期初)。
  2. 自社が中小企業事業主に該当するかを確認します(人事担当)。
  3. 就業規則・育児介護休業規程を点検し、必要な改定と届出を行います(人事担当、社内決裁を経て)。
  4. 一般事業主行動計画を策定し、届出・公表・従業員への周知を行います(人事担当)。
  5. 対象になりそうな従業員を把握します。配偶者の出産予定、家族の介護の状況などは、本人の申し出を待つだけでは把握できません。年1回の面談や現場巡回の際に確認する仕組みを作ります(人事担当と所属長)。
  6. コースが求める計画や面談を、休業や制度利用の前に実施します。育休の取得支援や介護の両立支援では、休業前の面談と計画作成が要件になることがあります。順序を逆にすると対象外になります(人事担当と所属長)。
  7. 休業や制度利用の期間中、代替体制を実行します。誰がどの業務を引き継いだか、手当を支給したか、新規に雇用したかを記録します(所属長、人事担当)。
  8. 復帰後の就労や制度の利用実績が要件に達した段階で、期限内に支給申請を行います(人事担当)。

申請期限は、要件を満たした後の限られた期間内に設定されています。期間はコースごとに異なるため、対象者が出た時点で「いつからいつまでが申請期間か」を支給要領で確認し、社内の予定表に書き込んでください。期限切れは、要件を満たしていても支給されない最も多い失敗です。

建設業でつまずきやすい点

現場の専任配置と休業が重なる

監理技術者や主任技術者を専任で配置している現場では、その技術者が長期に離れる場合、配置の見直しが必要になります。助成金の要件とは別に、建設業法上の配置のルールを満たす必要があります。育休の申し出を受けたら、人事だけで判断せず、技術管理の担当部署と同時に検討してください。工事の受注時期から逆算し、専任が必要な現場への配置を調整しておくと、休業の取得と配置の両立がしやすくなります。

代替要員の「応援」が記録に残らない

業務代替の取組は、実施した事実を書類で示す必要があります。建設業では、他の現場から数日単位で応援に入る運用が日常的に行われていますが、これが記録に残っていないことが多いです。代替の内容、期間、対象業務、支給した手当を、業務分担表や賃金台帳で追えるようにしておいてください。口頭で回した分は証明できません。

手当を出したのに規程に書いていない

休業者の業務を引き継いだ従業員に手当を支給する場合、その手当の根拠を就業規則または賃金規程に定めておく必要があります。臨時の一時金として現場判断で支給すると、制度として整備されたと認められない可能性があります。手当の名称、対象、金額の決め方、支給時期を先に規程化してください。

雇用保険被保険者かどうかの整理ができていない

建設業では、正社員、有期契約、短時間、日雇、一人親方への外注が混在します。助成金の対象になるのは、原則として雇用保険の被保険者です。対象者が被保険者かどうか、加入手続が漏れていないかを先に確認してください。請負として扱ってきた人が実態として労働者であれば、そもそも社会保険と雇用保険の適用の問題になります。

制度はあるが現場で使われない

規程を整備しても、現場の所属長が「今は無理だ」と言えば申し出は出てきません。制度の周知は、就業規則の備え付けだけでは足りません。朝礼や安全大会、現場事務所への掲示、給与明細への同封など、現場で目に入る形で複数回伝えてください。周知の記録は、助成金の要件確認でも役立ちます。

社内の役割分担と年間の組み立て

助成金は「対象者が出てから慌てて調べる」形では間に合いません。年度の初めに一度、次のように整理しておくと動きやすくなります。

時期やること担当
年度初め当年度の支給要領を確認し、自社が使えるコースを2つ以内に絞る人事担当
年度初め就業規則・育児介護休業規程の点検と改定、行動計画の届出・公表状況の確認人事担当と経営層
四半期ごと対象になりそうな従業員の状況を所属長から聞き取る人事担当と所属長
申し出が出た時点面談、計画作成、代替体制の設計、配置の調整人事担当、所属長、技術管理担当
休業・利用期間中代替の記録、手当の支給記録の保存所属長
要件充足後期限を確認して申請、控えの保存人事担当

助成金の受給額は、代替要員の人件費や手当の総額を上回るとは限りません。助成金があるから制度をつくるという順番にすると、要件が変わった年に社内の取組が止まります。制度は自社の定着策として決め、助成金は費用の一部を補うものとして位置づけるほうが、社内の説明も安定します。

法律上の義務と助成金の対象を分けて考える

育児・介護休業法では、育児休業や介護休業のほか、事業主が講ずべき措置が定められており、改正も続いています。法律で義務づけられている内容は、助成金の有無に関係なく対応が必要です。一方で、助成金は法定を上回る取組や、実際に利用された実績に着目して支給されるものが多く、義務の履行だけでは対象にならない場合があります。

実務では、次の順序で整理してください。

  1. 法律上の義務を満たしているかを点検する(未対応があれば最優先で対応)。
  2. 自社の課題(技術者の離職、女性技術者の定着など)に対して必要な取組を決める。
  3. その取組に使えるコースがあるかを支給要領で確認する。

この順序を逆にすると、助成金の要件に合わせた形式的な制度ができ、使われないまま残ります。

確認と相談の進め方

個別の事案について対象になるかどうかは、労働局の判断によります。次の形で確認しておくと、社内決裁も通しやすくなります。

  • 当年度の支給要領とパンフレットを入手し、該当コースの要件部分を印刷して社内で共有します。
  • 判断に迷う点は、対象者が出る前に都道府県労働局に照会します。照会した日、担当部署、回答内容を記録に残します。
  • 就業規則の改定や労使協定が必要な場合は、社会保険労務士などの専門家に相談します。
  • 支給申請の控え、面談記録、業務分担表、賃金台帳は、後の確認に備えて保存します。

助成金の要件は年度で変わります。前年度の資料や社内の古いメモを根拠に進めないでください。判断の根拠は、必ず当年度の公表資料に置いてください。

出典

  • 厚生労働省「両立支援等助成金」

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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