公共工事設計労務単価とは 人事が押さえる基本
人事ノート公共工事設計労務単価は「積算に使う単価」です
公共工事設計労務単価は、国や地方公共団体などの発注者が公共工事の予定価格を積算するときに用いる、労務費の単価です。国土交通省が職種ごと、都道府県ごとに定めて公表しています。金額は1日8時間当たりの額として示されます。
ここで大事なのは、この単価が「発注者側が工事費を計算するための数字」だという点です。個々の技能者に支払う賃金の額そのものを直接定めた基準ではありません。一方で、国土交通省は単価の改定にあわせて、技能者への適切な水準の賃金支払いを関係団体に要請してきました。つまり「支払いを拘束する基準ではないが、賃金水準の目安として強く意識されている数字」という位置づけになります。
人事の立場では、次の三つの用途で目にすることが多い数字です。
- 自社の技能者の賃金水準が、公共工事の積算上の水準と比べてどのあたりにあるかを確かめる
- 昇給や賃金改定を検討するときに、社外の客観的な数字を経営会議へ持ち込む
- 協力会社への支払い水準を点検するときの参考にする
単価が決まるまでの流れ
単価の元になるのは、公共工事に従事した労働者の賃金支払実績を調べる調査です。調査結果を集計し、職種別・都道府県別の単価として公表する流れになっています。改定は年度単位で行われ、公表と適用の時期は年度ごとに国土交通省が示します。適用開始日は年度によって扱いが変わることがあるため、必ずその年度の公表資料で確認してください。「去年と同じ時期だろう」と思い込んだまま社内資料を作ると、日付がずれた資料が残ります。
単価に含まれるもの、含まれないもの
自社の賃金と比べるときに最初につまずくのが、この範囲の違いです。単価は「労働者に支払われる賃金」を集計したものであり、会社が負担する経費まで含んだ人件費総額ではありません。
| 区分 | 主な内容 | 単価への算入 |
|---|---|---|
| 基本給相当額 | 所定内労働時間に対する賃金 | 含まれる |
| 基準内手当 | 職種や資格に応じて恒常的に支払う手当 | 含まれる |
| 臨時の給与 | 賞与など | 含まれる(年間分をならした形) |
| 実物給与 | 食事の現物支給など | 含まれる |
| 本人負担分の社会保険料・所得税 | 賃金から控除される部分 | 支給額に含まれた状態 |
| 事業主負担の法定福利費 | 社会保険料の会社負担分など | 含まれない |
| 所定時間を超える割増賃金 | 時間外・休日・深夜の割増分 | 含まれない |
| 現場管理費・一般管理費 | 現場運営や本社経費 | 含まれない |
表の下半分が実務では効いてきます。単価は8時間分の賃金であり、残業代は入っていません。また、会社が負担する社会保険料は別枠です。ここを揃えずに「自社の日給のほうが高い」「単価より低い」と結論を出すと、判断を誤ります。各項目の細かい定義は年度ごとの公表資料に説明があります。境界が微妙な手当を扱うときは、公表資料の定義を確認してください。
よくある誤解を先に片づける
| よくある理解 | 実際 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 支払うべき賃金の下限だ | 積算に使う単価であり、個々の労働者への支払額を拘束するものではない | 「法定の最低額」として社内説明しない |
| そのまま日給として使える | 含まれる範囲が自社の日給と異なる | 比較前に単位と範囲を揃える |
| 全国共通の金額だ | 都道府県ごとに設定されている | 施工場所を基準に見る |
| 自社の職名と一致する | 積算上の職種区分であり社内の職名とは別 | 読み替え表を作って固定する |
| 施工管理の給与水準が分かる | 現場に配置する技術者の人件費は労務単価とは別の費用として扱われる | 技術者の水準把握には使わない |
| 上がった分は自動的に原資になる | 受注価格に反映されて初めて原資になる | 契約状況とあわせて検討する |
特に最後の二つは、社内で誤解が生まれやすいところです。単価が上がった年に「今年は上がるらしい」という話が現場で先に広まり、人事が説明に追われるケースがあります。単価の性格を先に共有しておくと、こうした行き違いは減ります。
自社の賃金と比べる手順
比較は次の順で行います。そのまま社内の作業手順として使えます。
- 比較の目的を決める。 賃金改定の材料なのか、協力会社への支払い点検なのか、求人票のレンジ検討なのかで、見る職種と粒度が変わります。
- 職種と都道府県を決める。 職種は自社の職名ではなく、単価の職種区分に読み替えます。都道府県は本社所在地ではなく、主な施工場所で選びます。
- 自社側の数字を1日8時間当たりに換算する。 月給者なら、年間の所定内賃金と賞与を合算し、年間の所定労働日数で割ります。日給者なら所定内の日額をそのまま使います。
- 範囲を揃える。 自社側から時間外・休日・深夜の割増分を除きます。事業主負担の法定福利費も除きます。通勤手当など、単価の定義に含まれるか判断が分かれるものは、公表資料の定義を見て扱いを決め、記録に残します。
- 比較する。 単価に対して自社の水準が何割程度かを出します。金額の差より、割合で見るほうが年度をまたいだ比較がしやすくなります。
- 差の理由を分解する。 受注価格の水準、稼働日数、経費率、職種の熟練度構成などに分けます。差が出たこと自体より、どの要素が効いているかが判断材料になります。
- 結論と前提を1枚にまとめる。 使った年度、職種区分、都道府県、換算の仮定を明記します。翌年に同じ手順で更新できる形にします。
この作業は、人事だけで完結しません。受注価格や工事原価の情報は積算・工事部門が持っています。人事が3〜6を担当し、1と2の前提合わせと、6の受注価格側の説明を積算部門に依頼するという分担にすると進みます。年1回、改定の公表後1か月以内に更新する運用が現実的です。
採用と人事制度でどう使うか
単価は求人票にそのまま転記する数字ではありません。使いどころは、社内での説明と点検です。
- 賃金レンジの妥当性チェック。 技能職の求人で提示している下限額が、施工場所の単価水準から見て極端に低くないかを確かめます。低い場合、応募が集まらない理由の一つになっている可能性があります。
- 昇給原資の社内説明。 経営層に対して、社外の水準を示す客観的な数字として使えます。ただし単価の上昇がそのまま原資になるわけではないため、受注価格の状況とセットで示します。
- 協力会社への支払い点検。 元請として労務費相当額が妥当かを見るときの参考になります。個別の契約条件の適否は契約や取引の問題を含むため、判断に迷う場合は専門家に相談してください。
- 技能者の説明資料。 CCUS の能力評価と賃金の関係を社内で整理するとき、外部の水準として並べて示すことができます。
求人票への書き方には注意が必要です。「設計労務単価に準拠」といった表現は、求職者に支払額の保証と受け取られる余地があります。求人票には、自社が実際に支払う額と算定の考え方を書いてください。
よくあるつまずき
- 年度と適用日を取り違える。 公表年度と適用開始日は別物です。社内資料には必ず「令和◯年度単価・適用開始日◯月◯日」と書き添えます。
- 都道府県を本社所在地で見る。 単価は施工場所の都道府県で見ます。営業エリアが複数県にまたがる会社ほど、ここがずれます。
- 月給と8時間単価をそのまま並べる。 換算せずに比較すると、月給者が不当に高く見えます。年間所定労働日数での割り戻しを省かないでください。
- 事業主負担分を含めて自社側を計算する。 法定福利費の会社負担を足すと自社の水準が高く見えます。単価には含まれていないため、除いて比べます。
- 残業代込みの実支給額で比べる。 単価は所定内8時間分です。残業の多い職場ほど差が大きく出ます。
- 職種の読み替えを毎回変える。 担当者が代わるたびに読み替えが変わると、前年との比較ができなくなります。読み替え表を文書にして残します。
- 単価上昇を理由に一律の賃上げを口頭で約束する。 受注価格への反映が確認できる前に約束すると、後戻りができません。検討の順序を決めておきます。
- 技能職と技術者を混ぜて説明する。 施工管理などの技術者の人件費は、労務単価とは別の枠で扱われます。社内説明で混ぜないでください。
社内に残しておく記録
翌年も同じ手順で更新できるように、次を1つのファイルにまとめておきます。
| 項目 | 記録する内容 | 更新の担当 |
|---|---|---|
| 参照年度 | 使った単価の年度と適用開始日 | 人事 |
| 職種の読み替え表 | 社内職名と単価の職種区分の対応 | 人事・工事部門 |
| 対象都道府県 | 主な施工場所と選定理由 | 工事部門 |
| 換算の前提 | 年間所定労働日数、賞与の扱い、除外した手当 | 人事 |
| 比較結果 | 職種別の水準比(割合) | 人事 |
| 差の要因 | 受注価格、稼働日数、経費率などの内訳 | 積算部門 |
| 検討結果 | 賃金改定に反映したか、しない場合の理由 | 経営 |
記録の目的は、翌年に「去年はどう考えたか」をたどれるようにすることです。判断そのものより、判断の前提を残すほうが後で効きます。
まとめ
公共工事設計労務単価は、発注者が予定価格を積算するために職種別・都道府県別に定める、1日8時間当たりの労務費の単価です。支払うべき賃金の下限を定めたものではありませんが、賃金水準を外部の数字で確かめるときの手がかりになります。使うときは、含まれる範囲と時間の単位を揃えることが出発点です。職種区分や単価の定義、改定の適用時期は年度ごとに変わり得るため、最新の公表資料で確認してください。
出典
- 国土交通省「公共工事設計労務単価」
本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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