#定着・育成2026.06.02 公開2026.09.08 更新読了 約9建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

建設業の技術者要件と実務経験年数の数え方

建設業法が求める技術者は、営業所に置く専任技術者と現場に置く主任技術者・監理技術者に分かれます。採用と配置の判断に必要な要件の整理、実務経験年数の数え方、確認書類と期限管理の手順を、人事の作業順に並べて解説します。

情報の基準日
2026.09.08
定着・育成

建設業の技術者要件と実務経験年数の数え方

人事ノート

建設業の採用では、「その人を採ると、どの営業所とどの現場を任せられるのか」を早い段階で見立てる必要があります。判断の土台になるのが建設業法の技術者要件です。ここを人事が理解していないと、内定を出した後で「営業所の技術者として登録できない」「その現場の監理技術者にはなれない」といった手戻りが起きます。

この記事は、建設業法に書かれている範囲を、採用担当者・人事担当者が使う順序に並べ替えて整理したものです。金額の基準や様式、細かな運用は政令や許可行政庁の手引きで定められ、改正も行われています。数値の確認が必要な箇所は、その旨を明記しています。

まず全体像を押さえる 技術者は「営業所」と「現場」で別

建設業法が求める技術者は、大きく二つの場所に置かれます。ひとつは許可の要件として営業所に常勤で置く技術者、もうひとつは工事現場に置く技術者です。この二つは根拠となる条文も、求められる要件も別です。

区分置く場所主な根拠役割の要点
営業所の専任技術者許可を受けた営業所建設業法第7条第2号(一般)/第15条第2号(特定)請負契約の適正な締結と履行を技術面で支える。原則として営業所に常勤して専任
主任技術者工事現場建設業法第26条第1項施工計画の作成、工程管理、品質管理、施工に従事する者の技術上の指導監督
監理技術者工事現場建設業法第26条第2項元請として下請に出す金額が政令で定める額以上の場合に、主任技術者に代えて設置
監理技術者補佐工事現場建設業法第26条第3項ただし書ほか監理技術者を補佐する。専任で置くことで監理技術者の兼務が認められる場合がある

人事の実務では、次の順で考えると整理しやすくなります。

  1. その人が営業所の技術者になれるか(許可の維持・業種追加に効く)
  2. その人が現場の主任技術者になれるか(業種ごとに判断)
  3. その人が監理技術者になれるか(資格者証と講習の有無まで確認)
  4. 現時点でどれにも当たらない場合、何年後にどの要件を満たせるか

営業所の専任技術者になるための三つのルート

一般建設業の許可では、建設業法第7条第2号が営業所の技術者の要件を定めています。要件は大きく三つのルートに分かれます。

ルート内容実務上の確認点
学歴+実務経験政令で定める学科を修めて高等学校等を卒業した後5年以上、大学・高等専門学校等を卒業した後3年以上の実務経験卒業証明書と成績証明書で「指定学科」に該当するかを確認する
実務経験のみ許可を受けようとする業種に関し10年以上の実務経験期間の重複計上ができない点に注意
資格等国土交通大臣が上記と同等以上と認定した者(技術検定合格者などの資格保有者)業種ごとに有効な資格が異なる。資格名だけで判断しない

特定建設業の許可では、建設業法第15条第2号がより重い要件を定めています。原則は、一級の技術検定合格者などの国が定める試験・免許に該当する者です。これに加えて、一般建設業の要件を満たしたうえで、発注者から直接請け負った政令で定める金額以上の工事について2年以上の指導監督的な実務経験を持つ者というルートがあります。ただし、指定建設業と呼ばれる業種では、この実務経験によるルートが使えず、一級資格者等に限られます。

採用計画では、この違いが効いてきます。特定建設業の許可を維持・追加したい業種で、指定建設業に当たるかどうかを先に確認してください。指定建設業に当たる場合、「経験は長いが一級資格を持たない人」を採っても、営業所の技術者としては登録できません。どの業種が指定建設業に当たるか、指導監督的実務経験の対象となる工事の請負金額がいくらかは、建設業法施行令などの公表資料で必ず確認してください。金額の基準は改正されています。

実務経験年数の数え方 五つの原則

実務経験は、単に「建設会社に在籍していた年数」ではありません。人事が候補者から経歴を聞き取るときは、次の観点で分解して確認します。

  1. 業種ごとに数える。 実務経験は、許可を受けようとする建設業の種類ごとに判断します。「建設業で15年」ではなく、「管工事で何年、電気工事で何年」という数え方です。
  2. 同じ期間を二つの業種に重ねて数えない。 同一期間に複数の工事に関わっていても、原則として一つの業種にしか算入できない取扱いです。10年ずつ二業種を主張する経歴には、必ず期間の内訳を確認してください。
  3. 技術上の経験であること。 施工の技術上の全般的な経験が対象です。事務、営業のみ、資材の運搬のみといった業務は、その内容によって扱いが異なります。判断に迷う職務は、許可行政庁の手引きで区分を確認してください。
  4. 学歴による短縮は「卒業後」の期間で数える。 指定学科の卒業により5年・3年へ短縮されますが、短縮の対象は卒業後の経験です。在学中のアルバイト経験の扱いは手引きで確認します。
  5. 証明できることが前提。 実務経験は、許可申請の際に実務経験証明書によって証明します。証明者は原則として当時の使用者です。前職での経験を主張する場合、前職の会社に証明を依頼できるかどうかが実務上の分かれ目になります。

専修学校(専門学校)の卒業者や、複数の会社をまたぐ経歴の取扱いは、政令や許可行政庁の運用で細かく定められています。人事が独自に判断せず、許可担当部署や行政書士と一緒に確認する運用にしてください。

面接での聞き取り項目

実務経験を確認する面接では、次の項目をそのまま質問票にすると漏れが減ります。

  • 在籍した会社ごとの期間(年月まで)と、その会社の許可業種
  • 携わった工事の名称、発注者、元請か下請か、工事の種類
  • 各工事での立場(主任技術者、担当者、補助)
  • 現場に配属されていなかった期間(内勤、他部門異動、休職)の有無
  • 実務経験証明書の証明を前職に依頼できる関係かどうか

現場に置く技術者 主任技術者と監理技術者

建設業法第26条は、請け負った建設工事を施工するときに、主任技術者を置かなければならないと定めています。主任技術者になれるのは、営業所の専任技術者と同じ要件、つまり第7条第2号のイ・ロ・ハに該当する者です。つまり「営業所に置ける人」と「現場に置ける人」の技術者要件は、一般建設業の水準では共通しています。

元請として工事を請け負い、下請に出す金額の合計が政令で定める額以上になる場合は、主任技術者に代えて監理技術者を置きます。監理技術者は特定建設業の技術者要件に対応する水準が求められます。

さらに、公共性のある施設や多数の者が利用する施設に関する重要な建設工事で、請負代金の額が政令で定める額以上のものは、技術者を工事現場ごとに専任で置く必要があります。専任が必要な工事では、他の現場との兼務は原則としてできません。ここは配属計画に直結するため、営業部門と人事で共通認識を持ってください。金額の基準は改正されており、最新の値は公表資料で確認が必要です。

監理技術者は「資格+二つの証明」で判断する

専任が必要な工事に監理技術者を置く場合、監理技術者資格者証の交付を受け、監理技術者講習を受けた者のうちから選任することが求められます。人事が確認するのは次の三点です。

  • 技術者としての資格要件(一級の技術検定合格など)を満たしているか
  • 監理技術者資格者証を持っているか。券面の有効期限はいつか
  • 監理技術者講習を受けているか。修了の有効期限はいつか

資格者証と講習には有効期限があり、更新が必要です。期限の日付は券面と修了履歴に記載されています。人事は日付をそのまま台帳へ転記し、更新時期を管理してください。「資格は持っているが講習が切れていて、専任の現場に配置できない」という事態は、採用直後に起こりがちです。

また、監理技術者を補佐する者を専任で置くことで、監理技術者が複数の現場を兼務できる仕組みが設けられています。補佐に当たる技士補の育成は、監理技術者の不足を緩和する手段になります。要件と現場数の上限は公表資料で確認してください。

採用選考で確認する書類と手順

技術者候補の選考では、次の順で確認すると判断が速くなります。

  1. 応募時:保有資格を資格名と合格年で申告してもらう。業種と資格の対応を社内の許可業種一覧と突き合わせる。
  2. 一次面接:会社ごとの在籍期間、工事の種類、立場を聞き取る。業種別の実務経験年数を仮置きする。
  3. 書類確認:合格証明書・免状の写し、卒業証明書(指定学科ルートの場合)、監理技術者資格者証と講習修了の写しを受け取る。
  4. 社内照合:許可担当部署に、営業所の技術者として登録可能か、対象業種で主任技術者・監理技術者として配置可能かを確認する。
  5. 内定前:実務経験証明が必要な場合、前職からの証明取得の見込みを本人と確認する。
  6. 入社後:営業所の技術者を交代する場合は、許可行政庁への変更の届出が必要です。届出の期限と必要書類を許可担当部署と共有し、入社日から逆算して準備します。
確認書類何を確かめるか誰が確認するか
技術検定の合格証明書・免状級と種目、氏名、交付年月日採用担当
卒業証明書・成績証明書指定学科に該当するか採用担当と許可担当
実務経験証明書の見込み証明者を確保できるか許可担当
監理技術者資格者証記載業種と有効期限採用担当
監理技術者講習の修了履歴有効期限採用担当
常勤性を示す書類営業所の技術者として常勤かどうか労務担当

常勤性の確認に必要な書類は許可行政庁の手引きで定められています。手引きの様式と一覧を、採用担当が手元に置いておくと確認が早くなります。

よくあるつまずき

  • 資格名だけで配置を決めてしまう。 同じ「一級」でも種目が違えば対応する業種が違います。許可業種と資格の対応表を社内で作り、面接時に照合してください。
  • 実務経験10年を自己申告のまま信じる。 期間の重複や、現場を離れていた期間が含まれていることがあります。会社ごと・工事ごとに分解して聞き取る運用にします。
  • 前職から実務経験証明が取れない。 前職が廃業している、関係が良くないといった事情で証明が難しいことがあります。契約書や注文書などの裏付け資料で代替できるかを、早い段階で許可行政庁に相談してください。
  • 指定建設業で実務経験ルートを想定してしまう。 指定建設業では、営業所の技術者を実務経験だけで満たすことができません。求人票の要件を作る時点で確認します。
  • 講習の期限切れに気づかない。 資格者証と講習は別物です。台帳では列を分けて管理します。
  • 専任が必要な現場で兼務させる。 専任の要否は工事の性質と請負代金の額で決まります。配置検討会で、対象工事かどうかを最初に確認する手順にしてください。
  • 営業所の技術者を現場に出してしまう。 営業所の技術者は原則としてその営業所に常勤して専任です。例外の取扱いは手引きで確認し、独自判断で兼務させないでください。
  • 技術者の退職で許可要件を欠く。 営業所の技術者が一人しかいない業種は、退職の申し出があった時点で許可要件に直結します。業種別に「技術者要件を満たす人数」を可視化しておきます。

育成計画への落とし込み

技術者は外部採用だけでは埋まりません。建設業法の要件を、社内の育成計画に翻訳しておくと、定着施策と資格取得支援が結びつきます。

技術検定は第一次検定と第二次検定に分かれ、第一次検定の合格者は技士補と呼ばれます。一級の技士補は、要件を満たせば監理技術者を補佐する立場になり得ます。第二次検定の受検資格は見直しが行われているため、受検の要件と必要な実務経験年数は、試験実施機関の公表資料で毎年確認してください。

人事が用意できる支援は次のとおりです。

支援策内容担当
受検費用の負担受検手数料、講習費、テキスト代人事
学習時間の確保試験前の時間外労働の抑制、休暇の取得促進人事と各支店
経験の設計受検資格に必要な工事種別・立場を意識した配属工事部門と人事
到達状況の管理業種別・級別の保有状況と、次に取るべき資格の可視化人事
期限管理資格者証・講習の有効期限の通知人事

配属の設計は特に重要です。実務経験は業種ごとに数えるため、短期間で配属業種を頻繁に変えると、どの業種でも年数が積み上がらないことがあります。若手の配属を決めるときは、「この人はどの業種で技術者要件を満たすのか」を先に置いてから、現場を割り当ててください。

最後に、この記事で触れた金額の基準、指定建設業の範囲、様式、届出の期限は、政令や許可行政庁の運用によって定められ、改正もされています。採用の可否や配置の可否を左右する判断は、建設業法の条文と許可行政庁の公表資料で確認し、個別の事案は許可担当部署や専門家に相談してください。

出典

  • 建設業法

出典

  • 建設業法

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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