#データ・市況2025.12.01 公開2026.09.08 更新読了 約7建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

離職理由の内訳から自社の課題を見つける手順

厚生労働省「雇用動向調査」には、転職入職者が前職を辞めた理由の区分が用意されています。この区分をそのまま自社の退職者集計に持ち込むと、社内の課題が具体的な打ち手に落ちます。集計の手順、退職面談の設計、区分ごとの確認先を実務の順序で整理します。

情報の基準日
2026.09.08
データ・市況

離職理由の内訳から自社の課題を見つける手順

人事ノート

離職率の数字が出ても、それだけでは何を直せばよいか決まりません。必要なのは「誰が、どの理由で辞めたか」の内訳です。厚生労働省「雇用動向調査」には、転職入職者が前職を辞めた理由の区分が用意されています。この区分を自社の退職者データにも当てはめると、社内の会話が「離職が多い」から「どの層の、どの理由が多い」に変わります。この記事では、公表資料で確認できる区分の考え方と、自社で同じ形に集計する手順をまとめます。

なお、本記事では具体的な割合の数値は挙げません。年によって水準も区分の表記も変わるため、数値は必ず最新の公表資料で確認してください。

雇用動向調査で分かること、分からないこと

雇用動向調査は、厚生労働省が事業所を対象に実施している統計調査です。事業所についての調査票と、その期間に入職・離職した労働者についての調査票があり、後者から「転職入職者が前職を辞めた理由」が集計されます。産業別、性別、年齢階級別の集計が公表されています。調査の対象範囲や実施回数などの前提は、公表資料の利用上の注意で確認してください。

人事が押さえておきたいのは、次の線引きです。

分かること

  • 前職を辞めた理由が、どの区分にどれくらい集まっているか
  • 男女別、年齢階級別に、理由の集まり方が違うか
  • 建設業という産業単位での傾向

分からないこと

  • 建設業の中の職種別(施工管理、技能者、設計、事務など)の違い
  • 会社の規模や地域による違いの細かい部分
  • 退職者が言わなかった本当の理由

つまり、この統計は自社の答えを教えてくれるものではありません。自社の内訳を同じ物差しで作り、産業の形と見比べるための「型」として使います。

前職を辞めた理由の区分を、社内の物差しにする

公表されている区分は、大きく「個人的理由」「事業所側の理由」「契約期間の満了」「定年」などに分かれ、個人的理由の中がさらに細かく分かれる構造です。細分の項目には、職場の人間関係、労働時間・休日等の労働条件、給料等収入、会社の将来性、能力や個性・資格を生かせない、仕事の内容への興味、結婚、出産・育児、介護・看護、といった内容が並びます。区分名の細かい表記は年によって変わることがあるため、集計に使う年の公表資料で正確な項目名を確認してください。

自社で使うときは、次のように「その理由が出たら、どこを見に行くか」まで決めておきます。ここまで決めておかないと、内訳が出ても議論が止まります。

理由の区分自社で確かめる社内データ主に動かす部署
労働時間・休日等の労働条件現場別の時間外時間数、休日出勤日数、有給取得日数工事部門・安全衛生
給料等収入等級別の支給実績、同職種の求人相場、昇給の実施状況人事・経営
職場の人間関係所属長別の離職者数、相談窓口の受付件数、面談記録人事
会社の将来性受注残の説明の有無、事業計画の共有頻度経営
能力・資格を生かせない配属履歴、資格取得後の担当変更の有無人事・工事部門
仕事の内容への興味入社前の説明内容と初期配属の一致度採用担当
結婚・出産・育児・介護制度の利用実績、短時間勤務や配置転換の可否人事
契約期間の満了有期契約者の更新方針、工事工程との関係人事・工事部門
事業所側の理由(経営上の都合など)受注状況、要員計画経営
定年継続雇用の申出状況、退職予定者の把握人事

自社の離職理由を集計する手順

以下はそのまま社内の作業手順として使える形にしています。担当と期限を入れて運用してください。

  1. 対象期間と対象者を決める(人事、年度開始時)。会計年度か暦年かを決め、以後は変えません。対象は「自己都合退職」だけに絞らず、契約満了、定年、会社都合も含めて全件を拾います。理由の内訳は、母数に何を入れたかで見え方が変わります。
  2. 理由の記録元をそろえる(人事、随時)。退職届の記載、上長からの報告、退職面談の記録の三つを突き合わせます。書面に「一身上の都合」としか書かれていないことは珍しくないので、面談記録がないと集計になりません。
  3. 区分に当てはめるルールを文書化する(人事、初回のみ)。理由が複数あるときは「主たる理由を一つ」に決め、副次の理由は別欄に残します。判断に迷う例(例:現場が遠く帰宅が遅い→労働時間か、転勤・配属か)を三つ程度、判断例として書き残しておくと、担当者が替わっても集計がぶれません。
  4. 属性を必ず一緒に持つ(人事、退職手続時)。入社年月、勤続期間、年齢、職種、雇用区分、直近の所属(現場名または部署名)、直属の上長、入社経路(紹介、自社応募、縁故など)を付けます。属性が無い内訳は、打ち手に結びつきません。
  5. 四半期ごとに更新する(人事、各四半期の翌月末まで)。年1回だけの集計では、手を打つのが遅れます。
  6. 年1回、区分別の内訳を経営会議に出す(人事、年度末)。あわせて雇用動向調査の建設業の集計と形を見比べ、自社で特に膨らんでいる区分を一つか二つに絞ります。

退職面談を、集計できる形で設計する

理由の内訳は、退職面談の質で決まります。次の点を決めておきます。

  • 実施者:直属の上長ではなく、人事または人事に準じる立場の担当が行います。人間関係が理由の場合、上長には言えません。
  • 時期:退職日の直前は本音が出にくく、退職の申出直後は感情が強く出ます。申出から一週間程度あけ、退職日の二週間前までを目安にします。
  • 時間:十五分から三十分。長く取ると評価面談のようになり、構えられます。
  • 伝えること:内容は本人の評価や退職手続に影響しないこと、集計は個人が分からない形にすること、この二つを冒頭で伝えます。

質問は、区分に落とせる形で用意します。

  1. 転職を考え始めたのはいつ頃ですか。そのきっかけは何でしたか。
  2. その時点で、会社側が何をしていれば残る余地はありましたか。
  3. 労働時間、休日、賃金、仕事の内容、人間関係、将来性のうち、影響が大きかった順に三つ挙げてください。
  4. 次の勤務先を選んだ決め手は何ですか。
  5. 入社前に聞いていた話と、実際が違った点はありますか。

三つ目の質問は、そのまま区分への振り分けに使えます。五つ目は、採用時の説明の見直しに直結します。面談記録は所定の様式に落とし、自由記述をそのまま残してください。要約だけにすると、後から読み返しても打ち手が出ません。

建設業で読むときの注意点

  • 契約期間の満了と会社都合は、工事の波と連動します。 受注が細った期の内訳は、本人の意思による離職の傾向を見るには向きません。区分を分けて見ます。
  • 労働条件の理由は、会社単位ではなく現場単位で出ます。 全社平均の時間外時間数では見えません。退職者の直近の従事現場ごとに並べ替えてください。特定の現場や特定の所属長に集中していることがあります。
  • 転勤・配属は独立した項目として置かれていないことがあります。 公表区分では他の項目に含まれる形になる場合があるため、自社集計では「配属地・転勤」を副次の記録欄で必ず拾っておきます。建設業では影響が大きい要素です。
  • 年齢階級で分けて見ます。 若年層と中堅層では、同じ「賃金」でも意味が違います。若年層は初任給水準や昇給の見通し、中堅層は役職や責任に対する見合いの話であることが多く、打ち手が異なります。
  • 入職の理由と離職の理由を混ぜません。 入職側の集計は求人票の見直しに、離職側の集計は定着施策に使います。

よくあるつまずき

「自己都合」で全件を処理してしまう

退職届の文言をそのまま集計に使うと、ほぼ全件が個人的理由になり、内訳の意味がなくなります。書面上の区分と、集計上の理由は別に管理してください。

分母が小さいのに割合だけを見る

年間の退職者が数名の会社で「人間関係が三十パーセント」と言っても、一名か二名の話です。割合と実数を必ず併記します。三年分をまとめて見る方が、傾向がはっきりすることもあります。

統計の数値と自社の数値を、そのまま優劣で語る

雇用動向調査は産業単位の集計で、自社の集計とは対象期間も母集団も違います。並べるのは水準の比較ではなく、内訳の形の違いを見るためです。「自社は労働時間の理由が突出している」といった相対の読み方にとどめます。

集計しただけで終わる

内訳を出しても、確認先と担当が決まっていなければ何も動きません。前掲の表のように、区分ごとの確認先をあらかじめ決めておきます。

面談記録を評価や再雇用の判断に流用する

一度でも流用すると、以後の面談で本音が出なくなります。閲覧できる者を限定し、運用の範囲を文書で決めてください。

経営に出す一枚に載せる項目

年1回の報告は、次の五項目に絞ると議論が進みます。

  1. 退職者の実数と、離職率(算定式を明記)
  2. 理由の区分別内訳(実数と割合、前年との比較)
  3. 勤続期間別の内訳(特に入社一年未満の人数)
  4. 職種別・所属別の内訳
  5. 上位二つの区分に対して、次年度に誰が何をするか

五番目まで書いて、初めて報告になります。統計はそのための物差しであって、結論ではありません。個別の退職事案で法的な争いが想定される場合は、社内の集計とは切り離し、弁護士や社会保険労務士に相談してください。

出典

  • 厚生労働省「雇用動向調査」

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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