施工管理の求人年収 職種別に中央値を読む
人事ノート求人票に書く想定年収は、応募が集まるかどうかを左右します。しかし社内の給与テーブルだけを見て決めると、市場のレンジとずれていることに気づけません。この記事では、当社が掲載している求人データを職種カテゴリ別に集計し、施工管理を中心に「いまいくらで募集されているか」を確認します。あわせて、その数字を自社の募集条件づくりにどう使うかを整理します。
集計の範囲と読み方の前提
はじめに、どの範囲を集計したものかを明記します。ここを飛ばすと、数字がひとり歩きします。
- 対象は、建設タレントサーチに掲載中の求人のうち、年収が明示されているものです。
- 対象件数は全体で 4919件 です。年収の記載がない求人(「経験に応じて決定」などのみの記載)は含みません。
- 集計しているのは、求人票に記載された想定年収の下限と上限です。実際に支払われた賃金ではありません。
- 代表値には中央値を使っています。平均値は一部の高額求人に引っ張られるため、募集レンジの実感に近い中央値を採用しました。
- 基準日は2026年9月8日時点です。掲載求人は入れ替わるため、数字は時点によって動きます。
この前提を押さえたうえで、以下の表を見てください。
職種カテゴリ別の想定年収(中央値)
| 職種カテゴリ | 件数(n) | 年収下限の中央値 | 年収上限の中央値 | 上限と下限の差 |
|---|---|---|---|---|
| 施工管理 | 2909件 | 450万円 | 700万円 | 250万円 |
| 設計 | 853件 | 500万円 | 800万円 | 300万円 |
| 営業 | 482件 | 450万円 | 800万円 | 350万円 |
| 建設コンサルタント | 205件 | 500万円 | 780万円 | 280万円 |
| 品質・保全・その他 | 198件 | 460万円 | 750万円 | 290万円 |
| 測量・積算・CAD | 169件 | 450万円 | 720万円 | 270万円 |
| 不動産 | 103件 | 500万円 | 700万円 | 200万円 |
合計は4919件です。施工管理が2909件で、全体のおよそ6割を占めます。求人市場の中心が施工管理であることが、件数の面からも確認できます。
施工管理のレンジをどう読むか
施工管理の中央値は、下限450万円・上限700万円です。この2つの数字から読めることを整理します。
下限450万円は「応募の入口」の水準
下限は、求人票を見た候補者が最初に目にする金額です。施工管理の下限中央値が450万円ということは、下限を450万円より低く設定した求人は、掲載求人の中で下半分に位置することを意味します。経験者を採りたい募集で下限を400万円台前半に置くと、同じ職種の他の求人と並んだときに見劣りします。
ただし、これは「450万円を払わなければ採用できない」という意味ではありません。中央値は分布の真ん中を示すだけで、下限が450万円未満の求人も相当数あります。未経験者や第二新卒を対象にした募集、勤務地が限定される募集などは、下限が下がる要因になります。自社の募集がどの層を狙っているのかを先に決めることが必要です。
上限700万円は「到達点の見せ方」
上限は、候補者にとって「この会社で伸びたらいくらになるか」を示す数字です。施工管理の上限中央値は700万円です。下限との差は250万円あります。
この250万円の幅をどう説明するかが、求人票の質を分けます。幅だけ広く書いて根拠がないと、候補者は「上限は実質的に届かない数字だろう」と受け取ります。上限に近い金額を受け取っている社員が実在するのか、そこに至る条件(資格、担当できる工事規模、役職)は何かを、社内で言語化してから記載してください。
職種間の差から見えること
設計・建設コンサルタント・不動産は、下限の中央値が500万円で、施工管理より50万円高くなっています。一方で上限は、設計が800万円、建設コンサルタントが780万円、不動産が700万円と分かれます。不動産は上限と下限の差が200万円で、7カテゴリの中で最も狭い結果です。
営業は下限450万円・上限800万円で、差が350万円と最も広くなっています。成果に応じた変動幅を求人票に反映している募集が多いと考えられますが、これはあくまで掲載データの傾向であり、支給実態を示すものではありません。
施工管理は件数が2909件と圧倒的に多い一方で、下限は450万円と設計より低い水準です。母数が多い職種ほど、条件が平均的な求人に埋もれやすいという点は、募集設計をするうえで意識しておく価値があります。
自社の募集レンジを決める手順
表を眺めるだけでは実務は進みません。以下の順で作業してください。担当は採用担当者、期限は求人票を公開する2週間前を目安とします。
- 募集ポジションを職種カテゴリに当てはめる(採用担当者/着手初日)。建築施工管理か、設備施工管理か、といった細分化の前に、まず上表のどのカテゴリに入るかを決めます。
- 狙う経験層を1つに絞る(採用担当者と現場責任者/2日以内)。「未経験可」と「10年以上の経験者歓迎」を1つの求人に同居させると、年収レンジの根拠が説明できなくなります。
- 社内の実支給額を確認する(人事/3日以内)。同じ職種で在籍している社員の年収実績を、下位・中位・上位で並べます。求人票のレンジは、この実績と矛盾しない範囲に収めます。
- 中央値と自社レンジを突き合わせる(人事と経営者/1週間以内)。施工管理なら下限450万円・上限700万円と比べ、下振れしている場合は「なぜ下振れしてよいのか」を説明できるかを検討します。説明できないなら、金額を上げるか、金額以外の訴求を用意します。
- 上限の根拠を文章にする(採用担当者/求人票作成時)。上限額に到達する条件を1〜2行で書けるかを確認します。書けないなら、上限を実態に合わせて下げます。
- 公開後の反応を記録する(採用担当者/公開後4週間)。応募数と、応募者の経験年数の分布を残します。次回の改定材料になります。
よくあるつまずき
上限だけを高くして応募を集めようとする
上限を800万円と書けば目を引きますが、面接で提示する金額が500万円台なら、候補者は不信感を持ちます。内定辞退や早期離職につながり、採用コストが二重にかかります。上限は「社内に実例がある金額」に限定してください。
下限を低く置いて交渉余地を残そうとする
下限を低めに設定して、面接で調整しようという考え方があります。しかし候補者は下限の数字で応募するかどうかを判断します。そもそも応募が来なければ交渉の場もありません。施工管理で下限450万円という中央値は、この判断材料になります。
職種名と実際の業務がずれている
「施工管理」として募集しながら、実務は積算や図面作成が中心というケースがあります。カテゴリが変われば年収レンジの相場感も変わります。測量・積算・CADの下限中央値は450万円、上限中央値は720万円で、施工管理とは上限で20万円の差があります。業務内容を正確に書いたうえで、レンジを決めてください。
年収を書かずに「経験に応じて決定」とだけ書く
今回の集計対象は、年収が明示されている求人です。金額を書かない求人は、候補者が比較する土俵に乗りにくくなります。なお、求人を出す際の労働条件の明示については、職業安定法および関係する省令・指針に定めがあります。記載すべき事項の詳細は、厚生労働省の公表資料で確認してください。
中央値を「自社が払うべき額」と誤解する
中央値は掲載求人の分布の真ん中であり、支払い義務の基準ではありません。地域、工事の種類、常駐か本社勤務か、休日日数など、金額以外の条件によって妥当な水準は変わります。この記事の数字は、自社の条件を検討する際の出発点として使ってください。
金額以外で差をつける論点
年収を市場中央値まで引き上げられない場合もあります。その際に検討できる論点を挙げます。いずれも求人票に具体的に書けるかどうかが鍵です。
| 論点 | 求人票に書くべき具体例 |
|---|---|
| 休日 | 年間休日日数、4週8休の実施状況、現場ごとの差 |
| 勤務地 | 転勤の有無、通勤圏の目安、単身赴任の頻度 |
| 担当工事 | 工事の種類と規模、1人あたりの担当現場数 |
| 資格支援 | 受験費用の負担、合格時の手当額、取得後の年収変化 |
| 就業時間 | 直行直帰の可否、残業時間の実績 |
これらは、金額のレンジが同水準の求人が並んだときに、候補者が比較する項目です。抽象的に「働きやすい環境」と書くのではなく、数字と条件で書いてください。
まとめ
- 集計対象は掲載中の求人のうち年収が明示された4919件です。基準日は2026年9月8日です。
- 施工管理はn=2909で、下限450万円・上限700万円が中央値です。
- 設計・建設コンサルタント・不動産は下限500万円で、施工管理より50万円高い水準です。
- 上限と下限の差は営業が350万円と最も広く、不動産が200万円と最も狭い結果です。
- 中央値は出発点です。自社の実支給額と突き合わせ、上限の根拠を説明できる形にしてから公開してください。
募集条件の設計や、賃金制度そのものの見直しについては、個別の事情によって判断が分かれます。制度改定を伴う場合は、社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。
出典
- 建設タレントサーチ 掲載求人データ
本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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