#データ・市況2026.01.28 公開2026.09.08 更新読了 約8建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

職種別に見る年収レンジの幅と求人票への反映

掲載中の求人4919件のうち年収が明示されたものを職種カテゴリ別に集計し、下限と上限の中央値、その差を並べました。幅の広い職種と狭い職種では、求人票に書くべきことが変わります。自社のレンジを点検する手順と、つまずきどころまで整理します。

情報の基準日
2026.09.08
データ・市況

職種別に見る年収レンジの幅と求人票への反映

人事ノート

求人票の年収欄は「いくらから、いくらまで」と幅で書くことがほとんどです。この幅の広さは職種によって違います。幅が広い職種で下限だけを見て応募判断されると、実際に採りたい層に届きません。逆に幅が狭い職種で高い上限を書くと、根拠を面接で説明できず、内定辞退や早期離職の火種になります。

ここでは当社の掲載求人データをもとに、職種カテゴリごとの年収レンジの下限・上限とその幅を並べ、自社の求人票をどう点検するかを整理します。

この集計の範囲と読み方の前提

集計の対象は、建設タレントサーチに掲載中の求人のうち、年収が明示されているもの4919件です。情報の基準日は2026年9月8日です。この4919件を職種カテゴリで7つに分け、それぞれについて年収下限の中央値と年収上限の中央値を出しました。

読み進める前に、次の点を押さえてください。

  • 中央値は、金額順に並べたときの真ん中の値です。平均値ではないため、一部の高額求人に引っ張られません。
  • 本文の「幅」は、下限の中央値と上限の中央値の差です。個別の求人1件が持つ幅そのものではありません。カテゴリ全体の傾向を見るための数字です。
  • これは求人票に掲示された条件の集計であり、実際に支払われた賃金の統計ではありません。
  • 地域、企業規模、経験年数、資格の有無では分けていません。それらを分けると、同じ職種でも数字は動きます。
  • 職種カテゴリは掲載時の分類に基づきます。実務では複数の職種にまたがる求人もあり、分類の境目には幅があります。

職種カテゴリ別の年収レンジ

下の表が集計結果です。「幅」は上限中央値から下限中央値を引いた金額、「倍率」は上限中央値を下限中央値で割った値です。構成比は4919件に占める件数の割合です。

職種カテゴリ件数(n)構成比下限の中央値上限の中央値倍率
施工管理2909約59%450万円700万円250万円約1.56倍
設計853約17%500万円800万円300万円約1.60倍
営業482約10%450万円800万円350万円約1.78倍
建設コンサルタント205約4%500万円780万円280万円約1.56倍
品質・保全・その他198約4%460万円750万円290万円約1.63倍
測量・積算・CAD169約3%450万円720万円270万円約1.60倍
不動産103約2%500万円700万円200万円約1.40倍

件数の少ないカテゴリほど、数字は動きやすくなります。とくに不動産(n=103)と測量・積算・CAD(n=169)は、掲載企業の顔ぶれが変わると中央値が動く可能性があります。件数の多い施工管理(n=2909)と設計(n=853)は、比較的安定して読める数字です。

表から読み取れること

  1. 下限は450万円から500万円の間に収まっています。 7カテゴリのうち、450万円が3つ、460万円が1つ、500万円が3つです。職種が違っても、募集の入口として提示される金額の差は50万円程度にとどまります。
  2. 上限は700万円から800万円まで、100万円の開きがあります。 上限が最も高いのは設計と営業の800万円、次いで建設コンサルタントの780万円です。施工管理と不動産は700万円です。
  3. 幅が最も広いのは営業の350万円、最も狭いのは不動産の200万円です。 その差は150万円あります。同じ「年収レンジ」という言葉でも、職種によって意味する広さがかなり違います。
  4. 件数の6割近くを施工管理が占めています。 建設分野の求人全体の平均像は、ほぼ施工管理の数字に引きずられます。他職種を採用するときに全体平均を基準にすると、判断を誤ります。

幅が広い職種と狭い職種で、書くべきことが変わる

幅は、その職種で「1本の求人票に載る層の広さ」を示す目安です。幅が広いほど、同じ求人に対して経験も期待役割も異なる人が応募してきます。

幅が広い職種(営業350万円、設計300万円、品質・保全・その他290万円)

この層では、求人票に金額だけを書いても、応募者は自分がどこに位置づくか判断できません。次を求人票の本文に加えてください。

  • 下限に該当するのはどういう経験の人か(例:担当としての実務経験年数、担当してきた案件の規模)
  • 上限に該当するのはどういう役割か(例:単独での案件責任、部下の育成、顧客開拓の責任範囲)
  • その間の段階が何段あり、何で決まるか(等級、資格、実績評価のいずれか)

営業は倍率が約1.78倍と最も高く、成果に応じた変動部分が金額差につながりやすい職種です。固定給と変動給の割合、変動部分がどのように決まるかを求人票の段階で書いておくと、面接での説明が短くなります。

幅が狭い職種(不動産200万円、施工管理250万円)

狭いレンジは、応募者から見ると「この金額で頭打ちなのか」と読まれます。金額の刻みを増やすのではなく、上限に届いた後の道筋を示す方が効果的です。

  • 上限到達後にどの役職・等級に進むのか
  • その次の職位のレンジが別に用意されているのか
  • 資格取得や役割の変更でレンジ自体が切り替わるのか

施工管理は件数が最も多く、応募者も他社の条件を数多く見ています。下限450万円・上限700万円という水準は、応募者にとって見慣れた形です。同じ金額を出すのであれば、金額以外の条件(担当現場の範囲、直行直帰の可否、休日の取り方、転勤の有無)で差がつきます。

自社の求人レンジを点検する手順

人事担当者がそのまま社内で使える手順にします。所要は1職種あたり1時間程度を見込んでください。

  1. 現在掲載中の自社求人を職種カテゴリごとに並べます。(担当:採用担当。表計算ソフトで、職種・下限・上限・掲載開始日の4列を作ります)
  2. 各求人の幅と倍率を計算します。(上限-下限、上限÷下限。この記事の表と並べて比較します)
  3. 表の中央値との差を確認します。 下限が中央値より低い場合は、応募数そのものが減っていないかを、応募件数の推移と合わせて見ます。上限が中央値より高い場合は、その金額を実際に提示した実績があるかを確認します。
  4. 上限の根拠を社内で確認します。(担当:人事と配属部門の責任者。直近1年から2年で、その職種の在籍者に上限額に近い年収を支払った例があるかを確認します。実例がなければ、上限は下げるか、到達条件を書き添えます)
  5. レンジの中の段階を文章にします。 「下限は〇年程度の経験、中位は単独で案件を任せられる段階、上限は複数案件と後進育成を担う段階」といった形で、3段階程度に整理します。
  6. 求人票の本文に、その段階と決まり方を反映します。(担当:採用担当。書き換え後、配属部門の責任者に内容の確認を取ります)
  7. 面接での提示額の決め方を1枚にまとめます。(担当:人事。誰が、どの情報をもとに、どの段階で金額を決めるかを書きます。面接官が複数いる場合は必須です)
  8. 内定提示のたびに、提示額とレンジ内の位置を記録します。 半年後に見返すと、レンジの上限・下限が実態と合っているかが分かります。

よくあるつまずき

上限を「理想の候補者」に合わせて書いてしまう

表の上限中央値は、設計と営業で800万円です。この数字に合わせて自社も800万円と書いたものの、社内にその金額の在籍者がいないというケースがあります。応募者は上限を見て応募し、面接で下限に近い金額を提示されて辞退します。手順4の確認を飛ばさないでください。

求人票の金額と、採用時に明示する労働条件がずれる

求人票に示した条件と、実際に契約する労働条件が異なる場合の取り扱いについては、職業安定法などにルールがあります。詳細は厚生労働省の公表資料でご確認ください。実務では、レンジで募集し個別に金額を決める運用そのものは一般的ですが、確定した条件を書面などで正しく示すことが前提になります。判断に迷う事案は、社会保険労務士など専門家に相談してください。

手当や固定残業代の扱いがそろっていない

年収に何を含めるかがそろっていないと、他社の求人とも自社の過去の求人とも比較できません。賞与見込みを含むのか、固定残業代を含むのか、現場手当や住宅手当を含むのかを社内で1つに決め、求人票に注記してください。この集計も、各求人票に記載された年収額をそのまま扱っています。含まれる項目は求人ごとに異なる可能性があります。

全体平均を職種別の基準に使ってしまう

件数の約59%が施工管理です。全体の平均や中央値を出しても、それは施工管理の数字に近いものになります。設計、営業、建設コンサルタントの採用条件を決めるときに全体値を持ち出すと、上限が100万円ほど低く見積もられます。必ず職種カテゴリごとに見てください。

職種カテゴリの分類が実態とずれている

「品質・保全・その他」は複数の業務をまとめたカテゴリです。自社の募集職種がどこに当たるか迷う場合は、近い2つのカテゴリの数字を両方見て、間の水準として扱う方が安全です。測量・積算・CADのように業務の幅が広いカテゴリも同様です。

中央値を「その職種の相場」と言い切ってしまう

中央値は真ん中の値であり、そこに求人が集中しているとは限りません。社内資料に書くときは「掲載求人の下限の中央値」「掲載求人の上限の中央値」と、何の中央値かを毎回書いてください。経営会議で「相場は450万円」と一言で伝わると、後で必ず解釈がずれます。

この集計では言えないこと

実務で使う前に、次の点は前提から外してください。

  • 地域差は分けていません。同じ職種でも地域によって条件は変わります。地域別の見方は別の集計が必要です。
  • 経験年数、保有資格、企業規模との関係は含んでいません。
  • 実際に支払われた賃金ではありません。求人票に掲示された条件です。
  • 求人票1件ごとのレンジの広さは分かりません。表の「幅」は、下限の中央値と上限の中央値という別々の代表値の差です。
  • 時系列の変化は含んでいません。基準日時点の掲載求人を切り出した数字です。

まとめとして押さえる3点

  1. 下限は450万円から500万円に集まり、職種差は50万円程度です。差が大きいのは上限で、700万円から800万円まで100万円の開きがあります。
  2. レンジの幅は営業の350万円が最も広く、不動産の200万円が最も狭くなっています。幅が広い職種では段階と決まり方を、幅が狭い職種では上限到達後の道筋を、求人票に書いてください。
  3. 掲載求人の約59%が施工管理です。全体値ではなく、必ず職種カテゴリごとの数字で判断してください。

年収レンジは、金額を決める作業であると同時に、社内の等級や役割の説明を求人票に翻訳する作業です。上の手順4から7までを一度通しておくと、次回以降の求人作成が短時間で済みます。

出典

  • 建設タレントサーチ 掲載求人データ

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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