都道府県別の求人集中度と年収下限の読み方
人事ノート建設技術者の求人は、全国に均等には並んでいません。掲載データを都道府県で切ると、件数の集まり方と提示年収の水準はまったく別の動き方をします。この記事では、当社の掲載求人データを使い、採用担当者が求人票の条件設定を見直すときに何と比べればよいかを整理します。
この集計の範囲を先に確認する
数字を読む前に、母集団を確認します。範囲を取り違えると、社内の説明がそのまま誤りになります。
- 集計対象:建設タレントサーチに掲載中の求人のうち、年収が明示されているもの
- 件数(n):2668件
- 基準日:2026年9月8日
- 「年収下限の中央値」:各求人が示す年収レンジの下限値を集め、その中央値をとった値です。平均値ではありません。
次の点は、この集計では分かりません。先に線を引いておきます。
- 応募数、面接数、実際に決まった年収は含みません。
- 採用予定人数ではありません。1件の求人が何名の採用枠かは区別していません。
- 公的統計の求人倍率とは別の数字です。地域の求人需要そのものを表すものではありません。
- 年収を明示していない求人は対象外です。したがって「年収を出している求人の分布」として読む必要があります。
都道府県別の掲載件数と構成比
上位8都道府県は次のとおりです。
| 順位 | 都道府県 | 掲載件数 | 構成比 | 年収下限の中央値 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 東京都 | 880件 | 33.0% | 500万円 |
| 2 | 大阪府 | 416件 | 15.6% | 500万円 |
| 3 | 愛知県 | 388件 | 14.5% | 500万円 |
| 4 | 北海道 | 297件 | 11.1% | 450万円 |
| 5 | 福岡県 | 198件 | 7.4% | 500万円 |
| 6 | 神奈川県 | 187件 | 7.0% | 450万円 |
| 7 | 千葉県 | 152件 | 5.7% | 500万円 |
| 8 | 兵庫県 | 150件 | 5.6% | 420万円 |
※構成比は集計対象2668件に対する割合です。上位8都道府県の件数を合計すると2668件となり、集計対象の全体と一致します。つまりこの集計は、あくまで上記8都道府県の掲載求人を対象にしたものとして読んでください。ここに出ていない都道府県について、本記事から言えることはありません。
データから読み取れること
東京都に3分の1、三大都市圏で6割を超える
東京都が880件で33.0%を占めます。大阪府(15.6%)と愛知県(14.5%)を足すと1684件、構成比では63.1%になります。年収を明示した掲載求人の6割超が、この3都府県に集まっている形です。
採用側から見ると、これは「候補者が同時に見ている求人の数」を意味します。東京都で1件を出すと、同じ都道府県の他の求人と並べて比較されます。求人票の内容がほぼ同じであれば、選ばれる理由が残りません。件数の多い地域では、条件の水準合わせだけでなく、他社と違う点を1つ以上書く必要が出てきます。
北海道が4位に入り、神奈川県・千葉県を上回る
北海道は297件で11.1%、神奈川県(187件、7.0%)と千葉県(152件、5.7%)を上回ります。人口規模の順番とは一致しません。この集計だけでは理由は特定できませんが、少なくとも「大都市圏以外は求人が少ない」という前提で採用計画を立てると、実態とずれる可能性があります。
地方拠点の採用を後回しにしている場合は、自社の対象地域が上位に入っていないかを一度確認してください。件数が多い地域は、候補者が集まりやすい面と、比較されやすい面の両方があります。
年収下限の中央値の幅は80万円にとどまる
件数の差は大きく、最多の東京都(880件)と8位の兵庫県(150件)で約5.9倍です。一方、年収下限の中央値は最も高い500万円と最も低い420万円で、差は80万円です。掲載件数の多さが、そのまま提示年収の高さに結びついているわけではありません。
この集計では、東京都・大阪府・愛知県・福岡県・千葉県の5つが500万円で並びます。つまり「都市部だから高い」という単純な整理はできません。逆に言えば、地方拠点であっても年収下限が中央値を大きく下回ると、掲載求人全体の中では低い側に位置づく可能性があります。
隣り合う都府県の差は、通勤圏の中で比較される
東京都(500万円)と神奈川県(450万円)で50万円、大阪府(500万円)と兵庫県(420万円)で80万円の差があります。これらは同じ通勤圏に含まれる地域です。候補者が勤務地をまたいで求人を見ている場合、この差はそのまま比較材料になります。
ただし、差の理由はこの集計からは分かりません。職種の構成、企業規模、経験年数の要件などは区別していないためです。「隣県より低い」ことを問題にする前に、自社の求人がどの職種・どの経験層を対象にしているかを整理してください。
求人票の見直し手順
以下は、この集計を実務に落とすときの順番です。担当と期限の目安も入れています。社内の様式にあわせて使ってください。
- 自社の主要勤務地が上位8都道府県のどこに当たるかを確認します(担当:採用担当。求人作成の着手時)。
- 該当する都道府県の年収下限の中央値を、自社求人の年収下限と並べて書き出します(担当:人事。求人公開の2週間前まで)。
- 自社の下限が中央値を下回る場合、対応を3つの選択肢から選びます(担当:人事と採用部門の責任者。公開の1週間前まで)。
- 下限額を引き上げる
- 下限を据え置き、経験年数や資格の要件を下げて対象を広げる
- 年収以外の条件(休日日数、直行直帰の可否、転勤の有無など)を具体的に書き足す
- 勤務地の表記の粒度を決めます。転勤や出張の範囲を、都道府県単位で明記します(担当:採用担当。公開前)。
- 公開から4週間後に応募数を確認します。このとき比較の基準は全国平均ではなく、同じ都道府県の中央値です(担当:採用担当)。
- 経営会議へは「対象都道府県/自社の年収下限/該当地域の中央値/応募数」の4項目を1枚にまとめて出します(担当:人事責任者。四半期ごと)。
よくあるつまずき
| つまずき | 何が起きるか | 対応 |
|---|---|---|
| 全国平均と比べてしまう | 地域差が消え、対象地域では低い条件のまま公開される | 該当する都道府県の中央値と比べます |
| 年収の上限額で比較する | この集計は下限の中央値です。上限で比べると条件が良く見えてしまいます | 比較は下限どうしで行います |
| 件数が多い地域は採用しやすいと考える | 母集団が大きいほど比較対象も多く、応募が分散します | 件数の多い地域では差別化点を明記します |
| 中央値に合わせて終わりにする | 中央値は真ん中の水準です。合わせても選ばれる理由にはなりません | 休日、移動、評価制度など年収以外の条件を書きます |
| 隣接する都府県を無関係とみなす | 通勤圏の候補者が他県の求人と比較します | 東京都と神奈川県、大阪府と兵庫県は併せて確認します |
| 上位8都道府県以外を同じ傾向とみなす | 本集計には含まれていないため、根拠がありません | その地域については別途データを確認します |
この集計では答えられない問い
社内から次のような質問が出たときは、このデータでは答えられません。分からないと伝えたうえで、別の材料を用意してください。
- 職種別(施工管理、設計、積算、設備など)の内訳はどうなっているか
- 応募がどの地域に多く集まっているか
- 経験年数や資格の要件によって年収下限がどう変わるか
- 上位8都道府県以外の掲載状況はどうか
- 前年と比べて件数や年収が動いているか
いずれも、集計の切り口を変えないと出てきません。判断が必要な場面では、必要な区分を決めてから集計を依頼するほうが早く進みます。件数が少ない区分で割合を出すと、数件の増減で数字が大きく動きます。区分を細かくするときは、必ず件数(n)を併記してください。
社内で共有するときの4行
会議資料の1枚目に置く形にすると、議論が条件設定に向かいます。
- 対象:年収を明示した掲載求人2668件(2026年9月8日基準)
- 分布:東京都33.0%、大阪府15.6%、愛知県14.5%。上位3都府県で63.1%
- 年収下限の中央値:420万円から500万円の範囲。件数の多い地域が必ず高いわけではない
- 自社の位置:対象地域の中央値に対し、自社の年収下限は上か下か
なお、賃金水準の決定は就業規則や賃金規程、地域別最低賃金など複数の制度と関係します。掲載求人の分布は判断材料の1つにすぎません。制度の変更を伴う場合は、公表資料で要件を確認し、個別の事案は社会保険労務士などの専門家に相談してください。
出典
- 建設タレントサーチ 掲載求人データ
本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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