#労務・法改正2026.09.11 公開読了 約9建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

育児・介護休業法の改正で加わった事業主の義務

育児・介護休業法の改正で、子の看護等休暇の拡大、所定外労働の制限の対象拡大、介護に直面した労働者への個別周知、柔軟な働き方を実現するための措置などが事業主の義務になりました。施行時期ごとに、何を・いつまでに・誰がやるのかを表と手順で整理します。

施行日
2025.10.01
情報の基準日
2026.09.10
労務・法改正

育児・介護休業法の改正で加わった事業主の義務

人事ノート

育児・介護休業法の改正により、事業主が講じなければならない措置が段階的に増えました。就業規則の条文を足すだけでは足りず、対象者を洗い出す作業、個別に説明する場面、記録を残す仕組みまで含めて整えないと、運用が止まります。ここでは施行時期ごとに義務を並べ替え、建設業の現場運用でつまずきやすい点まで書きます。

個別の事案でどこまで対応が必要かは、労働者の事情や自社の制度設計によって変わります。判断に迷う場合は、社会保険労務士や労働局へ相談してください。

改正で加わった義務の全体像

まず、何が「義務」で、何が「努力義務」かを分けて把握します。義務は違反すれば行政指導の対象になり得ますが、努力義務は方向性を示すものです。社内説明のときにここを混ぜると、現場から「やらなくてよいのでは」という反発が出ます。

施行時期内容区分
2025年4月1日子の看護休暇を子の看護等休暇に見直し(対象の子の範囲・取得事由の拡大、労使協定除外の一部廃止)義務
2025年4月1日所定外労働の制限(残業免除)の対象を小学校就学前の子を養育する労働者まで拡大義務
2025年4月1日介護休暇の労使協定除外の一部廃止義務
2025年4月1日介護に直面した旨の申出をした労働者への個別の周知・意向確認義務
2025年4月1日介護に直面する前の早期の情報提供義務
2025年4月1日介護の両立支援に関する雇用環境の整備義務
2025年4月1日育児休業取得状況の公表義務の対象を常時雇用する労働者数300人超の事業主まで拡大義務
2025年4月1日育児・介護のためのテレワーク導入努力義務
2025年10月1日柔軟な働き方を実現するための措置と、その個別の周知・意向確認義務
2025年10月1日仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と配慮義務

人事の作業としては、2025年4月分は「規程の書き換えと対象者の洗い出し」、2025年10月分は「制度の選択と面談運用の設計」が中心になります。性質が違うので、担当と期限を分けて管理します。

2025年4月からの義務を実務に落とす

子の看護等休暇の見直し

名称が「子の看護等休暇」に変わり、対象と取得事由が広がりました。改正前の規程のままだと、法を下回る取扱いになります。

項目改正前改正後
対象となる子小学校就学前小学校第3学年修了まで
主な取得事由負傷・疾病の世話、予防接種、健康診断左記に加え、感染症に伴う学級閉鎖等、入園式・入学式・卒園式などの行事参加
労使協定による除外継続雇用期間6か月未満、週の所定労働日数2日以下週の所定労働日数2日以下のみ(6か月未満の除外は廃止)
日数年5日(子が2人以上は10日)変更なし

実務でまず起きるのは、入社間もない社員からの申出です。継続雇用期間6か月未満を労使協定で除外していた会社は、その扱いができなくなりました。労使協定の条文と、入社時に配る制度案内を同時に直してください。

所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大

残業を免除する請求ができる労働者の範囲が、3歳未満の子を養育する労働者から、小学校就学前の子を養育する労働者まで広がりました。施工管理や現場代理人のように所定外労働が生じやすい職種では、請求があった時点で工程と配置の見直しが必要になります。「請求されてから考える」では間に合わないため、対象年齢の子を持つ社員のリストを先に作っておきます。

介護の個別周知・意向確認と早期の情報提供

介護は、育児と違って会社が事前に把握しにくい点が特徴です。改正では、会社から働きかける場面が二つ定められました。

場面対象会社がすること
労働者が介護に直面した旨を申し出たとき申し出た労働者介護休業・介護両立支援制度等について個別に周知し、利用の意向を確認する
介護に直面する前の早期の段階40歳前後の一定の時期にある労働者制度に関する情報を提供する

周知する内容は、介護休業・介護両立支援制度等の内容、申出先、介護休業給付に関することなどです。方法は、面談、書面の交付、労働者が希望する場合の電子メールなどによります。意向確認は「聞いた」だけでは足りず、確認した事実を残す必要があります。早期の情報提供の対象となる時期は年齢を基準に定められているため、正確な範囲は公表資料で確認してください。

雇用環境の整備は、研修の実施、相談窓口の設置、自社の取得事例の収集と提供、制度利用促進に関する方針の周知のいずれかを講じます。建設業では、支店・営業所ごとに窓口担当を決め、誰に相談すればよいかを掲示するところから始めると定着しやすくなります。

育児休業取得状況の公表義務

常時雇用する労働者数が300人を超える事業主は、育児休業等の取得状況を年1回公表する義務があります。公表する内容は、男性労働者の育児休業等の取得割合、または育児休業等と育児目的休暇の取得割合です。一般の人が閲覧できる方法で公表する必要があるため、自社の採用ページや情報公表の枠組みを使うことになります。公表期限や算定方法は細かく定められているので、初回の公表前に公表資料で確認してください。

2025年10月からの柔軟な働き方を実現するための措置

5つの選択肢から2つ以上を選ぶ

3歳から小学校就学前の子を養育する労働者について、事業主は次の5つのうち2つ以上を制度として整え、労働者はその中から1つを選んで利用します。制度を選ぶときは、過半数労働組合または過半数代表者の意見を聴く必要があります。

措置内容の目安建設業での使いやすさ
始業時刻等の変更フレックスタイム制、または時差出勤朝礼時刻に合わせた時差出勤は導入しやすい
テレワーク等月10日以上利用できるもの。時間単位でも可現場常駐者には難しいが、書類作成日の在宅なら組める
保育施設の設置運営等施設の設置運営、ベビーシッター費用の補助など設置は負担が大きい。費用補助型なら検討余地がある
養育両立支援休暇年10日以上の休暇。時間単位でも可現場の代替要員を確保できるかが分かれ目
短時間勤務制度所定労働時間を短縮する制度内勤・積算・設計との組み合わせで運用しやすい

2つ以上と定められているため、現場職と内勤職で使える措置が偏らないように選ぶことが実務上の勘所です。テレワークと保育費用補助の2つにすると、現場常駐の技術者が実質的に何も使えない、という事態が起こります。

個別の周知・意向確認

措置を用意するだけでは足りません。対象となる子を養育する労働者に対し、制度の内容と申出先を個別に周知し、利用の意向を確認する義務があります。時期は、子が3歳になる前の一定期間と定められています。おおよそ子が2歳になる前後から3歳の誕生日の1か月前までの間ですが、正確な期間は省令で定められているため、公表資料で確認してください。

あわせて、この措置を選択・利用しやすくするための雇用環境の整備(研修、相談窓口、事例の収集と提供、方針の周知のいずれか)も求められます。

仕事と育児の両立に関する意向聴取と配慮

個別の意向聴取と、その意向への配慮も義務になりました。聴取する場面は、本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があったときと、子が3歳になる前の一定期間です。聴取する事項は、勤務時間帯、勤務地、両立支援制度の利用期間、業務量や配置などに関する意向です。

配慮の義務は「意向どおりにする義務」ではありません。ただし、聴取して終わりでは配慮したことになりません。配置転換の検討、業務量の調整、制度利用期間の見直しなど、検討した内容と結論を記録に残してください。

社内で整える手順

  1. 現行の育児・介護休業規程と労使協定を並べ、改正内容と突き合わせる。廃止された除外規定が残っていないかを最初に確認する。
  2. 対象者を洗い出す。小学校第3学年までの子、小学校就学前の子、3歳から小学校就学前の子、40歳前後の社員を、名簿から抽出する。
  3. 柔軟な働き方を実現するための措置を2つ以上選び、過半数代表者の意見を聴く。意見聴取の書面を残す。
  4. 規程を改定し、就業規則の変更届と意見書を労働基準監督署へ届け出る。労使協定を締結し直す。
  5. 個別周知・意向確認・意向聴取の様式を作る。周知した日、方法、確認した意向、会社の対応を1枚に収める形にする。
  6. 支店長・工事部長・現場代理人に向けて説明会を行う。申出を受けた管理職が人事へつなぐ手順を決める。
  7. 社内掲示と入社時案内を差し替える。相談窓口の担当者名と連絡先を明記する。
  8. 公表義務の対象になる場合は、公表する数値の算定方法と公表場所を決め、事業年度終了後の作業として年間予定に入れる。

担当は、1から4を人事、5と6を人事と工事部門の合同、7を総務、8を人事と広報の担当に割り振ると滞りにくくなります。

よくあるつまずき

  • 規程は直したが労使協定を直していない。 継続雇用期間6か月未満を除外する条項が労使協定に残ったままだと、申出を誤って断る事故が起きます。
  • 対象者リストが古い。 子の年齢は毎年変わります。年度初めに再抽出する運用にしないと、個別周知の時期を逃します。
  • 意向確認の記録がない。 現場で口頭のやり取りだけで済ませると、後から確認できません。様式を決めて人事へ回す流れを作ってください。
  • 管理職が制度を知らない。 最初に申出を受けるのは直属の上司です。上司が「うちの現場では無理だ」と答えた時点で、会社としての対応が止まります。
  • 措置の選び方が内勤寄りに偏っている。 テレワークだけを厚くすると、現場常駐の技術者が使える制度が実質ゼロになります。
  • 時間単位取得の勤怠管理ができていない。 子の看護等休暇や養育両立支援休暇を時間単位で扱う場合、勤怠システムの設定変更が必要です。改定日までに間に合わせてください。
  • 配置と専任の要件を見落とす。 監理技術者・主任技術者として専任が求められる現場では、短時間勤務や休暇の運用が配置要件に影響しないかを、工事部門と事前に確認する必要があります。

よくある質問

Q. 柔軟な働き方を実現するための措置は、現場ごとに違う内容にしてもよいですか。

措置は事業主として選択し、対象となる労働者が申し出れば利用できる状態にしておく必要があります。現場の事情で実質的に利用できない措置ばかりを選ぶと、義務を果たしたことになりにくいと考えられます。現場常駐の技術者でも使える措置を最低1つは含める形で設計し、判断に迷う場合は労働局へ確認してください。

Q. 意向を聴取しましたが、工期の都合でその通りにできません。違反になりますか。

法が求めているのは意向への配慮であって、意向のとおりに措置することまでは求められていません。ただし、検討もせずに断ると配慮したとは言えません。代替案を示したか、いつまでなら対応できるかを説明したか、といった過程を記録に残してください。

Q. 常時雇用する労働者数300人超の判定は、現場の一人親方や下請の職人を含めますか。

判定はあくまで自社が雇用する労働者を対象に行います。請負契約に基づいて働く一人親方や、下請会社に雇用されている労働者は、自社の労働者数には含まれません。ただし、雇用契約か請負契約かの区別が実態と合っていない場合は判断が変わり得るため、契約形態を整理したうえで、算定方法は公表資料で確認してください。

Q. 子の看護等休暇や養育両立支援休暇は、有給にする必要がありますか。

法律上、これらの休暇を有給とすることまでは求められていません。無給とする場合は、その旨を規程に明記し、申出時にも説明してください。なお、有給とするかどうかは採用時の訴求にも影響するため、助成金の要件と合わせて検討している会社もあります。要件は公表資料で確認してください。

Q. 介護に直面したと申し出た社員に、家族の状況をどこまで聞いてよいですか。

個別の周知・意向確認に必要な範囲にとどめてください。要介護状態にある家族がいるかどうか、いつから支援が必要かといった、制度の適用判断に必要な事項が中心になります。病名や家族関係の詳細まで踏み込む必要はなく、聞き取った情報は健康情報等に準じて管理し、共有範囲を限定してください。

出典

  • 育児・介護休業法

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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