#労務・法改正2026.09.16 公開読了 約11建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

女性活躍推進法で公表する情報と社内手順

女性活躍推進法は、一定規模以上の事業主に行動計画の策定と情報の公表を求めています。自社が義務の対象かの判定、公表する項目の選び方、届出と公表の順序、更新のタイミングまでを、建設・不動産会社の実務の流れに並べて整理します。社内の分担表と年間スケジュールも示します。

情報の基準日
2026.09.15
労務・法改正

女性活躍推進法で公表する情報と社内手順

人事ノート

女性活躍推進法は、事業主に対して「自社の女性の活躍状況を把握して課題を分析すること」「行動計画を作って届け出ること」「決められた情報を外部に公表すること」を求めています。建設・不動産会社では、技術職に女性が少ない、雇用管理区分が複雑、現場の労働時間が把握しづらい、といった理由で作業が止まりがちです。

この記事では、条文と公表資料に書かれている枠組みを、実務で動かす順序に並べ替えて説明します。なお、この法律は改正が重ねられており、義務の対象となる企業規模や公表項目は見直されることがあります。自社に適用される内容は、最新の条文と所管省庁の公表資料で必ず確認してください。

まず自社が義務の対象かを確定する

最初にやることは、法律論ではなく人数の確定です。ここを外すと、以降の作業がすべて無駄になります。

「常時雇用する労働者」の数え方

女性活躍推進法でいう「常時雇用する労働者」は、正社員だけを指すものではありません。おおむね次のような考え方で数えます。

  • 期間の定めなく雇用されている人は含みます。
  • 有期契約でも、一定期間にわたり継続して雇用されている人、または継続して雇用されることが見込まれる人は含みます。
  • パートタイムやアルバイトも、上の条件に当てはまれば含みます。
  • 派遣で受け入れている人は、原則として派遣元の事業主が数えます。

建設会社でよくある誤りは、本社の正社員だけを数えて「100人以下だから対象外」と判断してしまうことです。支店・営業所・作業所に在籍する人、直用の技能者、長く更新している契約社員、事務のパートを含めると人数が変わることがあります。数えるのは企業単位(法人単位)であり、現場単位でも事業所単位でもありません。

規模ごとの義務の整理

規模の区分行動計画の策定・社内周知・外部公表労働局への届出情報の公表
常時雇用する労働者が101人以上義務義務義務
常時雇用する労働者が100人以下努力義務努力義務努力義務

規模が大きい事業主には、公表する項目の数が増えるなど、上乗せの義務が課されます。どの規模でどこまで求められるかは改正で見直されるため、自社の区分は公表資料で確認してください。100人以下でも努力義務はありますので、「対象外だから何もしない」ではなく「今期はここまでやる」と決めておくと、規模が増えたときに慌てずに済みます。

状況把握と課題分析を先に行う

行動計画は、いきなり文章を書くものではありません。自社の数値を把握し、課題を見つけてから作ります。

把握すべき項目には、必ず確認する「基礎項目」と、課題に応じて確認する「選択項目」があります。基礎項目は、採用した労働者に占める女性の割合、男女の平均継続勤務年数の差異、労働時間の状況、管理職に占める女性の割合、という四つの柱で構成されています。項目の正式な名称と算出の定義は公表資料で確認してください。

建設会社で数値を出すときの注意点は次のとおりです。

  • 雇用管理区分ごとに出す:総合職と一般職、技術職と事務職、正社員と有期契約など、募集・採用・配置・処遇の実態が異なる区分ごとに分けて集計します。全社を一つにまとめると、女性が事務に偏っている実態が数値に出ず、課題分析になりません。
  • 労働時間は現場の実態で出す:勤怠システムの打刻だけでなく、直行直帰や移動の扱いをそろえてから集計します。ここが甘いと、行動計画の目標も甘くなります。
  • 母数が小さいことを前提にする:女性技術者が数人しかいない会社では、1人の入退社で比率が大きく動きます。比率だけでなく実数も併記して、社内では実数で議論します。

行動計画に必ず入れる四つの要素

一般事業主行動計画には、次の四つを定めます。

  1. 計画期間:おおむね2年から5年の範囲で、自社の事業年度に合わせて設定します。
  2. 数値目標:一つ以上の定量的な目標を設定します。「女性が働きやすい職場を目指す」のような目標だけでは要件を満たしません。
  3. 取組内容:目標に到達するために何をするかを書きます。
  4. 取組の実施時期:取組ごとに、いつ着手していつまでに行うかを書きます。

数値目標は、課題分析で見つけた弱点に対応させます。建設会社であれば、技術職の新卒・中途採用に占める女性の割合、女性の平均勤続年数、係長級以上に占める女性の割合、男性の育児休業取得率、時間外労働の月平均時間などが候補になります。現実に届く水準に設定し、達成できなかったときの説明ができるようにしておきます。

策定から公表までの手順

順序を間違えると、届出だけ済ませて公表を忘れる、という典型的な漏れが起きます。次の順で進めます。

  1. 人数の確定:直近の在籍者名簿から、企業単位で常時雇用する労働者の数を確定します。
  2. 雇用管理区分の設定:集計の切り口を決めます。ここは総務任せにせず、人事と現場管理部門で合意します。
  3. 状況把握と課題分析:基礎項目を算出し、課題を二つから三つに絞ります。
  4. 行動計画の作成:計画期間・数値目標・取組内容・実施時期を書き込みます。
  5. 社内周知:全労働者に知らせます。掲示、社内ネットワークへの掲載、書面の交付などの方法を記録に残します。パートや現場常駐者にも届く方法を選びます。
  6. 外部公表:求職者を含む外部の人が閲覧できる形で公表します。
  7. 労働局への届出:本社所在地を管轄する都道府県労働局へ届け出ます。
  8. 情報の公表:行動計画とは別に、定められた区分から項目を選んで公表します。
  9. 計画期間中の点検:少なくとも年に1回、数値の推移を確認し、必要なら取組を入れ替えます。
  10. 次期計画の作成:計画期間が終わる前に次の計画を準備します。期間満了で放置すると義務違反の状態になります。

社内周知と外部公表は別の作業です。イントラネットに載せただけでは外部公表になりませんし、自社サイトに載せただけでは社内周知の証跡になりません。両方を実施し、実施日を記録します。

公表する情報の区分と項目

情報公表は、行動計画の公表とは別の義務です。公表項目は大きく二つの区分に分かれています。

区分何を見せる区分か項目の例
女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供採用・登用・配置の機会が男女で開かれているか採用した労働者に占める女性の割合、男女別の採用競争倍率、労働者に占める女性の割合、係長級にある者に占める女性の割合、管理職に占める女性の割合、役員に占める女性の割合、男女別の職種または雇用形態の転換実績、男女別の中途採用・再雇用の実績
職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備働き続けられる環境が整っているか男女の平均継続勤務年数の差異、男女別の育児休業取得率、月平均の時間外労働時間、年次有給休暇の取得率

上の表の項目名は代表的なものです。正式な項目名と、雇用管理区分ごとに出すかどうかの扱いは、公表資料の一覧で確認してください。項目によっては全社の数値と区分ごとの数値の両方が必要になります。

項目の選び方

義務として求められる数だけを選べば足りますが、選び方には考え方があります。

  • 採用で見られる項目を優先する:求職者は、女性比率よりも「続けられるか」を見ます。平均継続勤務年数の差異、育児休業取得率、時間外労働時間は、建設業では関心が高い項目です。
  • 数値が悪い項目を避けない:数値が低い項目を隠しても、面接で必ず聞かれます。公表と同じ画面に、行動計画の取組内容を並べておくと説明がつながります。
  • 翌年以降も出し続けられる項目にする:一度公表した項目を翌年に差し替えると、比較できなくなり、かえって不信を招きます。

男女の賃金の差異の扱い

男女の賃金の差異は、一定規模以上の事業主に公表が義務づけられている項目です。義務の対象となる規模は改正により見直されているため、自社が対象かどうかは最新の公表資料で確認してください。

実務上の要点は次のとおりです。

  • 男性の賃金に対する女性の賃金の割合を、全労働者、正規雇用労働者、非正規雇用労働者に分けて示す形が基本です。
  • 事業年度が終わってから一定の期間内に公表します。決算作業と重なるため、賃金データの抽出は事業年度末の時点で準備を始めます。
  • 賃金に何を含めるか、除外できる手当があるかは、算出方法の定めに従います。ここは会社ごとの解釈で決めず、様式と留意事項を確認してください。
  • 差異が生じた理由を説明する欄を活用できます。建設会社では、技術職に男性が多く事務職に女性が多いといった職種構成の違いが差異の主因になることがあります。数値だけを出すより、構成の説明を添えたほうが誤解が減ります。

公表の方法と更新

公表は、求職者を含む一般の人が容易に閲覧できる方法で行います。自社のウェブサイトに専用のページを設ける方法と、厚生労働省が運営する女性の活躍推進企業データベースに掲載する方法が代表的です。どちらか一方でも、両方でもかまいません。

運用で押さえる点は三つです。

  • 時点を明記する:「いつ時点の数値か」「どの事業年度の実績か」を必ず書きます。時点の記載がないと、古い数値のまま放置されているように見えます。
  • 年1回は更新する:事業年度の区切りに合わせて更新日を固定します。更新の担当者と期限を人事の年間予定に入れます。
  • 求人票との整合を取る:公表した時間外労働時間と、求人票に書いた時間外労働の目安が食い違うと、応募者から指摘を受けます。公表を更新したら、求人票の記載も見直します。

年間スケジュールと社内の分担

事業年度が4月から3月の会社を想定した例です。自社の事業年度に合わせて読み替えてください。

時期作業主担当期限の考え方
事業年度末の1か月前人数の確定、集計対象者リストの作成人事年度末時点で締められる状態にする
事業年度末直後採用・登用・勤続・育児休業・労働時間の集計人事と給与担当給与の年度締めと同時に進める
事業年度終了後すぐ賃金データの抽出と差異の算出給与担当決算作業と並行するため早めに着手
集計後課題分析、行動計画の見直しまたは次期計画の作成人事と経営層取締役会や経営会議の議題に載せる
計画作成後社内周知、外部公表、労働局への届出人事周知・公表・届出の実施日を記録
公表後求人票・採用ページの記載を更新採用担当公表値と求人票を一致させる
計画期間の途中数値の中間確認人事半期に1回が目安

担当を一人に寄せると、その人が異動した年に止まります。集計、計画作成、届出、公表更新の四つを別々の担当に割り振り、手順書を残しておくと引き継ぎが楽になります。

よくあるつまずき

  • 人数のカウント漏れ:パートや長期の有期契約者を数えず、義務の対象なのに何もしていない状態が続いている。労働局から指摘を受けて初めて気づく例があります。
  • 計画期間が切れている:数年前に作った計画のまま、期間満了後に次の計画を作っていない。公表ページの計画期間の日付を確認してください。
  • 社内周知の証跡がない:公表はしたが、社内にどう知らせたかの記録がない。掲示の写真、配信メールの控え、朝礼で配った資料などを残します。
  • 雇用管理区分の設定が実態と合っていない:全社を一区分にしてしまい、課題が見えない。逆に細かく分けすぎて、母数が1人や2人になり公表に耐えない。区分の粒度は毎年見直します。
  • 公表値と実態の食い違い:時間外労働の公表値が、現場の実感とかけ離れている。数値の出どころ(勤怠システムか、給与計算の残業時間か)を統一します。
  • 数値目標が定量になっていない:「女性が活躍できる環境づくりを進める」だけでは要件を満たしません。必ず数値を入れます。
  • 更新の担当が決まっていない:初年度は丁寧に作ったが、翌年以降は誰も触らない。年間予定表に組み込むことで防げます。

公表を採用と処遇につなげる

公表は義務への対応ですが、そこで終わらせると社内の負担だけが残ります。次の三つに接続すると、投じた工数が回収できます。

一つ目は、採用広報です。女性技術者の応募が少ない会社ほど、育児休業の取得実績、時間外労働の推移、勤続年数といった数値を出すことが効きます。比率が低くても、改善の方向と取組を並べて示せば、判断材料になります。

二つ目は、認定制度です。女性活躍推進法には、一定の基準を満たした事業主に対する認定の仕組み(えるぼし認定、より高い水準のプラチナえるぼし認定)があります。認定の評価項目は、採用、継続就業、労働時間等の働き方、管理職比率、多様なキャリアコースといった観点で構成されています。認定の要件と申請方法は公表資料で確認してください。認定マークは求人票や会社案内に使えます。

三つ目は、公共工事の受注です。発注機関によっては、総合評価方式の中で女性活躍に関する認定を評価する扱いがあります。ただし、評価の有無と配点は発注機関ごとに異なります。自社が入札に参加する機関の公表資料で確認してください。

個別の事案で義務の有無や算出方法に迷うときは、管轄の都道府県労働局や社会保険労務士に相談してください。

よくある質問

Q. 期の途中で人数が101人を超えたら、いつまでに行動計画を作ればよいですか

義務は、常時雇用する労働者の数が基準を超えた時点で生じます。超えた月からすぐに集計と計画作成に着手し、社内周知・外部公表・労働局への届出まで進めてください。期の途中で超えた場合の具体的な取扱いや期限の考え方は、管轄の都道府県労働局に確認すると確実です。人数の増減が見込まれる会社は、四半期ごとに在籍者数を確認する運用にしておくと、超えた時点で気づけます。

Q. グループ会社が複数ある場合、まとめて一つの行動計画を作ってもよいですか

行動計画の策定義務は、法人ごとに判断するのが原則です。したがって、各社がそれぞれの人数で義務の有無を判定し、それぞれ計画を作って届け出る形になります。グループ共通の方針を掲げること自体は差し支えありませんが、計画期間や数値目標は各社の実態に合わせる必要があります。持株会社や出向者が多い構成では判断が分かれることがあるため、公表資料と労働局への確認をおすすめします。

Q. 女性の技術者が1人しかいません。それでも比率を公表しなければいけませんか

公表項目として選んだ以上は、数値が小さくても公表することになります。ただし、どの項目を選ぶかには幅がありますので、母数が極端に小さい項目ではなく、勤続年数や育児休業取得率、時間外労働時間など自社の実態が伝わる項目を選ぶ方法があります。あわせて、行動計画の数値目標と取組を同じ場所に掲げ、今後どう増やすかを示してください。数値を隠すより、現状と計画をセットで出したほうが採用では説明しやすくなります。

Q. 情報公表の項目を毎年変えてもよいですか

定められた区分と数を満たしていれば、項目の入れ替え自体が直ちに問題になるわけではありません。ただし、前年と違う項目に差し替えると推移が追えなくなり、求職者や取引先から改善を隠していると受け取られることがあります。原則として同じ項目を継続して公表し、追加したい項目があるときは差し替えではなく追加で対応するのが無難です。

Q. 行動計画を届け出ていない場合、罰則はありますか

女性活躍推進法には、報告を求められたのに応じない場合や虚偽の報告をした場合の過料の定めが置かれています。また、義務を果たしていない事業主に対しては、助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合には企業名が公表されることがあります。適用される条文と具体的な取扱いは、最新の条文と公表資料で確認してください。未対応が判明した場合は、放置せず速やかに集計から着手することをおすすめします。

出典

  • 女性活躍推進法

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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