#労務・法改正2026.10.11 公開読了 約8分建設タレントサーチ 人事ノート 編集部

社会保険の加入要件と短時間労働者の判定手順

週の所定労働時間が短い人を社会保険に入れるかどうかは、事業所の区分、4分の3基準、短時間労働者の要件の順に見ていきます。建設業で迷いやすい日雇い、2か月以内の契約、季節的業務の扱いまで、判定の順序と社内手順を表で整理します。

施行日
2024.10.01
情報の基準日
2026.10.10
労務・法改正

社会保険の加入要件と短時間労働者の判定手順

人事ノート

短時間で働く人を社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させるかどうかは、採用の現場で最も問い合わせが多い論点の一つです。判断がぶれる原因は、見るべき条件が「事業所の区分」「本人の働き方」「企業の規模」と複数の層に分かれていることにあります。ここでは判定の順序を固定し、建設業で起きやすい雇用形態まで落として整理します。

判定は3つの層を順番に見る

加入の可否は、次の順で確かめると迷いません。順番を飛ばすと、本来は加入対象の人を漏らしたり、逆に対象外の人に手続きを進めたりします。

層確かめること結論
第1層その事業所が適用事業所か適用事業所でなければ、そもそも被保険者は生じません
第2層本人の所定労働時間・日数が通常の労働者の4分の3以上か4分の3以上なら、原則として加入します
第3層4分の3未満の人が短時間労働者の要件を満たすか要件をすべて満たせば加入します

あわせて、期間や業務の性質による適用除外に当たらないかも確認します。これは第2層・第3層のどちらにも関わります。

第1層 事業所が適用事業所かを確かめる

法人の事業所は、従業員が1人でも強制適用の対象です。代表者1人の法人も含みます。個人事業所は、常時使用する従業員の人数と業種によって扱いが変わります。建設業は適用業種に含まれますので、常時使用する従業員が一定人数以上であれば強制適用になります。人数の基準は健康保険法の規定で確認してください。

実務では、本社と現場事務所、営業所を別々の事業所として届け出ているかどうかで、後述する企業規模の数え方や届出先が変わります。まず自社の適用事業所の単位を整理しておきます。

第2層 4分の3基準で原則を判断する

同じ事業所で同種の業務に従事する通常の労働者と比べて、

  1. 1週間の所定労働時間が4分の3以上
  2. 1か月の所定労働日数が4分の3以上

のどちらも満たす人は、短時間労働者の要件を見るまでもなく被保険者になります。比較の相手は「その事業所の通常の労働者」です。全社平均ではありません。所定労働時間が週40時間の会社なら、週30時間以上が目安になります。

注意したいのは、実際の残業ではなく所定で判断する点です。契約上は週20時間でも、繁忙期に実態として週35時間働く状態が続いているなら、契約の見直しと加入の要否を同時に検討します。実態が契約と恒常的に乖離している場合は、実態で判断すべき場面があります。個別の判断は年金事務所に確認してください。

第3層 4分の3未満の人の要件

4分の3未満の人は、次の要件をすべて満たすと被保険者になります。一つでも欠ければ対象外です。

要件内容判定でつまずく点
所定労働時間1週間の所定労働時間が20時間以上残業時間は含めません。所定が週20時間ちょうどなら対象です
報酬所定内賃金が月額8万8000円以上残業手当、賞与、通勤手当、精皆勤手当、家族手当などは判定に入れません
雇用期間2か月を超えて使用される見込みがあること契約が2か月以内でも、更新の定めや更新実績があれば当初から対象です
学生でないこと学校教育法に定める学生でないこと夜間・定時制・通信制、休学中、卒業見込みで就労中などは除外されません
企業規模特定適用事業所に使用されていること事業所単位ではなく、同一の法人番号の企業単位で数えます

企業規模の要件は、2024年10月1日から、厚生年金保険の被保険者数が常時51人以上の企業に拡大されています。数えるのは短時間労働者を除いた被保険者の数で、直近12か月のうち6か月で基準を超えた時点で該当します。

なお、企業規模の要件は今後さらに引き下げる方向で制度改正が進められています。適用される人数と時期は年度によって変わりますので、最新の公表資料で確認してください。

規模が小さくても加入させたい場合

特定適用事業所に当たらない企業でも、労使の合意にもとづいて申出をすれば、短時間労働者を社会保険に加入させることができます(任意特定適用事業所)。合意は、働く人の過半数の同意など法令で定められた方法によります。

採用力の観点では、求人票に「社会保険完備」と書けるかどうかが応募数に影響します。短時間勤務の募集を継続的に行う会社は、任意での適用を選択肢に入れて検討する価値があります。ただし、いったん適用すると保険料の事業主負担が恒常的に増えます。人数と年間負担額を試算してから判断してください。

建設業で迷いやすい雇用形態

形態原則の扱い加入が必要になる場合
日々雇い入れられる人適用除外1か月を超えて引き続き使用されたとき、その日から対象
2か月以内の期間を定めた契約適用除外所定の期間を超えて使用される見込みがあるとき、当初から対象
季節的業務に使用される人適用除外当初から継続して4か月を超える予定のとき、当初から対象
臨時的事業の事業所に使用される人適用除外当初から継続して6か月を超える予定のとき、当初から対象
一人親方として請負契約を結んでいる人被保険者ではない指揮命令や時間拘束の実態から労働者と判断される場合は加入の検討が必要

健康保険には、日々雇い入れられる人などを対象とした日雇特例被保険者の仕組みも置かれています。該当するかどうかは健康保険法の規定で確認してください。

一人親方の扱いは、契約の名称ではなく実態で判断されます。現場の指揮命令、作業時間の拘束、資材や工具の負担などを総合して見ます。判断に迷う事案は、労働基準監督署や社会保険労務士に相談してください。

手続は誰が、いつまでに

  1. 採用決定時に、所定労働時間・所定労働日数・契約期間・所定内賃金を労働条件通知書で確定させる(採用担当)
  2. 上記の3つの層にあてはめ、加入の要否を判定する(人事・労務)
  3. 加入する場合は、資格取得の事実が生じた日から5日以内に被保険者資格取得届を提出する(労務)
  4. 被扶養者がいる場合は、同時に被扶養者届を提出する(労務)
  5. 加入しない場合も、判定の根拠を記録に残す(人事)
  6. 契約更新や所定労働時間の変更があるたびに、再判定する(現場の管理者から人事へ連絡)

期限は短いので、入社日が決まった時点で書類の回収を始めます。基礎年金番号やマイナンバーの確認が間に合わず、届出が遅れる例が目立ちます。

よくあるつまずき

  • シフトの実績で判定してしまう。 判定は契約上の所定労働時間です。実績が足りないからといって、所定が週20時間以上の人を外すことはできません。
  • 通勤手当を含めて8万8000円を超えると判断する。 通勤手当や残業手当は報酬要件の判定に入れません。逆に、判定に入らない手当を含めて「超えた」と誤認すると、不要な加入手続きを進めてしまいます。
  • 企業規模を事業所ごとに数える。 規模は企業単位です。支店や現場事務所ごとに分けて数えると、本来は対象の企業が対象外になります。
  • 2か月契約を繰り返して様子を見る。 更新の定めがある、または同様の契約で更新の実績がある場合は、最初の契約時から加入します。更新を待ってから入れると、遡って是正を求められることがあります。
  • 契約変更時の再判定を忘れる。 所定労働時間を週18時間から週22時間に増やした時点で、加入の要否が変わります。契約書の作り直しと届出をひと続きの作業にしてください。
  • 年齢による資格の変化を見落とす。 厚生年金保険と健康保険では資格を失う年齢が異なります。高年齢の技術者を継続雇用する場合は、該当年齢と手続きを公表資料で確認してください。

判定結果を求人票と労働条件通知書に反映する

加入の可否が決まったら、求人票の社会保険欄と労働条件通知書の記載をそろえます。短時間勤務の募集で「社会保険完備」とだけ書き、入社後に「所定労働時間が足りないので加入できません」と説明する流れは、早期離職とトラブルの原因になります。週の所定労働時間ごとに加入の有無が変わる場合は、募集段階で条件を分けて示してください。

よくある質問

Q. 週20時間ちょうどの契約は、加入の対象になりますか

対象になります。要件は「1週間の所定労働時間が20時間以上」ですので、ちょうど20時間の契約は満たします。ただし、ほかの要件(報酬、雇用期間の見込み、学生でないこと、企業規模)もすべて満たす必要があります。週によって所定労働時間が変わる契約の場合は、どの期間で平均するかの考え方が問題になりますので、年金事務所に確認してください。

Q. 掛け持ちで複数の会社に勤めている人は、どちらで加入しますか

それぞれの会社で加入要件を判定します。両方で要件を満たす場合は、どちらの会社も被保険者資格が生じ、本人が主たる事業所を選ぶ届出を行ったうえで、報酬を合算して保険料を按分します。片方だけで要件を満たす場合は、その会社でのみ加入します。他社での労働時間を自社の判定に合算することはありません。

Q. 本人が「手取りが減るので入りたくない」と言った場合、加入を見送れますか

見送れません。社会保険の加入は要件を満たせば法律上当然に生じるもので、本人や会社の意思で選べるものではありません。加入を避けたい意向がある場合は、所定労働時間や契約内容を要件に満たない形に見直すかどうかを、本人と事前に話し合うことになります。要件を満たしたまま届出をしないと、遡って保険料を求められるおそれがあります。

Q. 現場に常駐している下請の作業員が未加入だとわかりました。元請として何をすべきですか

まず、その作業員を雇用しているのは下請事業者ですので、加入義務は当該事業者にあります。元請としては、施工体制台帳や作業員名簿で加入状況を確認し、未加入であれば下請事業者に是正を指導する立場になります。指導の範囲や、未加入の作業員を現場に入れられるかどうかの取扱いは、発注者の定めや公表されている指針によって異なりますので、該当する資料で確認してください。

Q. 日雇いで入ってもらっている人が、1か月を超えて続けて働くことになりました

日々雇い入れられる人は原則として適用除外ですが、1か月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者になります。1か月を超えることが見込まれた時点で契約形態そのものを見直すのが実務上は安全です。届出の期限は短いので、現場の管理者から人事へ就労状況を連絡する流れを決めておいてください。

出典

  • 健康保険法

本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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