特定求職者雇用開発助成金の対象者と受給の流れ
人事ノート特定求職者雇用開発助成金は、就職が特に困難な求職者を、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して支給される制度です。採用の入口で「誰を、どの経路で採用したか」が要件に直結するため、内定を出したあとから制度を調べ始めると間に合わないことがあります。この記事は、対象者の区分、事業主側の要件、紹介から支給申請までの流れを、人事の作業順に並べて整理したものです。
金額や助成対象期間、コースの構成は年度ごとに見直されることがあります。本記事では具体的な支給額は示しません。実際に使う際は、厚生労働省が公表する最新のパンフレットと支給要領、そして管轄の都道府県労働局・ハローワークで必ず確認してください。
この助成金が何に対して支払われるか
先に押さえておきたいのは、この助成金が「採用したこと」ではなく「継続して雇用する労働者として雇い入れ、一定期間雇用を続けたこと」に対して支払われる仕組みだという点です。ここから、実務上の性格が3つ出てきます。
- 支給は後払いです。雇い入れてから一定期間(支給対象期)が経過するごとに申請し、審査を経て支給されます。採用時点の資金繰りには使えません。
- 期間の途中で対象労働者が離職すると、その期は不支給になったり減額されたりします。定着支援まで含めて計画する必要があります。
- 雇い入れの「経路」と「時点」が要件になります。あとから経路を作り直すことはできません。
建設会社では、現場の稼働に合わせて急いで人を入れることが多く、この3点目でつまずく例が目立ちます。採用フローの一部として制度を組み込んでおくことが前提になります。
対象になる人の区分
対象労働者は、ハローワーク等の紹介の時点で就職が特に困難とされる人です。区分は制度上いくつかに分かれており、区分によって助成対象期間や支給額が異なります。
| 区分の例 | 実務上の確認ポイント |
|---|---|
| 高年齢者 | 紹介日時点の年齢で判定します。年齢の区切りと雇用保険の被保険者区分(一般被保険者か高年齢被保険者か)を合わせて確認します |
| 身体障害者・知的障害者・精神障害者 | 障害の種類と程度により区分が細かく分かれます。手帳等による確認が必要です |
| 母子家庭の母、父子家庭の父 | ハローワークが対象者であることを確認したうえで紹介します |
| その他就職が特に困難と認められる者 | 対象範囲は公表資料で定められています。自己判断で拡大しないでください |
重要なのは、対象者に当たるかどうかを会社が判断するのではないということです。紹介の段階でハローワーク等が確認します。したがって、人事が最初にやるべきことは「この人は対象者か」を推測することではなく、求人を出す段階で助成金の活用意向を伝え、紹介の場面で確認してもらうことです。
コースの構成と選び方
この助成金は複数のコースに分かれています。コースは年度によって新設・統合・廃止があるため、その年に使えるコースの一覧は必ず最新のパンフレットで確認してください。代表的な区分の考え方は次のとおりです。
| 分け方 | 内容 |
|---|---|
| 対象者の属性で分かれるコース | 高年齢者や障害者、ひとり親など、就職が特に困難な人を雇い入れる場合 |
| 特定の事情に着目したコース | 生活保護受給者等、被災者など、政策的に重点が置かれている層を雇い入れる場合 |
| 育成・処遇改善と組み合わせるコース | 雇い入れ後の訓練や賃金の引き上げなど、追加の取り組みを条件とする場合 |
同じ人について複数のコースに当てはまるように見えることがありますが、選べるコースは一つに限られるのが通常です。また、他の雇用関係助成金との併給調整もあります。トライアル雇用から常用雇用へ移行させた場合の扱いなど、判断が分かれる場面は事前に労働局へ照会してください。照会の記録(日付、担当部署、回答内容)は残しておきます。
事業主側の要件
対象者の要件を満たしても、会社側の要件を満たさなければ支給されません。雇用関係助成金に共通する要件と、この助成金に固有の要件があります。
共通してかかる要件
- 雇用保険の適用事業所であること。
- 支給申請の根拠となる出勤簿、賃金台帳、労働条件通知書などを整備し、保存していること。
- 労働保険料を滞納していないこと。
- 過去に不正受給をしていないこと。
- 労働関係法令に重大な違反がないこと。
この助成金に固有の主な要件
- ハローワーク、または適正な運営を期すことができる職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること。
- 紹介の時点で、その人が求職者であること。紹介より前に採用が決まっていた場合は対象になりません。
- 継続して雇用する労働者として雇い入れること。雇用保険の被保険者となる働き方であることが前提です。
- 対象労働者の雇入れ日の前後の一定期間に、事業主都合の解雇等をしていないこと。
- 特定受給資格者となる離職を一定割合を超えて発生させていないこと。
解雇等に関する期間の取り方や、離職者数の判定方法は細かく定められています。数字の当てはめは支給要領に沿って行い、判断に迷う場合は労働局に確認してください。
紹介から支給までの流れ
手順として並べると次のようになります。社内の採用フローに、そのまま差し込める形にしています。
- 求人を出す前に、助成金の活用を検討していることを社内で確認します。求人票の労働条件(雇用期間、労働時間、賃金)が、継続雇用の要件と矛盾しないかを見ます。
- ハローワーク等へ求人を提出します。紹介の経路を必ず記録します。自社ホームページからの直接応募や、知人からの紹介で採用した場合は対象になりません。
- 紹介を受け、選考します。選考の前に採用を約束しないでください。
- 採用を決めたら、労働条件通知書を交付し、雇用保険の被保険者資格取得届を期限内に提出します。
- 雇い入れます。ここから支給対象期が始まります。
- 支給対象期(一般に6か月単位)が終わるごとに、支給申請書と添付書類を提出します。申請期間は各支給対象期の末日の翌日から2か月以内とされているのが通例ですが、コースごとの定めを必ず確認してください。
- 審査を経て支給決定、支給となります。次の支給対象期についても同じ手順を繰り返します。
社内の役割分担の例
| 時期 | やること | 担当の例 |
|---|---|---|
| 求人作成時 | 活用可否の確認、求人票の条件確認 | 人事 |
| 紹介・選考時 | 紹介経路の記録、選考日程の管理 | 人事・現場責任者 |
| 雇入れ時 | 労働条件通知書の交付、資格取得届の提出 | 人事・労務 |
| 毎月 | 出勤簿と賃金台帳の整備、勤怠の異常値の確認 | 労務・現場事務 |
| 支給対象期の末日の1か月前 | 申請書類の準備開始、期限のカレンダー登録 | 人事 |
| 支給対象期の末日後 | 支給申請、控えの保存 | 人事 |
申請期限の管理は、雇入れ日が決まった時点でカレンダーに入れてしまうのが確実です。支給対象期は雇入れ日を起点に進むため、対象者ごとに期限が異なります。担当者の記憶に頼ると必ず漏れます。
建設業でよくあるつまずき
紹介より前に採用が決まっていた
最も多い失敗です。現場の職長が知り合いに声をかけ、働き始めることが決まったあとで、形式だけハローワークの紹介を通す。この形は要件を満たしません。逆に、人手が必要になった時点で先に求人を出しておけば、紹介経由での採用に間に合うことがあります。現場からの増員要請を受けたら、まず求人を出すという順序を社内ルールにしてください。
雇用契約の形が要件と合っていない
請負契約で入ってもらった人は労働者ではないため、対象になりません。一人親方として扱ってきた人を、助成金のために書類上だけ労働者とすることもできません。請負か雇用かは実態で判断されます。契約の形を変えるのであれば、指揮命令や報酬の決め方まで含めて実態を変える必要があります。
事業主都合の離職が期間内に発生した
工事の終了に伴う人員整理や、有期契約の雇止めが、事業主都合の離職として扱われることがあります。離職票の離職理由の書き方一つで支給の可否が変わる場面です。雇い入れの前後の期間に離職者が出る見込みがあるかを、雇い入れ前に確認しておいてください。
勤怠と賃金の記録が現場任せになっている
支給申請では、出勤簿と賃金台帳で実際の勤務を確認します。現場の日報しかない、手書きの出面帳しかない、という状態では書類が揃いません。対象労働者については、雇い入れの月から所定の様式で記録を残します。日給月給や常用日給の場合、賃金台帳の記載項目が不足していないかも確認してください。
期間の途中で離職した
支給対象期の途中で本人が辞めた場合、その期は支給されないことがあります。入社後3か月程度の定着支援は、助成金の観点からも実利があります。受け入れ担当者を決め、初期の面談を予定として組み込んでおきます。
労働保険の適用関係を取り違えた
建設業は労働保険の二元適用事業です。事務所と現場で労働保険番号が異なるため、雇用保険の手続きで使う番号を取り違えると、資格取得の処理が滞ります。対象労働者の所属をどこにするかは、雇い入れ前に労務担当と確認してください。
助成金ありきで採用を決めないこと
最後に、判断の順序について触れておきます。助成金は採用の理由にはなりません。人が必要で、その人に任せる仕事があり、定着させる体制があることが先です。その前提が整っているなら、対象者に当たる可能性のある人を選考の対象から外さない、という形で制度を活用するのが現実的です。
高年齢者や障害のある方の採用は、建設業の人手不足への対応として選択肢に入ります。ただし、現場の安全配慮、作業内容の切り分け、受け入れ側の教育が伴わなければ、短期離職に終わり助成金も受けられません。制度の要件を満たすことと、雇用として成り立たせることは別の話です。
個別の事案について支給の可否を判断する必要がある場合は、管轄の労働局・ハローワークに照会し、必要に応じて社会保険労務士に相談してください。本記事は制度の全体像と実務の順序を示すもので、支給を保証するものではありません。
出典
- 厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金」
本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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