若手を1級施工管理技士まで育てる道筋の設計
人事ノート建設業法に基づく技術検定は、合格者本人の資格であると同時に、会社が工事を受注し、技術者を配置するための土台です。若手が何年目に何を受けるのかを会社が描かないまま年月が過ぎると、「実務経験は積んでいるはずなのに、証明できる記録がない」という形でつまずきます。ここでは、人事が明日から手を動かせる順序で整理します。
1級までの道筋を人事が設計する理由
技術検定の合格者は、現場に置く主任技術者や監理技術者、営業所に置く専任の技術者の要件とつながっています。配置できる技術者の人数と資格の内訳が、同時に動かせる現場の数と規模を左右します。つまり育成計画は、採用計画や受注計画と同じ土俵で立てる話です。
人事が設計を担うべき理由は三つあります。
- 受検の可否は、現場での従事内容と従事期間という人事・労務の記録で決まる部分が大きいこと。
- 配属のローテーションを決めるのは現場任せになりがちで、放っておくと一人の若手の経験が特定の工種に偏ること。
- 受検料や講習費、受検日の勤務の扱いなど、制度として決めないと現場ごとに運用がばらつくこと。
「育成は現場で」と言い切ってしまうと、記録と制度の部分が誰の仕事でもなくなります。そこを人事が引き取る、という前提で以下を読んでください。
到達段階を分けて、社内の言葉に置き換える
技術検定は第一次検定と第二次検定に分かれています。第一次検定の合格者には技士補、第二次検定の合格者には技士の称号が与えられます。この段階分けを、社内でどう扱うかまで決めておきます。
| 到達段階 | 得られる称号 | 社内での位置づけの例 | 配置面での意味 |
|---|---|---|---|
| 2級第一次検定に合格 | 2級技士補 | 施工管理の基礎を終えた段階 | 単独での配置要件には直結しないが、次段階の前提になる |
| 2級第二次検定に合格 | 2級施工管理技士 | 小規模現場を任せる判断材料 | 業種に応じて主任技術者の要件を満たす場合がある |
| 1級第一次検定に合格 | 1級技士補 | 1級到達の中間地点として評価する | 主任技術者となる資格を併せ持つ場合、監理技術者補佐として配置できる場合がある |
| 1級第二次検定に合格 | 1級施工管理技士 | 現場所長・営業所の技術者候補 | 監理技術者や営業所の専任技術者の要件につながる |
種目は土木、建築、電気工事、管工事、造園などに分かれています。自社の許可業種と実際の施工内容に合う種目を選ばないと、合格しても配置に使えません。**どの種目を取らせるかは、本人の希望だけでなく、会社の許可業種と受注構成から逆算して決めます。**各段階の称号や配置要件の細部は、国土交通省が公表する資料で最新の内容を確認してください。
受検資格は「年齢」と「実務経験」の二層で考える
受検資格の考え方は、第一次検定と第二次検定で性格が異なります。第一次検定は一定の年齢に達していれば受けられる設計に見直され、第二次検定は実務経験の年数と内容で判定される、という二層構造です。年数や年齢の具体的な数値、従前の受検資格に関する経過措置の期限は改正の影響を受けますので、受検年度ごとに試験実施機関が公表する受検の手引で必ず確認してください。
人事が毎年確認すべき項目を固定しておくと、担当者が替わっても運用が崩れません。
| 確認する項目 | 何を見るか | 誰が | いつまでに |
|---|---|---|---|
| 受検年度の受検資格 | 年齢要件、実務経験年数、経過措置の有無 | 人事担当 | 受検申込開始の2か月前 |
| 申込期間と試験日 | 第一次・第二次それぞれの日程 | 人事担当 | 年度の人員計画を作る時期 |
| 実務経験として認められる工事・立場 | 工事種別と従事内容の区分 | 人事担当と工事部門 | 配属を決める前 |
| 証明者の要件 | 誰の証明が必要か、前職分の扱い | 人事担当 | 受検者の洗い出し時 |
| 受検料・講習費 | 自社負担の範囲 | 人事担当 | 年度予算の編成時 |
第二次検定では、単に年数を満たすだけでなく、請負代金が一定規模以上の工事で技術者の指導のもとに施工管理に従事した経験を、より短い年数として扱う考え方が置かれています。該当する経験を積ませる余地があるなら、配属段階で意図的に組み込む価値があります。金額の基準や対象となる立場は公表資料で確認してください。
実務経験は記録で決まる。入社初日から残す
受検でもっとも多いつまずきは、学科的な学習ではなく、実務経験の証明です。本人の記憶と会社の記録が食い違う、担当した工事の請負金額や工期が分からない、証明すべき上長が退職している、といった形で表面化します。
次の項目を、現場ごとに一人一葉で残します。四半期に一度、本人と上長が確認して押印または電子承認する運用が現実的です。
| 記録項目 | 書き方の注意 |
|---|---|
| 工事名・発注者 | 契約書どおりの名称で書く。略称を使わない |
| 工事種別 | 自社の許可業種ではなく、受検種目の区分に合わせて書く |
| 工期と本人の従事期間 | 工期と従事期間は別物。途中配属・途中異動は日付まで残す |
| 請負代金の額 | 変更契約がある場合は最終額も残す |
| 本人の立場 | 施工管理、技術者の補助、職長など、実態どおりに書く |
| 従事した内容 | 工程管理、品質管理、安全管理など、担当した範囲を具体的に |
| 証明者 | 当時の所長名と役職。退職予定者は在職中に確認を済ませる |
この記録は、CCUSの就業履歴や施工体制台帳の情報とも重なります。二重に手書きさせると続かないので、既存の記録から転記できる形に様式を整えてください。記録は受検の直前に作るものではなく、現場が終わるたびに締めるものです。
入社からの年次ロードマップを一枚にする
配属や受検の時期を本人任せにせず、標準形を決めます。下の例はあくまで型なので、自社の工事規模と要員状況に合わせて調整してください。
| 年次 | 育成の重点 | 検定に向けた動き | 人事の仕事 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 現場の基本動作、安全衛生教育 | 受検の全体像を説明し、記録様式の記入を習慣化 | 入社時研修で道筋を示す。記録様式の配布 |
| 2年目 | 工程・品質管理の一部を担当 | 第一次検定の受検を検討 | 受検資格の該当確認、学習支援の案内 |
| 3〜4年目 | 小規模現場での施工管理 | 実務経験の積み上げと第二次検定の準備 | 経験の偏りを点検し、必要なら配属を調整 |
| 5年目以降 | 現場全体の管理、後進の指導 | 上位区分の第一次検定、続いて第二次検定 | 受検計画と要員計画の突き合わせ |
重要なのは、年次ではなく経験の中身で進捗を見ることです。同じ3年でも、同種の小工事を繰り返しただけの3年と、規模や工種の異なる現場を踏んだ3年では、第二次検定で書く経験記述の厚みが変わります。年に一度、全若手の従事工事を一覧にして、工種と規模の分布を点検してください。
年間で回す社内手順
- 年度の初めに、受検候補者を洗い出します。前年度までの従事期間を集計し、今年度中に受検資格を満たす見込みの社員を一覧にします。
- 試験実施機関が受検の手引を公表したら、人事が要件を読み、候補者ごとに該当・非該当を判定します。判断に迷う経験は、実施機関への照会内容と回答を記録に残します。
- 候補者本人と上長に、受検予定を書面で通知します。ここで受検料の負担範囲、受検日の勤務の扱い、講習の受講可否を明示します。
- 工事部門と、受検日前後の配置を調整します。繁忙期に重なる場合は、代替要員の手当てまで決めてから通知します。
- 申込書類に必要な実務経験の証明を、人事が取りまとめます。証明者が退職している場合の対応はここで詰めます。
- 学習支援を開始します。社内勉強会、外部講習、過去問題の演習など、手段は問いませんが、業務命令で参加させる場合の時間の扱いを先に決めておきます。
- 結果が出たら、合否にかかわらず面談します。不合格の場合に次年度の再受検を支援するかどうかを、その場で曖昧にしません。
- 合格者は、資格手当や等級への反映を所定の時期に処理します。1級合格者は、監理技術者として配置するために別途必要となる手続の有無を確認します。
よくあるつまずき
- 実務経験の年数は足りているのに、証明が取れない。 当時の所長が退職し、工事記録も個人の手帳にしかない、という事例です。退職手続のチェック項目に「部下の実務経験証明の確認」を入れると防げます。
- 種目を間違える。 本人が希望する種目と、会社が配置に必要としている種目がずれたまま学習が進むことがあります。申込前ではなく、学習開始前に合わせます。
- 受検日と現場の山場が重なる。 直前に「現場を離れられない」となり、受検を見送る形で毎年先送りされます。試験日が公表された時点で、工程側に共有してください。
- 第一次検定の合格で止まる。 技士補の段階で手当がつくと、本人の動機が弱まることがあります。手当の設計は、上位段階との差をつけ、到達までの期限の目安を示します。
- 費用負担のルールが口約束。 誰がどこまで負担するか、不合格時の再受検費用はどうするかを、規程に落としていない会社が目立ちます。費用の返還を求める定めを置く場合は、労働基準法の賠償予定の禁止との関係があるため、就業規則に書く前に専門家に相談してください。
- 合格後の配置を考えていない。 1級に合格しても、配置に必要な手続や講習を済ませていなければ、現場で使えません。合格の時点で次の手続まで段取りします。
よくある質問
Q. 前職や学生時代の経験も、実務経験に通算できますか
従事した工事の内容と本人の立場によって判断されるため、在籍していた会社が自社かどうかだけでは決まりません。前職分については前の勤務先の証明が必要になる場合があり、実務上はここで止まることが多いところです。認められる範囲と証明の方法は受検年度の公表資料で確認し、判断が割れる事案は試験実施機関に照会したうえで、回答を記録に残してください。
Q. 1級第二次検定に合格すれば、すぐ監理技術者として現場に置けますか
合格は要件の一つですが、それだけで配置が完結するとは限りません。監理技術者として選任するには別途必要な手続や講習の受講があり、対象となる業種と合格した種目の対応関係も確認が要ります。配置の可否は工事の規模や契約の形態にも左右されますので、具体的な案件では建設業法と国土交通省の公表資料を確認し、判断に迷う場合は許可行政庁に照会してください。
Q. 2級を受けさせずに、いきなり1級の第一次検定から受けさせてもよいですか
受検年度の資格要件を満たしていれば、上位から受ける組み立て自体は考えられます。ただし第二次検定の実務経験要件の積み上げ方が変わるため、合格までの年数の見通しを先に立ててください。若手にとっては2級の合格が自信と社内での位置づけにつながる面もあるので、本人の学習状況と現場での担当範囲を見て個別に決めるのが現実的です。
Q. 受検料や講習費を会社が負担した社員が、合格後すぐに退職した場合はどうなりますか
費用の返還を一律に求める定めは、労働基準法が禁じる賠償予定にあたると判断される可能性があります。制度として設ける場合は、受講の任意性や貸付としての性格、返還を求める期間の合理性などを個別に検討する必要があります。規程化の前に、社会保険労務士や弁護士に相談してください。
Q. 不合格が続く社員への支援は、どこで区切ればよいですか
会社として一律の打ち切り基準を設けるより、受検の回数ではなく学習の状況と現場での担当範囲で判断するほうが納得が得られます。たとえば、経験記述に書ける工事を任せていたか、学習時間を取れる配置だったかを面談で確認します。支援を続ける場合も、次年度にどこまで会社が負担するかは毎年明示してください。
出典
- 建設業法
本記事は建設タレントサーチ 人事ノートが作成しています。法令・制度は改定されることがあるため、 実務にあたっては官公庁の最新の公表資料をご確認ください。 個別の判断が必要な事案は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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